Web小説発掘記 その287 転生天才娘と独裁皇帝のやり直し大恋愛~論文を出版したいだけなのにイケオジになった元婚約者の愛が重いです~ 作者 山野げっ歯類様
本編URL
https://ncode.syosetu.com/n1064ji/
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『「やり直し大恋愛」編』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
「大陸に言い伝えられる創世神話は嘘っぱちである」という論文を書いたフリッカは、出版社に向かう途中で殺された。気付くと彼女は転生し、帝国の子爵家令嬢になっていた。
前世の悲願だった論文出版のため、持ち前の知識を生かして道を切り拓いていくフリッカ。
しかしなんと、帝国には出版の自由がないらしい!
そんなとき、前世で結婚の約束をした変わり者の帝国貴族ゲオルグと再会。なんと元彼は自らが独裁皇帝になってしまった。
どうしてあなたが皇帝をやってるの!?でも元カレが皇帝になるってチャンスかも?
その権力を利用して、私の論文を出版させてもらいましょう!
頭はいいけど恋愛赤ちゃんな天才娘と冷酷ドエスなイケオジ(だけど実は元婚約者にベタ惚れで重ための愛情を抱えてる)皇帝が、論文出版を巡ってもう一度恋愛していくお話。
ストーリーと見所
異世界を舞台にしたファンタジー小説。
異世界から異世界……というか元の世界にそのまま転生したヒロインが、前世での婚約者(相応に時間が経過しているのでイケオジになっている)と再び結ばれるという物語。
キャラクター性に重きを置いており、メインとなる二人の性格どちらも一癖二癖あるものとなっている。
学生だった相手の男性が今や皇帝になっていたり、それを利用して自由出版ができない帝国で自らの論文を出版するというのが主なストーリー。
……と、それだけ見るとコネだよりみたいなお話に見えるのだが当然そんなことはない。
二人は前世でしっかりと好き合っていたし、出版に関しても主人公は優秀な学者だったのだが、その論文の内容が世界の成り立ちに異を唱えるものであったという理由から暗殺された過去があったりと納得いく理由付けもされている。
ということもあって、主なストーリーラインは古い教えVS知識によって開かれる新しい常識のような形をなぞっておりその辺りもわかりやすい。
それ以外にも政治の話やら、小難しいお話が出てくるが作者さんの文章力が高く、読んでいて困ることは殆どないだろう。
一章の後半で主人公が世界の謎に触れるシーンなどは、ファンタジーとしてもかなりワクワクできるものとなっていた。
それに加えてメインとなるキャラクターの造形もお見事で、どちらも単体で見れば若干……というか結構難ありの二人に見えるのだが、二人が揃ったときにはお似合いに見えるという見せ方をされている。
キャラクター
フリッカ・フォン・フェンサリル
物語の主人公。
暗殺されて貴族の娘として転生した。
所謂天才なので頭がよく、しかも前世では軍人の父を持っていたため多少は武術の心得もあるという文武両道。
なのだが正確に若干の難があり、すぐに手を出すし無鉄砲なところもある。その辺りは能力面の高さと上手くバランスが取れているような気がしないでもない。
ゲオルグ
相手役の男。
所謂陰キャでこちらも正確に難あり。
なのだが主人公視点で見ると転生して成長していたらいつの間にか貴族から皇帝に成りあがっていたとんでもない人物。
主人公のことを溺愛しており、彼女を前にすると不器用な部分が顔を出すのも魅力の一つ……だと思う。
総評
評価点
何はともあれ評価したいのはその文章力。
情景と心情描写のバランスがよく、一人称視点で軽い語り口が多いということもあってか読んでいて疲れが殆どない。
ちょっと小難しい話も入ってくるのだが、それも難なく読み進めることができる。
またキャラクターの造形も上手く、メインとなる二人はどちらも単体で見れば若干性格に難ありだが、二人でいるとそれが上手く噛み合っているように見えるのだから不思議なものである。
物語の根幹にある世界観も、読んでいて非常にワクワクできるものとなっており、ファンタジー小説としての出来もかなりいいものとなっている。
問題点
一先ず一章時点の話ではあるのだが、やはり若干キャラクターに癖がある。人を選ぶ感はあるかも知れない。
またこれはあくまで一章時点の話ではあるが、古い考えと新しい考えの対立的な部分は少しふわふわしているように感じてしまった。
とはいえこの部分に関しては、もう少し物語が進めば解決するだろう。
最終評価 57点(Web小説としては文句なしの良作)
不器用な二人の男女の恋愛と、それに結構骨太なファンタジー要素を追加した女性向けの小説。
ジャンルとしては恐らく溺愛に入るのだと思われるが、それ以外にも様々な要素が散りばめられており様々な視点から物語を楽しむことができる。
特に上でも書いたが文章に関してはとても上手く、描写の見事さに加えて全く疲れることなくストーリーを読み進めることができる。
所要時間は『「やり直し大恋愛」編』までで凡そ30分ほど。
極めて個人的な感想
※本文より引用
パパがパパリーノでママがママリエンヌっていう名前なんだ?
ふうん。
個性的な名前ね。
とりあえず名前の件はひとまず置いておこう。
で、何故か笑ってしまった。