しいたけ賞(仮)その39 落ちぶれ巫女とタタリガミ 作者 キリン様
本編URL
https://kakuyomu.jp/works/16818093077733746570
前書き
この記事は作品のネタバレを含みますのでご注意。
こちらの記事はあくまでも筆者の個人的感想です。
例えそのような内容であろうと、作品の価値を定めるようなものではないことは予めご了承ください。
あらすじ
生まれつき才能が無いとして他の巫女から落ちぶれ扱いされている天道ヒナタは、父親との喧嘩によってついに家出を決意する。自分一人だけで悪しき妖魔を倒し、才能がなくとも巫女として戦えることを示すために。
しかし、現実はそう上手く行かない。
やっとの思いで倒した妖魔は天才と持て囃される妹にとっては雑魚同然で、挙句の果てにはその妹に命を救われる始末……全部が嫌になったヒナタは走り出し、逃げ出す。──だが今度はなんと、その妹が妖魔に殺されかけていた!?
ヒナタは持てる全てを総動員し妹を助けることに成功する。
しかしそこが運の尽きだった。もう一歩も動けないほど痛めつけられ、妖魔に追い詰められた彼女は、悔し紛れに祈りを吐き捨てる。
「助けて、神様……!」
「おう、任せとけ」
なんとそこに顕れたのは、とんでもない力を持った神様だった!?
「改めて自己紹介だ。──天翳日蝕神。お前だけの、最強の神様だ」
助けられたその場の勢いで契約したヒナタ。
しかし喜びも束の間、聞けばその神の目的はなんとこの国の最高神である天照大御神への復讐であり、なんと気づいた時には既に契約は結ばれてしまっていたのだ!
(……もしかして私。この国、敵に回しちゃった?)
才能無しの落ちぶれ巫女から急展開! なんとヒナタは、この国の転覆に等しいとんでもないことを目論んでいる祟神と契約した巫女になってしまったのだ!
妖魔、神や祟神、巫女……それ以外のとんでもない奴ら全員を敵に回した巫女の奮闘劇が、今この瞬間ド派手に幕を開く!
──これは、落ちこぼれと言われ続けた巫女と彼女だけの神様が綴る、ケジメの物語──
ストーリーとかについて
タイトルやあらすじにある通り、落ちこぼれの巫女である主人公が最強の俺様系祟神と契約するというお話。
物語の流れは一見すると女性向けの小説のようだが、内容としては極めて少年漫画的となっている。
落ちぶれというよりは落ちこぼれなのだがまぁ、細かいことはいいだろう。
文章がかなり綺麗で読みやすく、戦闘シーンの読み応えはかなりのもの。
序盤の展開もそれなりに王道で、ストーリーもスッと頭の中に入ってくる。
最序盤の段階ではわかりやすく、期待したものをそのまま出してくれる作品といった印象で、話に入り込みやすい。
反面、キャラクターの行動や言動などの細かい部分で「ん?」と思わせるような違和感も散見され、その辺りが気になってしまうのも無視はできない。
まぁ、正直本当に細かい部分なので気にならない人は本当に気にならない程度の話ではあるのだが。
取り敢えず勢いはあって、文章も読みやすくかなり厚みもある。純粋に楽しめる活劇がしっかりと書かれているのは個人的にはかなり高評価の作品。
キャラクターとかについて
序盤の主人公のはとてもいいキャラクターをしている。
相棒になる祟神に関しては、下読みの時点だとそれほど出番も多くはなく、良くも悪くも都合のいいキャラ付けといった印象。
最終評価(極めて個人的な感想)
文章
文章は全体的にかなり読みやすい。
一人称で、主人公の心情も上手く表せている。
キャラクター
いい意味でシンプル。
登場人物のキャラクターから、作中での役割がとてもわかりやすく把握がしやすいのは読んでいてありがたい。
構成
序盤の流れはかなりいい。上手い具合に興味を惹かせ、カタルシスを生み出している。
勢いはあるのだが、その後の家族会議でそれが削がれた感も否めない。この辺りは、後の伏線と期待したいところ。
設定
やりたいことはとてもよく伝わってくる。
反面、細かいところで勢い任せ感は否めない。その辺りを気にしないのであれば、充分に楽しめるものとなっている。
総評
いい意味で勢いが強い作品。
物語のテンポの良さや、出てくる用語や場面のワクワク感はとても強い。
登場人物に隠された過去など気になる要素を散りばめていき、それが物語の中への没入感を高めている。
設定に関しても多少の疑問はあれど、読んでいてある程度は把握しやすいように情報がスッキリとしており、その辺りで読む手が止まることはないのもいい。
様々な伏線が、少年漫画的なストーリーと最終的にどのように結合するのかがとても楽しみな作品。