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本格カンフーで突き進むアクションゲーム「SIFU-師父-」を駆け足でレビュー&紹介

カンフーを極めるために、命は一つで足りるのか。

引用元:https://store-jp.nintendo.com/list/software/70010000056231.html

ゲームのレビューをする為に、セール期間だけで時間は足りるのか。

いや、足りませんね。特にこのゲームの場合は。というわけで今回は「SIFU-師父-」を紹介していきます。簡単なまとめも書いているので、要点だけ読みたい方は目次から「■まとめ」へどうぞ。って事で今回もよろしくお願いします。


■目次



■ストアページ

・Nintendo Switch

・PlayStation

・Steam


■紹介

 では改めて概要を。本作はカンフー(功夫)を題材にしたアクションゲームで、プレイヤーは功夫の師父でもある父を殺害された主人公を操作し、下手人の兄弟子とその4人の協力者を討ち取るための戦いを繰り広げます。

 あらすじとしてはそれだけの極めてシンプルな作品なのですが、独特なコンテニュー方法による緊張感と、見応えばっちりで動かしていて楽しいカンフーのモーション、豊富かつしっかりと役割が分けられた防御方法からなる戦闘の完成度は凄まじいです。ここまで格闘戦を濃厚に描いた一人向けのゲーム、私は他に一つしか知りません。

 モーションに関しては白眉拳という流派を参考にしているそうで、簡単に調べてみたところ「短橋狭馬」つまりステップが狭く腕のスイングも短い高速さが特徴の武術とのこと。フランス人でありながら正式に白眉拳の伝承者として認められた方が戦闘モーションや道場の様式などのアドバイザーを務められているのだとか。


 ゲームとしては、攻撃技の種類はもちろん防御手段も豊富なのが特徴で、ステップ、ジャストタイミングでの弾きは勿論、上段下段への回避、そして対戦要素のないアクションゲームでは珍しくガードも重要な選択肢として存在しています。

 攻防において重要な要素が体力とは別に存在する「体勢」というゲージ。私は未プレイなんですがフロムソフトウェアの「SEKIRO」にあった「体幹」システム同様、敵のゲージを削り切ることで一撃必殺&体力の回復&演出中無敵といった強力な効果をもつテイクダウンを発動できるようになっています。

 もちろんプレイヤーキャラクターにも体勢ゲージは存在しているので、受けきれない技や体勢を大きく崩す技には回避、といったように敵の攻撃を見極めて、最適な防御手段を選択しながら戦う必要があるわけですね。この点でいうと個人的には「バットマン:アーカム」シリーズのフリーフローコンバットに近いと思います。


 面白いなと思ったのが、テイクダウンを決める際に時折敵がテイクダウンを無効化した上パワーアップする現象が発生する点。それまでは「ちょっと強いザコ敵」だった相手が急に「死線を越えた強敵」になって再度挑んでくるわけです。奇しくも先程「他に一つしか知らない」と書いたタイトルにも似たようなシステムが有りました。

 ランダム性が強くていたずらに難易度を上げていると言ってしまえばそれまでですけど、テイクダウンという強力な選択肢に対して、ただ使うのではなく「どのタイミング使うべきか」を考える必要性を生み出していると感じました。

 そう、このゲームはただカンフーのモーションをリアルに作っただけのゲームではありません。敵の本拠地に単身乗り込んでいくという都合多勢に無勢は当たり前、無手のこちらに対して当然のごとく武装していたりと、ストイックな難易度と高い戦略性とアドリブが求められるゲームになっています。


 数による差、得物による不利を武によって覆す。まる漫画のセリフみたいですが、実際このゲームではそれが出来るし、スムーズにクリアするなら必要になってくるわけですが、最初はそうもいかず倒されてしまうことのほうが多いでしょう。そこで活きてくるのが最初に触れたコンテニューのシステムなのです。

 ゲームのスタート時点では主人公の年齢は20歳なのですが、敵に倒されるたび「年齢を重ねた状態」で蘇生でき、その場合与えたダメージはそのまま戦闘が再開できる上、攻撃力の上昇といった恩恵もあるので戦闘自体は突破しやすくなる一方、加齢の度に体力最大値の低下や一部のパワーアップ要素が取得できなくなるといったデメリットも存在します。

 また、一度重ねた年齢は決して元に戻ることはなく、次のステージ以降もその年齢からスタートすることになるので、その場を切り抜けることは出来ても、少しずつ、確実にゲームオーバーに近づいていくリスクも付き纏ってくるというのが最大のデメリットになるでしょう。

