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キュクロプス

部屋に入って、最初に目が合うのが、キュクロプス。
あどけない一つ目の巨人が、いつも私を見つめている。ルドンのキュクロプス。ぼんやりした風景にのっそり現れた異形が、優しく私を出迎える。

ある日、部屋に入ったら、キュクロプスの絵が落っこちていて、額縁が破損して、絵が飛び出ていた。

あの人の家へめがけて、すぐに糸電話を投げた。
もしもし?大丈夫?何も起きていない?生きているのね?怪我もしていない?今どこにいるの?昨日は誰といた?お昼は何を食べた?恋はしてる?相手は私?

キュクロプスは、私を見つめていない。

本当は、ガラテアを見ている。海のニンフ。さざなみのように笑う妖精、深海のように涙をこらえる精霊。
私を見つめてはいない。

いつかあなたは、そのあどけない瞳を真っ暗にして、恋敵を殺す。あなたの神話に私がいますように。あなたの残酷さが、私にだけ、私にだけ沸騰しますように。

糸電話の返事はなくて、もう会えないかも、と泣いて、私はニンフになれない。

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