Web小説発掘記 その117 異能さん、いらっしゃい! 作者 りの様
本編URL
https://sutekibungei.com/novels/87347324-8d81-4091-a41c-99ac38ee6f0a
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的意見です。
評価の基準としては200円~700円前後の書籍を購入し、読んだものとして付けさせていただきます。そのため基本的には厳しめとなります。
※こちらは記事を書いた時点での最新話『①オレの心は曇り切っている』までを読んでの感想、レビューとなります。
あらすじ
異能力によって欲望を叶えた人間が次々と謎の死を遂げている。
その真相は監視体制(プライベート・アイ)だけしか知らない。
彼らは楽して自分を変えられるという噂があるウェブサイト天地開闢(スキルマーケット)にアクセスしていた。
天地開闢の管理人である相互補完(クラウド)から異能力を手にした人間は異能力者となって人生を変えた。
そんな異能力に翻弄されている彼らを今日も監視体制が見守っている。
ストーリーと見所
天地開闢(スキルマーケット)と呼ばれるホームページにアクセスし、意能力を得て望みを叶え、その力に翻弄される人々の物語……。
早い話があれ、闇金ウシジマくんではなくてせぇるすまん的なやつ。
本人がやってくるのではなくホームページでビデオ通話でもOKと言うのがなんとも現代らしい。
物語は短編形式で語られて、天地開闢にアクセスした人に対して相互補完(クラウド)が能力を与える。そして彼等がそれによって望みを叶え……破滅したりしなかったりするのを見ていく物語。
視点……と言うわけではないが監視を行っているのが監視体制(プライベート・アイ)と言う人物の模様。
内容としてはせぇるすまん的な短編集として普通に楽しむことができる。異能力を得た人々はご多分に漏れず、ブラック企業でうだつの上がらない生活をしていたり、引きこもりだったりとお世辞にも成功者とは言えない人達。
そんな彼等が異能力を手に入れ、その力で何かを得て破滅するまでを描いている。
作品の面白さとしては、やはり異能力につけられた洒落た名前だろうか。例えば最初の人物は自信と他者の能力を入れ替える力を手に入れて、それは他力本願(カッコウ)と呼ばれている。
その他にも能力に似合ったユニークな名前が名付けられている。そしてそれらには各々条件があり、それに触れしまうと命を落としてしまう。
また物語の展開も読者を飽きさせないようにと、時系列が前後していたりと視点が入れ替わったりすることでミステリーのように楽しむことができるようになっている。
キャラクター
天地開闢(スキルマーケット)
妙齢の美女。
どうやら彼女が異能力を生み出しているらしい。
何やら色々と事情はありそうだが、その辺りに関してはまだ全てが語られているわけではない。
相互補完(クラウド)
登場人物達に異能力を与える老紳士。
最新話では彼の過去が明かされる模様。
監視体制(プライベート・アイ)
時々出てくる。
総評
評価点
読みやすく、暗い雰囲気が人を強く惹きつける要素となっている良作短編小説。
お洒落な異能力の名前に魅せられたのは束の間、物語自体は割と容赦なく人が破滅していく姿が描かれているので非常に愉悦を感じながら読むことができる。
ダークな雰囲気で、今のところ大半がバッドエンドなのでそう言うのが好きな人に特にお勧めできる。
問題点
物語としては面白いのだが、全体的にパワーが低め……もっと具体的にいえば、一つ一つのお話が思ったよりもあっさりと終わってしまったかなと言った印象を受ける。
最終評価 55点(Web小説としては充分な良作)
こざっぱりとまとまった良作の短編集。
物語の主軸となる異能力がありつつも、それを手に入れた一人一人の人物に焦点を合わせて展開していく物語はそれぞれが程よく薄暗い雰囲気をまとっており、独特の面白さがある。
人間の欲を始めとする、目を背けたくなる部分を楽しめ存分に楽しむことができる良作小説。
所要時間は記事を書いた時点での最新話である『①オレの心は曇り切っている』までで凡そ20分ほど。