▲年齢や寿命に関する熟語が刻まれている不思議な硬貨の効果で蘇生ができる。こうかのこうか…

 更にいうと加齢は必ずしも1つずつ進んでいくのではなく、死亡回数に応じて加速度的に進んでいくので、プレイヤーは迫る命の刻限を見据えつつ、この場で蘇生をするべきか、それともステージ自体をやり直すべきか判断を行わなければいけません。

▲死亡回数が多いほど加齢は早くなっていく。

 ここで求められる判断って言い換えると、ゲームオーバーに少し近づくかわりにその場の戦闘を優位に進められる「ハイリスク・ハイリターン」と、時間と根気がいる代わりに上達することでクリアする「ローリスク・ハイリターン」のどちらを取るかの選択だと思います。

 計画的に寿命を消費してクレバーに進めるのもいいんですが、ローリスク・ハイリターンな進行方法を提案して、それに必要な要素が「上達」というのは、成長とやりこみというのを押し付けすぎず選んでもらう上で良い仕組みですし、ゲームにおける「残機とゲームオーバー」という概念に対する面白い切り口だと思いました。


 ただし、加齢の速さや若い間しか取得できない強化要素のことを考えると、序盤から年を取りすぎた状態でのクリアは現実的ではないですし、攻撃力が上がるというメリットもその他のデメリットに比べて釣り合いは取れていないように感じました。(私が気付いていないだけで加齢のメリットが他にもあるのかもしれませんが)

 上達への誘導自体は上手いと思いますが、ゲームの序盤で加齢のデメリットの重さに気付けないと強化すらままならなず、上達もできないドツボにはまる可能性があるのが、強いて言うなら本作の良くない点になるでしょうか。

 それでも、何度も蘇生を繰り返していく内、動作を反射的に行えるようになり、敵の攻撃を見切れるようになることで、最初は「年齢:50」でクリアしたステージを段々若い年齢で突破できるようになっていく。この少しずつ上達していく感覚は得も言われぬ楽しさがあるのも事実です。


 もう一つ、個人的に気になった点がプラクティスモードである「自由稽古」が少し扱いづらい点。これ自体は一度突破したステージの敵ならばボスも含めて自由に呼び出せて回避や反撃の練習ができる良い機能なのですが、実際に画面を見てもらいましょう。

▲なんでこんなに真っ赤なんですかね…

 まぁ色は百歩譲っていいとして、壁と床がの教会が分かりにくいです。このゲームは吹き飛ばし効果のある攻撃や投げで壁に敵をぶつけると大きいアドバンテージが取れるので、それも視野に入れた立ち回りが有用なのですが、これではどこが壁なのか全く分からず練習もままなりません。

 あともう一つ、最初の方で触れた「テイクダウンを無効化して強化された状態の敵」や「武器を持っている敵」も自由稽古中は呼び出せないのも気になります。前者はイレギュラーな存在だから呼び出せないというのはわかるんですが、だからこそじっくり練習したいという気持ちもあります。


 最後にこれは内容についてではないし、環境要因の可能性もあるので参考程度にして読んでほしいのですが、元々PlayStation4やPC向けに発売されたタイトルということもあってか、Switch版の動作はやや不安定です。ロードが入るたびに動作が目に見えてカクつくし、エラーでソフトが落ちることも2度ありました。

 このゲームは扉を開ける度に扉を開けてエリアが変わるたびにロードされるので、カクつきもかなり頻繁に発生しますし、困ったことにエリアを切り替えてからすぐ戦闘に移るシーンも多いので、ペースを乱されがちなのがかなり気になります。

 このゲームはスコアアタックやノーミスプレイが最終的に目指す点になると思うんですが、そのどちらにおいても進むたびに起きるカクつきと、戦闘における初動が不安定になるのはかなり厳しいですね。ちなみに初期型のSwitchにSDカード(マイニンテンドーストアで購入したもの)でプレイしています。


■まとめ

☆良い点
・複雑だが完成度の高い戦闘は様々なゲームを唯一無二の完成度。
・メリットとデメリットの双方がある「年齢」システムは新鮮。

★良くない点
・基本的な難易度は高く操作も複雑。スタートラインに立つまでが長い。
・プラクティスモードは必要最低限で、やや不便な面もある。
・Switch版は動作が不安定。(環境要因の可能性もあり)

◆総評(約500字でまとめると)

