降水確率0%の通り雨2《君の雷鳴 僕の過敏性体質》11
「あのね、ちょっと言いにくいんだけど、君の力を開放したせいで、この世界での君っていう存在にひずみができちゃって、あ、これは想定内ね。で、あらかじめ作っておいた、別の世界での君の居場所に移ってくれないかな~なんて、あはは」
「わかりやすく言ってくれ」
「生まれ変わってください!
ごめんっ、このままこの世界で暮らさせてあげたいんだけど、君の力をへんげするために、この世界と君とを切り離すしかなくて。簡単にいえば、君、この世界では死んじゃったというかなんというか。すみません」
「わかった」
「え、いいの?」
「それしか手がなかったのだろう?それに、次の世界?にいっても、お前と一緒なら新しい生活も楽しそうだ」
「僕はいかないよ?」
「なんだと」
「いかない、というよりいけない。ここで、次元のひずみの後始末しなくちゃならないし」
「だったら、その後始末がすむまで俺も手伝う」
そしたらいっしょに行けるー
「だめだよ、君がここにいることでひずみが継続するのに、君には一刻も早く次の世界に行ってもらわないと困る」
「横暴だ!俺の気持ちはどうでもいいのか?」
「そう、だね、どうでもいいかな。僕らは君が平穏でいてくれることしか望まない」
たけるの後ろの空間が裂け、あいすが静かにこちらに向かって歩いてくる。それに、門脇?
「ありがとう、門脇、君の眼のおかげで、最高の位置に展開できたよ」
「どういたしまして、さ、たけるを」
「ああ」
「門脇!きさま知ってたのか。あきら、あいす、どうして、」
「生まれ変わってって言ったでしょ。この世界の記憶は消えてしまうけど、でも心配しないで、今度はちゃんと優しい両親がいるから。生きているうちにまた、新しい記憶も友人も増えていく。大丈夫、君はやっていける」
そのためのへんげだよ、あきらは、優しく笑っている。
「嫌だ!冗談じゃない!お前も、お前たちも来い!だれが、一人でなんて、くそっ全員必ず引きずり込んでやる!」
「悪役のセリフだよ・・」
裂けめの向こうの運命の女神たちが優しい繭の糸でたけるを包み、やがて小さくなって消えた。
「さてと、あいす」
「オッケー」
あきらのはさみとあいすの盾を組み合わせ、宙に投げる。印を組み、真言を唱えはじめる。
(おかしい、空間縫い綴じの言霊が、進まない?)
(どうして?糸がからまる?)
あきらは姉たちの方を振り返った。異変を感じ、姉たちもすでに縫い綴じにかかっている。
(ねえさんたちも加勢してくれているのに、なのにどうして?)
どんっ
すさまじい圧力を受け、門脇は地面に転がってしまった。
『ぜったいに、いかねえ』
閉じたはずの裂け目から声がする。
この声!
「あんの―くそったれ坊主があ!!!」
「「ふざっけんなー」」
叫んだのは、たけるかあきらか
「ぜったいぶちこんでやる!」
『絶対連れていく!』
「あきら、だめ」
あいすの必死の制止の言葉は宙に消えた
「召喚!絶対僕に従え!やつば!」
「あーあ、やっちゃたよ、たけるの馬鹿、あきらをおこらせるなんてさ」縦横無尽に、裂け目が走った空間の上に、三姉妹が座っている
「あの皇子なにしてくれんの。私たちの苦労ってなんだったのかしら」
「まあ仕方ないですね、糸はつけてますから多分第2幕に向かうでしょう」
「はあ、僕はあきらおっかけるよ、そして誘導してくる」
「お願いね、私たちは先に基地へ行っているわ」
「じゃあとで」
と、何か忘れている気がするけど、なんだったかな
(門脇です、たけるとともに異次元へぶち込まれてしまいました。そしてそこでたけると再会します。多分ですが、大喧嘩しているでしょう、そして少し仲が悪くなっているでしょう)