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降水確率0%の通り雨《君の落雷 僕の静電気体質》10

頭がくらくらする。そうか、壁に頭ぶつけたんだ。急に来た大きな揺れと地響き。遠くから何かのいななきとたくさんの足音が聞こえる。部屋中に収穫して部屋の隅に積み上げていた野菜や果物が転がっていた。
そっと、外へ出ると足音はどんどん大きくなりこちらへ近づいてくる。どうしたらいいんだろう、足元を見ると地面が大きくひび割れている。
(逃げるしか、ないよね)
決心すると社の中に戻り、水を入れた容器と、ちび君からもらったごはん(保存食として残していた)をもって外へ出た。
「僕を助けてくれてありがとう。本当にありがとう、安全だってわかったらまた戻ってくるね、君も元気で」
社にそういうと、僕は駆け出した。動物たちよりも早く遠くへ行った方がいい、そう思った。
(ばいばい、またね)風に流れた声は、雨粒に溶けて消えた。

「あめ、かよ」
ここはどの辺だろう、動物たちより早くなんてできるわけはない。勢いよく駆け出したもののすぐに獣の集団に吸収されて、そのまま流されて、ようやく抜け出たのがここだ。
「よく、踏まれもせずにここまでこれたな」
そこは、自分の運の良さをほめたたえるべきだろう。どこにいるかわからないことを除いては。山を登ったような気もするし下ったような気もする。何せ何も見えなかったのだ。とにかくこっちに行ってみようかな。花が道のようにきれいに並んで咲いていたので、その線に従ってみる。
(夕日、、もうすぐ暗くなる)
暗くなる前に寝床を確保しなきゃ、少し足を速めて、花に沿って歩く、と道は行き止まりになり、洞窟が現れた。
(どうしよう)
先ほどから降っていた雨は強くなっていた。
(選択の余地はないか)
獣の巣だったらその時はその時、僕は洞窟へと入っていった。

明るい、、なんで
洞窟の中はどこか光が入る穴でもあるのか、とても明るかった。
「夕方だったよね?光が入る穴があるにしても、真昼間みたいに明るいなんて、いったい、」
どこからか光が入ると言うより、洞窟の壁全体が光っている?まさか?
不思議に思いながらも、僕はどんどん進んでいく。止まれなかった。なにかが待っている、なにか、なに?
空間がいきなり広くなる、明るさも一気に増した、まぶしくて目をぱしぱしする。
そして、目が慣れると、そこに、人影が2つと四つ足の大きな獣、
「猫?ちょっと大きすぎない!?」
「やっときたわね。遅いのよ」
「このこにしたら、頑張った方よ、ね、あきら」
いきなり、名前を呼ばれる。僕を知っている?
「さ、いくわよ、準備はいいわね?」
「ねえさん、あきら、きょとんとしてない?」
「まさか」
「すみません、どちら様ですか」
「またなの!!!あんたって子は毎度毎度なんで」
「ねえさん、いってもしかたないわ、とりあえず計画通りにしないと」
「あああもう、あきらいらっしゃい!」
「なにするんですか!」
「ここに入るの!」
「うわ」
ねえさんと呼ばれた女性の力は強く、あきらはなすすべもなく洞窟の中央に置かれた白い楕円形の入れ物の中に放り込まれた。続いて女性たちとヒュンと小さくなった!猫も中に入ってきて半透明のふたが閉まると、入れ物の中は白い靄と白い雪でなにもみえなくなった。
(めざめたらおせっきょうだからね!)
 (ねえさん、あきら、時間があるから、ゆっくりお話ししましょ、その間にあきらの歪めた記憶元に戻してあげる、でもまたすぐ、ひしゃげていくのでしょうけど、困ったこと)

