降水確率0%の通り雨3《君の遠雷 僕の健忘性体質》13
「おそろいだね」
「うん、おそろい、きれいだね」
「倉石、それ」
「うん、ずっと昔に買ってもらったんだ。魔よけの意味があるんだって」
門脇が、僕が身につけていたブレスレッドに目ざとく気付く。
「外出するときには身につけてる。ま、めったに外出なんてしなかったんだけどね」
僕の左手首には、腕時計と静電気防止ブレスと、その魔よけブレスがはめてある。ちょっとじゃらじゃらしすぎかなとも思ったけど、どれも必需品なので仕方がない。
「買ってもらったって誰に?」
「さあ?親にじゃない?小さいころから持っているから。あ、たける、おはよう」
「おはよう、門脇、集合時間にはまだ相当早いと思うんだが」
「遅れるよりましってね」
「あきらのご両親に迷惑だろうが」
「あ、うちの両親、昨日から出張でいないから大丈夫だよ」
「な、じゃあ昨日から一人でいるのか?なんで俺を呼ばない、危ないだろう」
「あのさ、成人している男がなんで危ないの。それに一人じゃないし、あいすがいるし」
「なんで、あいすが?」
「え、倉石、あいすと住んでんの?」
2人が驚いている。いや、驚く理由がわからない。
「従兄弟だもん。学校への通学に便利だからって、うちで下宿することになって」
「そういうこと、おはよ、お2人さん、おまたせ、あきら」
「うわ、あいす、かっこいい!すごいな、あいすってセンスいいよね」
「一応、専門なんで、でもあきらに褒めてもらえるとうれしいな」
「あれ、あいすもそのブレス」
「うん、覚えてる?あきら」
「おそろいだーってすっごくうれしかったの覚えてる」
「待ってお2人さん、そのブレス一緒に買いにいったの?」
門脇が聞く。なんかこのブレスにこだわるなあ。
「どうだっけ?あいす」
「うーん、お父さんとかなあ、男の人に買ってもらったような、、」
「あいすと、一緒だった、、」
「そう、だね、あきらがいたよ」
「ごめん、それ以上は思い出せない」
「あ、いいんだ、こっちこそごめんね」
「あ、でも、大好きな人に買ってもらったんだよね」
「え?」
「そうだね、じゃなきゃこんなに大切にしていない」
「そう、なんだ」
「門脇、顔赤いよ、風邪でも引いてるの?今日のお出かけ止めとくか?」
「いや、行く。絶対行く」
「あ、なんともないなら、うん」
「たけるも、どうしたのさ、うずくまって、めまいでもしてるの?」
「そうだな、くらくらしてる」
「駄目じゃないか、寝不足なんじゃない?僕たちの事なら心配しないで、帰ってゆっくり休んでよ」
「冗談じゃない、せっかくの休みに一人で過ごすなんて」
「そっか、大勢でいたいんだね。よかった、彼らにも声をかけておいて」
「「かれら?」」
「おはようございます!」
玄関から声がする。
「おはよう」「おはようございます」「ほっほっほっ」
「「なんでここにいる」」
「門脇、抜け駆けなんてさせないわよ」
そこにいたのは、篠塚ゼミの面々。冨田、小林、吉川、とどめの篠塚教授
「みんな、おはよう、これで揃ったね、じゃ行こうか」
「あきら?」
「テーマパークって初めてだから色々調べたんだ。そしたら、大勢で行くととても楽しいって書いてあって。だから、皆に予定が合えばって誘ったんだ」
もしかして、だめだった?あきらがしゅんとする。
「全然ダメじゃないよ。俺も大勢の方がいいな、たけるは帰れば?」
と、あいす。
「そうだな、三徒は単独行動が好きそうだもんな、おれらでいくから、倉石の事は任せておけ」
いち早く立ち直った門脇は言う。
「誰もそんなことは言ってないだろう!もちろん行くさ」
な、あきら、と声をかけると、あきらは嬉しそうに遠足みたいだね、という。ああ、そうかとたけるは思う。人関係記憶消失のせいで、あきらは思い出に残りそうな行事はとことん避けてきた。思い出を語り合えないから。それなら初めからない方がいいと。
「楽しい一日になるといいな」
「うん!」
ブレスレットの思い出はいつか蘇るのだろうか。
どっちでもいいか。だってこれから、いくらでも記憶は増やしていける。
あの時、贈れなかった新しいプレゼントを今日渡すのも悪くない。
大好きな人からのーとまた思ってもらえるだろうか。
顔がほてるのを感じる。よしっ気合いだ!
ふと見ると、門脇の顔もにやけている
((同じことを考えてやがる))
もちろん、2人は―――玉砕しましたーー世の中そんなに甘くない
降水確率0%の通り雨3
《君の遠雷 僕の健忘性体質》 了
ここまでお目通しいただきありがとうございます。
コスパ2 -13で語ったエンドの予告、、、
守れませんでした!ごめんなさい!!
書き出してすぐ、あ、これおわんないってわかって、いや、それでもなんとかなる!ーー
なりませんでした。出会いを書けばエンディングにつながると思ったのですが、甘かった。
で、で、
《君の雷雲 僕の離脱性体質》へと、勝手に続きます。もし、もしも、呆れていらっしゃらなかったなら、こちらも、目を通していただけると、とてもとても、うれしいです。
ここまで、お読みいただき心より感謝します
ありがとうございます pao