Web小説発掘記 その175 復讐αとΩ堕ちαは、デスゲームの運営人 作者 茶々様

本編URL

https://estar.jp/novels/26082844

前書き

この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは記事を書いた時点での最新話である『第9話.蘇兄弟』までを読んでの感想、レビューとなります。

あらすじ

「俺のために壊れてよ、雲十」 信頼していた兄に裏切られ、デスゲームに売られた成世と、出資者である兄を支えるため、自らゲームに参加した雲十。2年後、運営人となった元プレイヤーの彼らは、とある出来事をきっかけに、互いにαでありながらもセフレとしての関係を築いていた。
鬱陶しがる反面、徐々に成世に依存していく雲十。
好意的に振る舞い、甘い言葉を囁く一方、雲十に不穏な感情を抱き続ける成世。しかし、施設に幽閉され、閉鎖的な空間で執着し合う彼らの関係は、「デスゲームを終わらせる」と宣言した1人のプレイヤーの出現によって、次第に揺らぎ始めて──。
運営人とは、出資者とは何者なのか。デスゲームの目的はいったい何なのか。そして、彼らの行き着く結末とは。 オメガバース×デスゲームの運営人。 狂気と純愛が織り成す、新感覚のBLサスペンス。

ストーリーと見所

まず前提としてこちらの作品はオメガバースとなっている。

え?オメガバースが何かって?まぁ、筆者にしてもよくわかってはいないのだが、要は女性向け作品のなんかこういい感じにエロスが入り混じる官能的な世界観を上手くまとめて共通認識にしたもの……的な?

いや、まぁ勿論説明自体は調べれば簡単に入ってくるのだが、(覚えられるかは別として)正直なところこの世界観の意味と言うのがどうにも今一つピンと来ていない。

認識としてはやはり都合のいいポルノワールドの世界観を真剣に構築してみました……と言った感じではある。

勿論それを読む人や描く人にとってはそれ以上の意味があったりもするのだろうが、ちょっとそこまで深くは理解できていないかも知れない。

何せ筆者が読んだオメガバース作品はこちらで2作品目なので。その辺りはちょっとご勘弁を。

で、まぁ長々と語ったが物語に入るとしよう。

こちらはデスゲームが舞台……ではなく、デスゲームの運営が舞台となって繰り広げられるエロティック+サスペンスなお話となっている。

物語は多くの人物の意図が糸のように絡み合い(上手い!)ながら進行していき、こちらのデスゲームに恨みを持つ者達が運営の内部に入り込み破壊するんだかそれとも取り込まれるのか……のようなお話となっている。

最新話の時点でようやっと登場人物の顔見せが終わったようなところなので、まだその辺りがどう進んでいくのかは予想がつかない。

数名はやはり内部から何かしらの揺さぶりを掛けるような動きもあるのだが、果たして主催側も一筋縄ではいきそうにない雰囲気を醸し出している。
この辺りの雰囲気はとてもいいんじゃないかな。

……なのだがやはりちょっと難しい点があったりもする。
取り敢えず現状読んだ段階では、オメガバースである理由がちょっとわからないと言った感じ。

勿論設定としてαとかβが語られてはいるのだが、物語的に影が薄いのも事実。申し訳程度に時折設定が出てきて、正直なところこれは普通のBLでもいいのでは?と思ってしまう。

ただしここに関しては自分で自分に対する突っ込みを入れよう。
まず第一にそもそもこちらの作品がまだ途中であること。しかも登場人物の顔見せが終わったぐらいとあっては、正直それらの要素が生かされるまで話が進んでいない。

第二にオメガバースであると言うことそれ自体に意味があると言うことだ。

要はフレーバーとして語られているだけでも、男性キャラクター同士に絡みを見る際にそう言った要素が好きな人はより物語に深く入り込むことができると言うことだろう。

オメガバースと言う普段はあまり読むことのないジャンルなのでちょっと混乱してそんな疑問を抱いてしまったが、ここでこうやって自身を論破していい感じにお話を纏めておくとする。

後読んでいて気になった部分は、やはりキャラクターの多さだろう。
と言うか、主人公誰?

多分群像劇的なスタイルで書いているのだろうが、ちょっと散らかっている感じは否めない。

最初の方の登場人物ならまだしも、途中に出てきたキャラクターの悲劇的な話をされても正直なところあまり心を動かされなかったのは残念。

とまぁ、問題がないと言えば嘘にはなるのだがこちらはその一言で片づけられるものでもない。
こちらの小説は男性同士(オメガバース要素を含んだ)のBL小説でもある。

なので彼等の絡み、つまりはポルノ的な要素も物語の面白さに含まれる。
(BLをポルノと一緒にするのは些か失礼かも知れないが、上手い表現が思いつかないので勘弁していただきたい)

だとすればある程度キャラクターが多いのは仕方がないし、彼等の生い立ちや立場を見て魅力的に思える読者にとってはさほど気にならない部分でもあるだろう。

あくまでもBL作品を普段から読むことはない男性目線で見て……の話なので、この辺りは読み手によって大分印象が変わることは留意されたし。

キャラクター

漣怜也

物語の主人公。……多分。

出てくるのは遅いが、彼の登場する話に主人公と書いてあるのでそう判断した次第。

本来はデスゲームの参加者だったのだが、勝利した賞品に加えて色々と事情が重なった結果として運営側に参戦することになる。

本編中で宣言している通り、彼等が行っているデスゲームを内側から破壊するのが目的。彼が出ている部分はかなり読みやすく物語も進行していくため面白い。

なのだが主人公の割に出番が少ないのがどうにも……と言ったところ。

総評

評価点

あまり他では見ることのないデスゲーム主催者側と言う舞台。

そして多くの登場人物達がそれぞれに目的を持ち、それらが交錯することで物語は先が読めない展開へと続いていく。

その辺りのサスペンス要素に加え、BL要素もそれなりの頻度で入ってくるのもいい息抜きになるのではないだろうか。

その部分にしても単純に男同士の絡みを書いているだけではなく、その奥にある真意の一端を読者が知ることが出来たりと、物語としてしっかりと意味のあるものになっている。

問題点

ちょっとキャラクターが多くて、焦点の宛所がわかりにくい。

一応は全員を満遍なく見れるのが理想なのだろうが、なかなかそれも難しいと言うのが本音である。

またいい意味でこれから先が予想できない反面、それなりの量を読んでもまだ物語の世界観が把握できないのも気になった点ではある。

最終評価 54点(Web小説としては充分な良作)

オメガバース要素に関してはちょっとわからないが、複雑かつそれなりに重みのあるサスペンス要素とBLがいい具合に融合した良作小説。

また問題点としてキャラクターの多さを挙げたが、一応その辺りに関してはイラスト付きの名簿が物語の最初や途中にあるので、ある程度解決できている。

ストーリーとしてはまだ始まったばかりで、今後どうなっていくのかが予想できない。その先の読めなさが、サスペンスとしてはかなりいい味を出せているように思える。

色々と疑問も多いが、その辺りも続きが書かれることで順次解決していくだろう。そのぐらいの物語としての作り込みは感じられた、期待できる一作。

BLやオメガバースに抵抗のない人なら、質のいいサスペンス小説として手に取ってもらいたい。

所要時間は記事を書いた時点での最新話である『第9話.蘇兄弟』までで凡そ40分ほど。


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