 父を殺された若い格闘家が鍛えた功夫を武器に単身戦いを挑む。筋書きこそシンプルなものの、慣れれば圧倒的不利をものともしないまるで漫画や映画のような立ち回りが可能な高い完成度の戦闘が魅力のアクションゲームです。
 特徴的なのが、倒される度に「加齢して蘇生する」という変わったコンテニュー方法。戦闘続行の代わりにゲームオーバーに近づくか、やりなおして上達するかの選択を求めることで「残機とゲームオーバー」という当たり前の仕組みに独特の緊張感と、成長・上達する楽しみを与えてくれています。
 ただ、半ばミスを前提としたシステムから分かるように難易度はかなり高め。操作も複雑で、加齢にも重いデメリットがありますし、基本的には優れた機能のプラクティスモードも、背景が見辛い、一部のシチュエーションに対応していないなど、やや行き届いていない面もあります。
 総じて、中々上達できないもどかしさ、勝てない悔しさと命の刻限が迫る焦りが入り交じる独特な体験ができるゲームで、こんな体験ができる作品は中々現れないでしょう。歯ごたえのあるゲームがやりたい、普通のアクションゲームとは異なる体験をしたい。そんな人におすすめです。


■おまけ:スムーズに遊ぶ上で覚えてほしい3つのポイント

 さて、ここからはおまけとして、このゲームをスムーズに遊べるようになるためのポイントを三点に絞ってご紹介します。
 本文でも触れた通り、本作はスタート地点に立つこと自体のハードルが高い作品ですし、基本的には繰り返し遊んで慣れるしか攻略方法はないのですが、それでも要点を掴むことで慣れる速度を上げることは出来るはず。難しいなと感じたら参考にしてみてください。

一. 体さばきと定石コンボを体得すべし

練習は大事

 攻撃にせよ防御にせよ出来ることが多い上、集団戦も多い本作においては、複雑な入力を瞬間的に判断して行うことが求められるわけですが、中でも大事なのは回避の動作と扱いやすいコンビネーション。回避については次の項目で触れるのでここでは覚えて欲しいコンボについて触れていきます。

☆弱弱足払い:

▲集団戦での基本コンボ、敵を転がした後はタイマンなら追い打ちをかけ、他の敵がいればそちらの対処に集中する。

☆弱弱強:

▲集団戦で他の敵や壁の方向に蹴り飛ばしたり、距離を離したりするのに使おう。

☆強強決め投げ:

▲タイマン戦で攻撃の回避後に使う。状況によっては【弱弱足払い追い打ち】まで決められる。

 ポイントとしては出来るだけ短いコンビネーションを意識すること。長いコンボは途中でガードされたり弾かれたりすることが多いですし、攻撃中は防御の操作がおろそかになりがちなので、コンパクトかつ状況を有利に運べるものを選択しましょう。

二. まずは回避より始めよ

つまるところ「イメージトレーニング」ですね

 攻撃の次は防御に関するインストラクションを。本作は受け(ブロック)、弾き(跳ね返し/受け流し)、上段と下段回避(見切り)、ステップ(回避)と複数の防御手段がありますが、見切りは弾きほどのリスクはなく、ブロックよりもリターンが大きい防御方法なので、まずはこれを使いこなせるように自由稽古で練習を行いましょう。

 その際のポイントですが、まず受け手に回ると決めたら[L]ボタンを押しっぱなしにしておくこと。そうすればスティックの入力だけで即座に回避行動に移れます。タイマン戦なら常に押しておくくらいでもいいですね。

▲完全に反射で回避していた数少ない例。

 そして二つ目は全ての攻撃に反撃しようとしないこと。このゲームの敵は予備動作が短い攻撃を連続で放ってくるパターンが多く、防御に徹しても全てのパターンを回避するのは難しいです。

 ただ、序盤の敵の殆どは2つしか仕掛けてくる際のパターンがありませんから、まずはその2つを自由稽古でしっかりと見極められるようになれば、強敵とのタイマンもかなり楽になります。(ぶっちゃけ防御に徹しきれない集団戦よりも楽)

 三つ目のポイントは反撃を入れるタイミングです。相手の連続攻撃を見切ることに慣れたら次は反撃に移るわけですが、すべての攻撃に反撃を狙うのではなく、特定の攻撃に焦点を絞ることを意識しましょう。これに関しては文章だけでは分かりにくいので動画をどうぞ。

▲一段目に反撃をしても二段目に当たるので二段目を確実に避けてからカウンター。

 一段目への対処は[L]ボタン押しっぱなしで受けてもいいです。次の回避で体勢は回復できますからね。

三. 五体だけでは不足。周囲全てを用いて戦うべし【状況判断】

状況判断だ

 攻撃と回避の方法を身に着けてもなお、敵の集団に単身で戦うのは難しいことです。そこでこの項目では戦略についての考え方を簡単にまとめてみました。

・不意打ち
 卑怯?いえいえ立派な戦略です。完全な不意打ちであればそのままテイクダウンに移行出来るのので、部屋の中にいる大勢の中のひとりでも予め減らせればその後の立ち回りはずっと楽になります。