そんな怒鳴り声と、ひいという悲鳴と、くすくす笑いとゴロゴロ喉を鳴らす音は時空の闇の中へ消えていった。

めがさめたら、おせっきょうだからね・・・
「ごめんなさいっ!!」
がばっ、擬音をつけて僕は起き上がった。白い空間、は消えて、薄暗い部屋の片隅に僕は居た。あれ、ここは、記憶があいまいで飛んでいてよくわからない。何だか頭がずきずきする。気力を振り絞って周りを見渡す。目が慣れてくると、だだっぴろい空間は体育館のようで、真ん中くらいに誰か人がいるのがわかった。
「誰でしょうか」
だんだん頭がクリアになっていく。聞く前から分かっていた。僕が待っていた人。全ての元凶。
指先が、皮膚がピリピリする。待ってたよこの時を、今全てを清算する。
「誰でしょうか、かよ。僕ちゃんにはわからないし、わからないままいっちまいな」
ありきたりな台詞、もっと本を読めよ、ま、どんだけ読んでも日本語に不自由な人はいるけどね。誰のことだ、そんな声が聞こえそうで笑ってしまいそうになる。けどここは我慢。僕は攫われてきた可哀そうな男の子で、恐怖に打ち震えてなきゃいけない。
「家に帰してください、おじさんたちのことは誰にも言わないから、第一明日には何もわからなくなる、知ってるんでしょう?」
ああ、ぼくもべただ、残念すぎる。
「そりゃ、ずっと追いかけてきたからな、お前さんのことはよーく知っているよ。だけど返すわけにはいかない。」
「どうして?僕が子供のころの事、まだ根に持ってるの?」
根に持っているのは僕の方だけどね、ただ、まだ確信じゃないからここで吐いてもらうよ。
「僕が子供のころ誘拐したのオジサンたちだよね?」
「ああ、そうだ、なんだあお前、実は記憶あるのに知らないふりしてたのか?」
「違う、今思い出したんだ、あの時と同じ、こわい」
「フラッシュバックってやつじゃないですか」
もう1人の今まで黙っていた方がいう。デカブツの子分でとこか、ああスタイルもベタだ。ふ
「恐怖で記憶がよみがえったんですよ、きっと」
「そうだな、そういうこともあるかもな」
大男は納得したようだ。
心の中で舌を出しながら、震える声で言う
「どうして、どうしてぼくをさらったの?」
退行して小さな子供に還ったかのように、舌ったらずなしゃべり方で
「ぼく、こわいよ、どうしてなの?」
「それはね、僕ちゃんはまちがえてつれてこられたんだよねー」
ビンゴ!
「あにき」
「だいじょうぶだって、僕ちゃんのお友達に三徒たけるくんっているでしょう、おじさんたち、その子が欲しかったんだよねー、でも間違えて君を連れてきちゃった、ごめんね―怖かったよねー」
「たける?どうしてたける?」
「たけるくんのおじいさんに恨みがある人がいてさーたけるくんが欲しいっていうから代わりにさらってあげるって約束したんだ、お金くれるっていうしさ」
「あーべたべた。その恨みがある人って誰だか知ってる?今でもつながっているの?」
ナンダカ、ベタスギテアキテキタ
「いや、直接会ったことはない、ネットで依頼を受けたんだ、顔も知らない、ってなんだお前!」
「じゃ、今回、僕をさらうように言った人はだれ、その人じゃないの?ちょっと痕跡くらいあるんだろ?」
「何だよお前、怖くて震えてるんじゃなかったのかよ?」
「いいから、君たちの依頼主のデータを頂戴!そのためにずっと君たちを泳がせていたんだからね、さ、早く!たけるが来ちゃったら台無しだ、ってもうそこまで来てるし、もう!早くしてよ、しばくよ!!」
「その前にねえさん登場!なんてね」
「ありさねえさんたら、こっそりやりたかったのに、とにかくあきら寝かさないと」
いきなり空間に、霧の塊と雪の塊が現れた。徐々に形がまとまっていき、人型になり、美しい二人の女性となる。それと、1匹の猫。
「そうね、あずさ、あきらを寝かしつけて、もうすぐ10時よ」
「さ、あきら良い子はお眠の時間ですよ」
その声を最後に僕の意識は途切れた。

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