父からのある夜のお話し。
私の父はもともと霊感があるらしく、
時々恐怖体験を聞かせてくれました。
父のお父さん(私にとっての祖父)は
鹿児島県奄美大島の出身で昔から数々の霊体験をしていた様で
よく父に話してくれていたそうです。
そんな祖父からの遺伝なのでしょうか
父も同じような恐怖体験をしたそうなのです。
それは父が結婚して数年が経ったある夜。
寝室に入ると母が先に寝ていました。
父は母を見るなり凍り付いたそうです。
その理由は
寝ている母の腹部の上に
白髪の髪を後ろで小さくお団子に縛った
小柄なお婆さんが正座をして
母の顔を覗き込んでいたからです。
何も言わずただただじっと母の顔を・・・
父はあまりの怖さに
母を起こす事なく
すぐさま布団に入り必死に目をつぶって
朝が来るのを待ちました。
翌朝です。
父は母に昨夜の出来事を話しました。
当然ですが母は全く信じませんでした。
母は特に怖い話が嫌いな人なので
少し怒り気味にその場から立ち去りました。
すると電話が鳴りました。
電話の相手は母の姉からでした。
祖母が今朝、亡くなったとの連絡でした。
しばらくして母は、
父に今朝の話を詳しく聞き返しました。
父は祖母に会った事が無かったので
自分が見たままのお婆さんの姿を説明すると
母は泣き出しました。
その姿はまさに祖母の容姿そっくりだったのです。
母に何かを伝えたかったのでしょうか。
あの日以来、父はお婆さんは見る事も感じる事も
ありませんでした。
母は今でも怪談話は極端に嫌いますが
あの日の話は信じており
私に不思議な出来事として話してくれます。
母のお母さんも理容師だったので
よくおばあちゃんに預けられていたそうで
母は特におばあちゃん子だったそうです。
5人姉妹の末っ子で、年齢差もあった事で
遊びについて行けず
おばあちゃんと二人で遊ぶ事も多かったそうです。
ですが学生になり理容師を目指していた母は
勉強に追われ自分以外の事を考える事が出来なかった時期があり
就職の為に田舎から離れた事で
年に一度会うのも難しい状況になっていったそうです。
最後はいつ会ったのかも思い出せない程で
結婚報告も確か、はがきで伝えたとの事でした。
この話を聞いて私は
可愛がっていた孫の成長を応援していた一方で
会えなくなった寂しさが年々募っていたのではないかと思いました。
大人になり結婚してから一度も会えなかった孫に
最後に会いに来た様な気がしました。
死期が近づくと虫の知らせがあるとは聞きますが
その様な事だったのでしょうか。
母に伝えたかった事があったのでしょうか。
最後まで読んで頂き有難うございました。