Web小説発掘記 その263 レヴェリア、龍の舞う島々 ー無限の空をめぐる戦い。夢の国を造る少女と、それを支える男の物語ー 作者 藤村 樹様
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前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは『第38話 君を支える風になる』までを読んでの感想、レビューとなります。
※甘口記事です。
あらすじ
無限の空に浮かぶ島々に、龍と人が住む世界レヴェリアが舞台の物語。龍神を主神とする神聖国家カレドラルは龍と共鳴することで自然のちからを引きだすことができる龍騎士を擁する国だったが、十年前に帝国ヴァレングライヒに侵略され、鉄と炎の国アイゼンマキナに造りかえられていた。
主人公レゼルは銀髪翠眼の少女で、穏やかだが内に強い闘志を秘めている。闘う龍の巫女にして亡国カレドラルの王女であり、風のちからを操る龍騎士でもある彼女は、一騎で龍に乗った戦士数百騎分に相当する強さを誇る。祖国を復興し、宗教や民族の垣根を超えて誰もが幸せに暮らせる夢の国を造ることが目標。
彼女はカレドラルの残党である翼竜騎士団を率いて長きにわたる戦いを続けていたが、鉄炎国家の宰相ゲラルドが開発した数千機もの機械の龍(機龍兵)と、父の仇であり強力な炎の龍騎士であるオスヴァルトに阻まれ、祖国を取りもどせずにいた。
物語の語り部グレイスは飄々としているが心優しい性格の青年。一見して、各国を旅するただの行商だが――。物語は彼がアイゼンマキナを訪れたときに翼竜騎士団と出会い、仲間に入れるように申しでるところから始まる。
これは、夢の国を造る少女の戦いと、それを支える男の物語。
ストーリーと見所
空に大陸が浮かぶ世界を舞台とした戦記系のファンタジー小説。
主人公達は亡国の姫を中心とした反乱軍となって、強大な帝国と戦うというのがストーリーのメインとなっている。
空の世界……?
ドラゴン……?
帝国……?「ううん、サラマンダーよりずっと早い!」
うっ、頭が!!
などと趣味の悪い冗談はさておき……。
いいねえ!
こういうのがいいんだよ、こういうのが!
主人公(厳密にいうと違うが)が姫を支えて、強大な帝国と戦う、深まる絆!
ドストレートにみんなが好きなもので殴ってきてくれる、気持ちがいいまでの王道戦記小説。
文章は割と軽めで、非常に読みやすい。とはいえその割には描写もしっかりしているので、誰が何をしているのかよ迷うような場面は殆どない。
各キャラクターも個性的かつ魅力的で、特に一章に関してはキャラクターが多すぎず程よく覚えられる程度の数に抑えられているのが実に読者に優しい。
そういった意味でも本当に読みやすく親しみやすい小説といっていいだろう。
どうしてもハードルが高くなりがちな戦記ものでそういった形に仕上げられているのは本当に凄いことで、入門にもぴったりだしある程度慣れ親しんだ人にとっても充分に読み応えがある。
その上で読者が望む王道をしっかりと走ってくれているのだから、もう文句のつけようがない小説なのだ。
なのだなのだ。
キャラクター
グレイス
物語の主人公……ではない。
彼は語り部であり、ストーリーは主に彼の視点を中心に語られるが決して主役ではない。
涼宮ハルヒでいうところのキョンということだ。
なんかこの説明、前にも使ったような気が……。
とはいえ決して没個性なわけではなく、盗賊としての技と頭の切れで主役である姫をサポートする、彼女にとってなくてはならない存在としてちゃんと描かれている。
レゼル
物語の主人公。
亡国の姫で、夢の国を作るのが彼女の目的となる。
まさに主役に相応しい清廉潔白な人物で、その上でちょっとした可愛げもあったりもする。
グレイスとはいいコンビとなっていき、二人の今後の関係も見逃せないところではある。
総評
評価点
読みやすい文章に、わかりやすい物語。
各キャラクターの魅力も充分に出せており、一度手を出せば一気に読み進めてしまうだけの物語への没入度の高さを誇っている。
特に戦記ものにありがちな、登場人物が多くて小難しくなっていく感じが少ないのもとても読んでいて助かるところ。
問題点
ないよ。
最終評価 XX点(甘口は点数なし)
空の世界を舞台とする、ロマンあふれる戦記小説。
語り口は軽めで話に入り込みやすく、そこに魅力的なキャラクターが相まって作品としてのクオリティは非常に高い。
かと思えば読みやすいだけではなく、物語は重厚で特に世界観に関してはかなり深く作り込まれている。
登場人物も男性は格好良く、女性は格好良さの中に可愛らしさがあり、読めば読むほどに愛着が湧いてくる。
戦記ものが好きな人にも、初めて読む人にもお勧めできる優良小説。
所要時間は『第38話 君を支える風になる』までで凡そ1時間ほど。