Web小説発掘記 その151 チョメチョメ少女は遺された ~変人中学生達のドタバタ青春劇~ 作者 ほづみエイサク様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16817330661278509471
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『日向ぼっこ好きは台風の目の夢を見る』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
鈴木陸は校内で無くした形見の腕時計探している最中に『なんでも頼み事を聞いてくれるヤツ』として有名な青木楓に出会う。
「その悩み事、わたしが解決致します」
しかもモノの声が聞こえるという楓。
陸が拒否していると、迎えに来た楓の姉の君乃に一目ぼれをする。
招待された君乃の店『Brugge喫茶』でレアチーズケーキをご馳走された陸は衝撃を受ける。
レアチーズケーキの虜になった陸は、それをエサに姉妹の頼みを聞くことになる
「日向ぼっこで死にたい」
日向音流から珍妙な相談を受けた楓は陸を巻き込み、奔走していく
レアチーズケーキのためなら何でもする鈴木陸
日向ぼっこをこよなく愛する日向音流
モノの声を聞けて人助けに執着する青木楓
三人はそれぞれ遺言に悩まされながら化学反応を起こしていく
——好きなことをして幸せに生きていきなさい
不自由に縛られたお祖父ちゃんが遺した
——お日様の下で死にたかった
好きな畑で死んだじいじが遺した
——人助けをして生きていきなさい。君は
何も為せなかった恩師?が遺した
これは死者に縛られながら好きを叫ぶ物語。
ストーリーと見所
死者に縛られた者達の青春ラブコメ。
物語としては主人公が「なんでも頼みごとを聞いてくれる」と評判の女の子と出会うところから始まる。
割と電波なことを言っている彼女との出会いから、主人公の生活が少しずつ変わっていって……的なお話。
こう、なんと言うか……まぁ、イニシエエロゲギャルゲ感のある物語ではある。具体的にはKey作品とかそんなの。
実際のところ作者さんが意識しているどころか存在を知っているかは定かではないが。
一先ず読んだ感想としてはそんな感じ。イニシエから生きている諸兄ならばそれだけで何となく雰囲気を察してはくれたのではないだろうか?そんな老人はいない?うん、そうね……。
お話の雰囲気としては会話劇+主人公とヒロイン達の重い過去と言った感じ。
ちなみにストーリーとしては普通に面白い。
主人公と女の子達の交流が丁寧に書かれていて、そこから少しずつ彼女達の違和感……いや、違和感自体は登場したときからあるのだが。
とにかくその辺りの事情が明かされていくのが読んでいて先が気になってくる。
何よりも主人公自身も彼女達の心の闇的なあれと向き合っていく中で、自分の過去を思い返し決断する。その辺りの流れが非常にイニシエエロゲ感を醸し出しており、個人的には少しばかり郷愁を覚えた。
勿論それらを知らない人でも充分に楽しめるような内容となっており、各キャラクターの意味深な発言や主人公の謎など、気になる要素は幾つもある。
それらが少しずつ解けていくにつれて主人公と女の子達の仲も深まっており、そのころには読者は彼等のハッピーエンドが見たいと願うようになっていることだろう。
キャラクター
鈴木陸
物語の主人公。
年齢相応の学生と言った感じのキャラクター。
頼りなく見える部分もあるが、決めるときはしっかりと決めてくれる。
彼自身にも謎が多く、あらすじにもあるなくしていた形見の腕時計はまだ見つかっていない。
レアチーズケーキが大好きで、それが原因でトラブルに巻き込まれることもある。
青木楓
ヒロイン。
モノの声が聞こえる少女で、何処となく鍵っぽさがある。
なんでも悩み事を聞いてくれる奴として有名で、その名に違わずあちこちから頼まれごとをされている模様。
物語の中心人物で、謎が非常に多い。
日向音流
ヒロインその2
日向ぼっこで死にたがっている女の子。
彼女がどうしてそうなったのかはここで長々と説明するよりは、本編を読んだ方がいいだろう。
不思議ちゃんみたいな現れ方をしたが、それ以外は割と普通の女の子だったりもする。
総評
評価点
文章はテンポが良く、非常に読みやすい。そこそこの量……多分文庫本一冊分ぐらい?を読んだのだが、割とあっさり読めてしまった。
登場人物に関しても充分個性的で、キャラクターが際立っている。
特に女の子は明らかに何か闇を抱えてそうな人物像をしており、彼女達がこれからどうなっていくのか、ストーリーに期待が持てる内容となっている。
総じて先を読ませる力に長けた小説であり、一度読んだら結末が気になって仕方がなくなることは間違いない。
問題点
この辺りは個人の意見だが、言うほど変人か?と言った感じ。
まあ別に物語の面白さが減るわけではないので特に問題はないのだが、その辺りの説得力には欠ける。
勿論現実にいたら間違いなく変な人なのだが、物語世界なので殊更に強調されてもまぁ……と言った気分にはなった。
シュールと言うか、持って回ったような言い回しが多く、特に日常シーンはやや冗長に感じてしまう部分があった。
最終評価 62点(Web小説としては間違いなく秀作)
実際に作者さんがそれを意識しているかどうかは別としても、何処か懐かしさが溢れるラブコメ小説。
キャラクターは魅力的で、ストーリーも面白いと非の打ちどころのない物語を展開してくれる。
特に重要な場面での筆の乗り方は凄まじく、まさしく引き込まれる物語を描いている。
シュールでありながら鋭く温かい、そんなラブコメ小説。ラブコメ好きもそうでない人も読んでみるといいだろう。
所要時間は『日向ぼっこ好きは台風の目の夢を見る』までで凡そ1時間。
どうやらもうすぐ完結らしいので、楽しみである。