降水確率0%の通り雨4《君の雷雲 僕の離脱性体質》2
「時間の流れが感じられない?」
「というか、時間が不規則に感じられるんだ。もちろん、記憶が消えていたり、また戻ったりで、自分の変化が激しかったせいもあると思うんだけど」
そりゃ、時間なんて感覚でしかないものだから何とも言えないのかもしれないけどね。
「どういう感覚かいえる?」
「メトロノームが、何台もいろんな速さを刻んでいるようね感じかな」
とにかく、居心地が悪い。
「記憶が消えていた時は、時が止まっていたよ」
「止まって?」
「うん、少し違うかな、リピート?同じことが繰り返しているのに僕にはわからないって、ごめんよくわからないよね」
「いや、」
僕は、突然誰も知る人のいない空間に放り出されるんだ。そう、常にだれもいない朝を迎える。記憶の中に誰もいない。周りを見渡しても知っている人が誰もいない。そもそも僕以外の人は存在しているのだろうか。叫びだしそうになる、一人きりの空間。過去も未来もない。
誰もいない空間で僕はしゃべったり笑ったりしているんだ。
たけるだけが、僕の世界の住人。
「だから、依存しすぎちゃったのかな、、」
「あきら、、
時間の感覚がないってのは?」
「毎日記憶が消えるからさ、そう時間の移り変わりも感じにくくって。もちろん、時計やカレンダー、周りの風景の移り変わりはわかるんだけど、人から得る情報が全くないからね。孤島にいるのと一緒」
「うん、大変なんだと、想像でもわかるよ」
「服装や髪形なんかの流行だってわからない。あ、でも、あいすが素敵なセンスの持ち主だっていうのはわかる」
「ありがとう。あきらはきっと生まれながらにセンスを持っているんだね」
「ニュースは文字でのみ確認してた、人が話していることは消えちゃうから」
「うん」
「ちょっと前まで前世も思い出していなかったから、僕の見る風景はいつも殺風景で、寂しくて、怖くて、周りを思いやることなんてできなかった。
ごめんね」
「あやまることなんて何もない」
そういって、あいすはあきらを抱きしめる。
「そういってくれるから、だから、、」
だから、迎えに行ってあげるよ、、
ぞくっ
「なんだか、寒気がする」
「え」
「はい体温計。今日、日中外にいたから、軽い熱中症でも起こしちゃったかな。」
今日は卒論の息抜きと称して、僕とあいすとたけると門脇と、なぜか冨田とで食べ歩きと公園のそぞろ歩きをした。
「なんで、冨田が」
たけると門脇はかなりびっくりしていた。僕もだけど。
「俺が誘ったんだ」
「あいす?」
「富田は俺の大学の同期の親戚でさ。俺の学校でファッションショーをやった時にたまたま見に来てて、で、紹介された」
「あいすさんの服がとてもステキで、作者に会いたいって従妹にいったら、同期だから紹介するっていわれて、まさか倉石の従兄だなんて思わなかったよ」
同じ苗字だなとは思ったけど、って冨田が笑う。
「で、」
「で、て何」
「休日に誘うほど親しいんですか、あいすさん、一回服を見ただけで?」
「あいすさんの学校のショーは何回も行ってるけど?定期的に開催されているし」
「学芸会のノリだけどね」
「いや、あいすさんの服だけは別次元っすよ。とびぬけてます」
「ふふ、ありがと」
「で!」
「なんなのさ、」
「そういえば、今冨田の着てる服、あいすっぽい」
「あ、わかるか倉石、あいすさんにデザイン画もらって似たような服でアレンジしてみたんだ」
「うん、似合ってる、あいすも冨田もセンスいいんだね、ね、たける」って
なんか、怒ってる?門脇なんか頭から煙出そうだ。
「えーと、僕、そろそろおなかすいたかな~」
だから、そろそろ移動しませんかと言外に言ったつもりだった。
「聞いてない」
と門脇
「言ってないから」
とあいす
「どうして」
と門脇
「必要ない」
とあいす
そんな短文だけのやり取りが20分は続いたと思う。炎天下の真昼間に。
最終的に、顔色の悪くなった僕を見たたけるが、いい加減にしろと一喝して屋内に入ったのだけど、富田も止めるでもなく見てたよな。なあ、冨田って
「体温計出して」
「あ、はい」
「37.8度、か。高熱ではないけど、微熱でもないね。水分取って寝てるのが一番かな。ポカリあったと思うから取ってくる。」
「ありがと、宜しく」
でも、原因は、あの20分にあると思うけど?その後も、屋外にいたけど、ね。あの言い合いが、屋内でも続くかと思うと入りづらかったんだよね。まあ、その後はあいすも、門脇も普通にしてたけど。あいすに絡む冨田を見る目は怖かった。ぞくっ。やば、熱上がったかな。寝よう、そして、明日のことを考えよう。もう、今日が消えることはないのだから。夢の中で逝ってしまう今日を泣きながら追いかけることはないのだから。
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