土砂降りの一本道の奇跡
ある日の夕方。
私はバイトに向かう為
土砂降りの中、
傘を差しイヤホンをして
駅へと向かっていました。
とにかく強烈な豪雨で
傘に当たる雨の音がうるさくて
音楽のボリュームを上げて
歩いていました。
道は父がよく犬の散歩に行く道で
両側が工場の塀で挟まれた細い一方通行の道。
その道を抜けると河川敷に辿り着きます。
私は一方通行の道を歩いていました。
音楽以外は何も聞こえません。
今思えばとても危ないですよね(*_*;
両サイドの側溝は水が溢れ出していて
側溝があるとは気づけない程でした。
しばらく歩いていると、
かすかに声がしたような気がしました。
前にも後ろにも誰もいません。
また歩き出そうとした時です。
ふと側溝に目をやると
うっすら茶色い物が水の下の方にあるのが見えました。
何かと思い覗き込むとそれは
ブクブクと泡と共に浮き上がってきました。
子猫です。
すぐ抱き上げて私の上着でくるみ
体をさすりました。
やっと目が開いた位の小さな子猫。
いつからあの状態だったのか
鼻から水が出てきていました。
私はとっさに子猫を両手でしっかり掴み
下に向かって振り下ろす動きを
何度か繰り返しました。
すると、かすかに声を出しました。
バイト先に遅れることを連絡し
私は上着に包んだ小さな猫を抱えて
近くに住んでいたおばあちゃんの所に行きました。
事情を説明しバイトの帰りに迎えに来ると約束し
バイトに向かいました。
子猫と出会った道をまた歩いて気付いたのですが
あの時私は雨の音も聞こえない爆音で音楽を聴いていて
あのかすかな声に気づくはずがないと。
でもあの時確かに何かが聞こえたのです。
それに私が拾い上げた時、子猫は声を出すことは事はなく
ぐったりしていて鼻から水が出てきている様子でした。
バイトを終え、
帰りに子猫が口に出来そうな物を
買いに行きました。
月数は分かりませんでしたが、とにかく小さかったので
ミルクを買って迎えに行きました。
子猫は小さな箱の中でマフラーにくるまれて
眠っていました。
私は箱を抱え帰宅しました。
何も知らない家族は
私が大事そうに抱えている箱を見て
すぐわかった様子でした。
また連れて帰って来たでしょ!
今までも沢山の犬や猫、
鳥などを連れて帰ってきていたので
驚かれる事はありませんでした。
ただ唯一、落ち着かない様子だったのは
愛犬のポピーでした(笑)
今回の子猫との出会いは今までとは違い
奇跡としか言いようがない感じがしていました。
両親にこの奇跡的な出会いの経緯を話すと
お姉ちゃんには動物の
”助けての声”
が聞こえるんだろうね。
本当に不思議です。
私はこの先も
”助けての声”
を聞き続けるのです。
奇跡だと思っていた今回の出来事。
奇跡はそう何度も起こる事ではありませんよね。
だとしたら…
私とその声を繋ぐ理由が
あるのではないでしょうか。
最後まで読んで下さり有難うございました。