 その他、敵の中には余裕の表れであったり、そもそも状況を理解していないなどで話しかけてくる者もいるわけなんですが…

▲わざわざ最後まで会話をする必要なし。

・地形の利用
 本作の戦闘は屋内戦が基本になるので、常に地形を活かすことは意識しておきましょう。例えば、狭く出入り口が限られた部屋で戦えば視界の外から急に攻撃される危険は減るし、壁にぶつけることで大ダメージを与えやすい。

▲入り口は二箇所、どちらも見えるポジショニング。

 逆に大部屋なら前蹴りなどで大きく弾き飛ばせる。と場所によって取れる戦略は異なりますが、共通しているのはこちらの有利なように戦闘を進めること。まずは各個撃破に持ち込む事を意識しましょう。

・物の利用
 敵のホームグラウンドに乗り込む都合、敵だけ最初から武装している。というのは本文でも触れた通り。とはいえこちらも無手で挑む必要はありません。

 敵が持っている武器は足払いなどで倒せば落とすのでこれを利用するのは有効ですし、技の一つ「環境利用」を習得すれば、飲み残しの瓶、荷入りの箱や椅子など、一見ただの背景に見えるこれらだって立派な武器になり得ます。

何度かリテイクしてようやくいい感じに撮れたのでご満悦のツイート

 特に本作は遠距離に対する攻撃方法が少なく、こういった小物を利用するほかは武器を投げつけるしかないんですが、継続して使える(=大勢を倒せる)武器を使い捨てにするのは勿体ないです、環境利用で使えるものが近くにあると[R]ボタンのアイコンが画面に出るので、戦闘前や戦闘中に大まかな位置を把握して活用することを意識しましょう。

  また、武器を持った敵はそれに頼って大振りな攻撃を仕掛けてくる事を利用して、わざと武器を渡してしまうというのも面白い。武器を持った状態で瓶などのアイテムを入手し直せば今持っている武器は落とせますから自信があればお試しあれ。


■あとがき

 以上。「Sifu」の紹介でした。ここまでお読み頂きありがとうございます。

▲他にもゲームの紹介など書いているのでよければこちらもどうぞ。





この先、エンディングに関するネタバレがあります。


■ネタバレ注意:「見逃す」について

本作のエンディングは「復讐」と「武徳」という2つのエンディングに分かれています。前者はそのまま各ボス達に引導を渡す内容、「武徳」というのは逆に彼らを見逃す内容になっているのですが、この「見逃す」というのが厄介なので追記ついでに触れていきます。

▲衣装の条件にもなっているので存在自体には気付いた人も多いはず。

 ざっくり書くと「各ボスの第二段階において体勢を一度削りきり、テイクダウンをせずにもう一度体勢を削り切る」というのが条件で、これを満たすとテイクダウンではなく「見逃す」というコマンドが選択できるようになります。ポイントとしては「体力を残しつつ、体勢だけ削る」という点。これがちょっと難しいのでコツを書いておきます。

▲手癖でテイクダウンを押さないように注意

◆攻撃はできるだけ受けるか弾く

 敵の体勢を崩すには攻撃を受けるか弾くというのがこのゲームの基本で、これはボスキャラにおいても同様。一度倒した相手なら自由稽古で呼び出せるというのは先に書いた通りなので、攻撃のパターンをよく観察しておきましょう。

◆最小限の攻撃で体勢だけを削る

 とはいえ、弾きだけで体勢を削り切るのは現実的ではないので、実際には多少の攻撃を加える必要も出てきます。そこで意識するといいのが壁への激突時には体勢に大きくダメージが入るということ。
 相手が壁を背負っていない時は「強→決め投げ」で壁に追いやり、壁の近くでは「↓↑弱」で出せる掌底で叩きつける。壁が遠いなどの理由で激突させられない場合は「足払い→畳み掛け」の最小の攻撃で削っていきましょう。

◆各ボスの指針

・ファジャール:特になし。出来るだけ弾いて、こちらの体勢が危険域になったら回避からの決め投げを使う。

・ショーン:下段攻撃を警戒して初手を弾きつつ、連続攻撃を回避して体勢を回復させる。

・苦露鬼:ラッシュと突進が弾きのチャンス。攻撃速度が早いので受け、弾き、回避を織り交ぜよう。フィールドは広めだが出来るだけ壁に追い詰めて激突ダメージを狙う。

・ジンフェン:接近すると攻撃パターンが増える上、あちらから距離を取ろうとするので泥試合になる。中距離を維持して鎖分銅を全弾弾くくらいの気持ちで。

・ヤン:受け手に回ると前蹴りかボディブローが初手に来る。前蹴りからの連携はしっかり回避し、ボディブローからの連携は連打が来たら弾きを狙う。また決め投げは通用しないので回避後は掌底で壁へ追いやる。









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