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降水確率0%の通り雨2《君の雷鳴 僕の過敏性体質》5

「いいですか。セッティングは完了しています。余程のことがない限り、シナリオから外れることはありません」
「余程のこと?」
「たとえば、不慮の死。まあ、あらゆる事態を想定してのシナリオをつくりましたから、自由にしていただいて大丈夫ですよ」
「どんな事態を想定したんだろ・・」
「怖くて聞けない・・・」
「うふふっ」
「とりあえず、演ろう」
「で、ねえさんたちは・・」

「こちらに控えておりますのが、天文学者が息子の、あきら並びにあいすの兄弟です。この度、皇子の遊び相手として参上いたしました」
付き添いの従者が、二人を紹介する。
床に手をつき、こうべを下げたまま二人が挨拶する。
「あきらです」
「あいすです」
頭を下げたままなのでよくはわからないが、皇子よりは幾分幼い感じがする。白い銀色の髪と真っ赤な赤髪。
「顔をあげよ」
皇子が指示してお付きの者がいう。二人はゆっくりと顔を上げ御簾の向こうの皇子を見る。
「青い目と赤い目?」思わず皇子が声を上げる。
「恐れながら、」
とあきらは言う。
「恐れながら、われら兄弟はこの容貌ゆえ、他人より鬼の子とさげすまれてまいりました。この度、皇子に悪さをする鬼に対するには鬼が最適と、われらにお声がかかった次第です。どうかその役務めさせてくださいませ。」
大嘘である。皇子の同情を買った方がいいだろうとのあずさのお涙頂戴ストーリーである。
(ねえさま、こういうの好きだよね。性格に反して)とは絶対言えない。
くさい台詞に全身がかゆくなりながら、とりあえず皇子をうるうると見つめたりする。
(鬼だなどとそんなことはない、なんていうのかな~)
「鬼ってどこに」
「ですから、われら・・」
「私の周りに鬼が出たことはない。よって、そなたたちを使って鬼退治などしようもない」
「えっと、でも攫われたのですよね?色々こわいことがあったり?」
「攫われてたらここにはいない、怖いこともない」
「あの、どうしよ・・」
「では、皇子にはわが弟たちをおそばには置いておけぬと、やはり鬼の子はいらぬとおっしゃるのですか、怖いものなしと伝え聞いておりましたのに」
「ねえさん」
ありさが、可哀そうな弟たちを案ずる姉になりきって場をつなぎ始めた。
「白い髪に青い目、もう一人は目も髪も真っ赤。倉石の呪われた鬼の子よと、生まれたその夜から、さげすまれてきた可哀そうなこの子達。今回、皇子のためにこの身を捧げられる、われらにもやっと生きる意味をみいだせると、あんなにも楽しみにしていたというのに、皇子もこの子達を汚らわしきものと遠ざけるのですね、ああなんと哀れな弟たち」
よよよと泣き伏すとこまで、女優です、ねえさま。
「えっと」
どうすればいいのかな~と皇子を見ると、御簾の向こうから出てきたよ。
「姉君どの」
ありさの側により声をかける
「皇子?」
「すまない、言葉が足りなかった。そなたの弟たちが気に入らないとかでは決してない。こちらの方こそなのだ。いつも、私のことを怖がって皆去ってしまう。だから、先に断った方がいいのかと。見た目など決して気にしはしない。他の者にも何も言わせない。」
「では、弟たちを」
「そなたの弟たちが良ければ、だが」
「あなたたち!」
「え、ええはい、ぜひお仕えさせて下さい。」
「僕もお願いいたします」
言いながら、あいすは何かを気にしていた。
「あいす?」
「あとで」
「わかった」
べたな小芝居で周囲も気が抜けたのか、じゃそういうことでと話がまとまり、皇子と皇子の小姓たち、それにあきらとあいすは、皇子の自室に向かった。

「ねー皇子、気になってたんだけど、その猫皇子の?」
あきらとあいすが、皇子にまず言われたのが、敬語を使わないでくれということだった。
「遊び相手なのだろう?かしこまって話されながら遊んでいても、なんだか手を抜かれているような感じがして嫌なんだ。だから、普通に知り合い同士が離すような感じでいてくれないか」
「友達同士のような?」
「友達がいないから、友達同士がどう話すのか知らない。下働きのみんなが話すようでいい」
ふびんな、と思ったのは言わないでおこう。
「だめか」
「まさか、いいよ。こっちも気が楽だ。まあ、偉い人がいる時は敬語にするけどね」
「それでいい」
にっこり。いいやつ、気が合いそうだ、とはどちらが思ったのか。

「ああ私の猫だ、名はみけさんという」
「みけ、じゃなくて、みけさん?」
「うむ、みけさん」
「あーはははは」
「ははは」
「いいね、素敵だ」
(いいよ、素敵だ・・)
あきつーー
目の前の彼は、あきつの、あの夢のようなほんとかどうかもわからない記憶の、まさか?髪の色も目の色も似てはいない、だがこの、
「なあ、あきら、あの、お前親戚にあきつという、」
(聞いてどうする、また会えるとか、、まさか)
「あきつねえさまを知ってるの?どうして?」
「ねえさま?では」
「でも、もう死んじゃったんだ」
「え?」
「はやり病でって、ありさねえさまがいってた。少し前に」
「あ、、そうなのか、なんでもないんだ。すまない」

もしも、皇子様が、
あずさねえさんからの指令。もしも皇子様があきつの事を覚えていて話題に出して来たら、死んだことにしましょう、との事。知らないというより、縁者であるといってもう会えないことを印象付ける方がいい、そうしたら今後また話題に上がっても対処しやすいから、さすがです、あずさねえさん。

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