電車

「締まりかけたドアに入ろうとすると非常に危ないので、覚えてお帰りくださーい♪」

新宿駅の山手線のホーム。僕の前を駆け抜けた3〜40代くらいの男性が締まりかけたドアに肘を捩じ込んで、なんとか乗ろうとした結果、上記の言葉が投げかけられた。

音符なんてつけてみたが、内心ブチギレてるのがこちらまで伝わってきた。ひょっとしたら、

「駆け込み乗車はクソ迷惑ってママから習わなかったのか?その少ない脳みそにそれだけ刻み込んだら今日はさっさと帰りやがれ」

くらいの気持ちだったのかも知れない。遠回しとは言え「帰ってください」なんて言葉を使うくらいだし。

鉄道員(ぽっぽや)とは実に大変な職業だ。ダイヤという分単位の精密さが求められる絶対的なものを守り抜くために動く。人身事故、天候のトラブル、機械の誤作動などの突然訪れるイレギュラーな要素に襲われながらも決してめげることなく仕事を続ける。僕には絶対に無理だ。絶対に無理。絶対。そう考えると、苛立ちが言葉に出てしまうのも無理はない。というより自然だ。僕ならダイヤという神聖な領域に踏み込む悪しきお客をグーで殴ってるかもしれない。

僕らは鉄道がなくなると困るが、鉄道は僕らが一人か二人くらい使わなくやったところでなにも問題はない。やはり敬意を払うべきは鉄道で、僕らは駆け込み乗車をやめるべきなのかも知れない。

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