降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》6
「篠塚ゼミはね」
ありさが語り始める。
「確かに現実にあるゼミではあるんだけど、同時に多層世界にも属しているの。幾重にも重なった時相の集合地点といったところかしら」
「どうしてそんなものを造ったのですか」
「時止めの力のバランスをとるために」
「力を流す先が多くあれば、どこか一つに集中する確率は減るわ。また多方から支えられればバランスもとりやすくなる。そのための拠点を造ったのよ。ま、そこにたけると門脇までが来るとは思ってなかったけどね」
けらけらとありさが笑う。
「真剣な話、あきらの、時止めの力は暴走しかかっていた。過去を夢に見たこともそう。あいす、あなたが、あきらの記憶整理を始めたのは昔からなの?」
「初めてあきらに引き込まれたのは誘拐の後だったけど、せいぜい年に1回くらいだった。だから、変な夢見たくらいにしか思っていなくて。多くなったのは高校生くらいからかな。あの、コンパの頃にはしょっちゅうだったよ。」
「バランスが保てなくなっていたのね」
「無意識にあいすにSOSを出していたのでしょう」
「俺、」
「それだけ頼られてたってことよ、うれしく思いなさい」
「そうですよ、でないと後ろでにらんでいる誰かさんは浮かばれません」
あずさがくすくす笑う。
「たける、気が付いたのか」
「門脇、船は」
「いつでも出せる」
「行くぞ、いやいい、お前はここに残れ、あいすもだ」
「、、どうするつもりだ」
「あきらを、向こうからここへ送る。お前たちで受け止めてくれ」
「、、おまえは?」
「なんとかする」
「、、なぐっていいか」
どかっ
たけるが後ろへのけぞる。こぶしを抑えて、あいすが仁王立ちしていた。
「ふざけんなよ、ってこれはあきらの代わりのこぶしだ」
「たける、座標は」
静かにありさが問う。
「見てきたのでしょう、言いなさい」
氷のような冷たさであずさもいう。
「あ、xxRsad nics]
「ねえさん」
「行こう」
姉妹は部屋から出ていき、ほどなくして下から超爆音が遠ざかっていった。
「怖かった」
門脇が青ざめている。
「ねえさんたちがあんなに怒ったの久々に見た。たけるのせいだからな」
あいすも心なしか震えている。
「なんで、俺のせいになるんだ」
何にもわかっていないたけるは一番の大物かもしれない。
「ねえさんたちは、単独行動とったり、自分が犠牲になるってやつがだいきらいなんだ。たけるが一人で行くなんて言うから」
「お前たちにサポート頼んだつもりだが」
「それでも!!あーも―とにかく皆で行こう」
「あいす、ありささんたちは」
「うちの船で向かったと思うよ、場所もわかっているしね。ただねえさんたちは何か俺の知らないことを知っている風だった。あんたたちも」
びしっと、たけると門脇を指さす。
「俺があまねに会う前から、あまねの知り合いだったのか?」
「いや、それは」
「ああ」
「たける!」
「だが、今日まで忘れていた、あきらとともにあいつに会うまで。信じてくれるか?」
「嘘をつく理由はないから、信じるよ。でも、全部話してほしい」
「たける、あいすも、とりあえず船に行こう。そこで話してあげるよ。俺とたけるが、時止めの姫に会った時のことを」