執念
「自己アピールをしてください」
かつてされたこの質問に、驕り昂っていた僕は「執念」と答えた。
そんな「執念」を持って作った作品は、とてもガキ臭かった。僕は少し考えた。
執念、明確に足りて無かったな。
僕には執念も才能も、何もかも足りていなかった。普通の生活をして、普通に飯食って、普通に映画を作る。そんなんじゃダメだ。絵コンテを読み返す。少しの文字と、簡単な絵だけ。こんなんじゃダメだ。演出の意図、メゾット、何もかもが足りなさすぎる。小手先だけの奇抜さだけで取り繕おうとしていた僕は、落ちて当然の雑魚だった。そんな雑魚の僕を蹂躙していった天才達が巣食う魔境、それが美大なのだろう。
怖気ついたかと言われれば、正直、はい。だ。
しかし、同時にワクワクもしている。彼らを叩きのめすほどの名作を作ってやろう、と、柄にもなくやる気なのだ。もっと切り詰め、もっと詰め込み、もっと吸い込み、吐き出す!
首を洗って待ってろよ。俺は勉強しに大学へ行くんだ。