降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》8
「おい、たける、時の神が呼んでいるそうだ」
「そうか」
「何の話だろう」
「時止めの事だろう」
「まあ他にはないものな」
たけると門脇は笑う。最近、姫の力が安定してきたから、そのことだろうか、とたけるは思っていた。
「君の任を解くよ」
「はい?」
「姫ももうすぐ成人だ。ここのところ力も安定していると聞いている。もう十分一人で力を制御できるだろう。君に頼ることもない。国へ帰っていいよ」
「ちょっと待ってください、私は!」
「帰りなさい、と言っているんだ。君の役目は終わった。今までありがとう」
「納得いかない!姫は、時止めはこのことを知っているのですか!?」
「君にありがとうと言っていたよ」
「それではわかりません!会わせてください!」
「会う必要はないだろう。君はもう帰るのだから」
「帰りません」
だって、ずっと一緒にいると約束したんだ
「絶対に帰りません」
「ならば言おう。今君の中には魔の陰がある」
「え?」
「姫の力を解除し続けた弊害だよ。このままでは君の力が暗転を始めて、姫にも影響を及ぼす。それでも、姫の傍にいるか?帰って治療を受けなさい」
「もう一度戻ってこれますか」
「それはない。呼ぶ理由がない」
「だったら、ここで、自分で治療します!」
「私の言うことが聞けぬと」
「聞きません」
時の神の前に歪んだ空間が出現する。
「ならば仕方がない。
時流しの試練をあげるよ。
さあ、行きなさい」
「うわー」
「たける!手を、この」
時流の波に2人は飲み込まれ、そして消えた。
「ふん、いったか、簡単に姫に近づけると思うんじゃない。さて、行先は吸収か」
「姫、なりません」
「いいえ、行きます」
「どうした、時止め」
「この、老害!」
「ひどい言いようだな、私が何をしたと」
「たけると門脇を時流しにしたでしょうが」
「仕方ないだろう、このまま、姫の傍には置いておけなかったんだ、彼の魔には気づいていただろうに」
「それは、それは私がへんげします」
「自分の力も制御できない君が?できるわけないだろう」
「できる!やって見せるわ!」
「君の時止めを制御するほどの力の持ち主だぞ。そう簡単にあの魔は解けない」
「やるったらやるの、彼を戻して!」
「彼の行き先は、吸収の国、でも時間座標はわからないわ。それでも行く?」
「行くわ!かあさま!ありがとう、かあさま!」
空中に時空の輝きが生まれ、時止めは飛び込んでいった。
「おーい、何で言っちゃうんだよ、后よ」
「あなたがあまりにも駄々っ子だからでしょ!でも、ああやっぱり時間座標がずれてる。3000年くらい時差があるわ。全くおっちょこちょいね。仕方がないからフォローしてあげますか。時の神、あなたは反省してなさい!」
飛び込んだ先に、たけるはいなかった。私の力も漂流を始め、だから舟を造って封じ込めた。
かあさま、時がゆっくりと回転し始めている、怖い、銀龍は爆竜になってしまった、積み重ねた記憶が刃のように僕を切り裂く、どうして?楽しい記憶だったのに、どうして?みんな笑っていたのに、なぜ、哀しみだけが渦巻くの?止めてしまえばいい、止めてしまえば変わることなく傍にいられる?
止めてしまえば独り占めにーだめええーー
ハッとおきあがる。夢?心臓がバクバクしている。ここは、周りを見渡すと懐かしい白銀の壁。僕の髪色に似せた白銀の
「目が覚めた?倉石?」
「おまえは、」
冨田が立っていた。