山陽西国巡礼2人旅2021.4
ひうらー伍長は、学生時代からの友だちで、寺社お参り仲間でもある。
休みとなれば2人であちこちにお出かけしてきたが、楽しい思い出ばかりだ。
そんな旅行記の1ページ。
4月某日。
友人ひうらー伍長と、1泊2日の旅行にゆくことにした。
今回は、備前、備中、備後の国へ。
西国の古式ゆかしき神社仏閣、城址、町並みを巡る。
大阪や京都もコロナによる非常事態宣言下におかれ、旅行は自粛な状況の中。
新大阪駅の某所で、密かに集合だ。
今日の目的地・岡山倉敷の天気は、曇ったり晴れたり時々雨なのだとか。
『新型コロナ感染拡大防止のため、車内での会話は控えめにお願いいたします』
と、車内放送でゆってるが、羊好大尉もひうらー伍長も、聞いちゃいない。
新幹線車内の人数が少ないのをよいことに、旅の高揚感も手伝い、おしゃべりしたり、ゲハゲハ笑ってたら、あっという間に岡山駅に到着した。
駅ホームの立ち食いうどん『ふるいち』で、うどんモーニングしましょう。
肉ぶっかけ(温)を、とぅるとぅるいただく。
朝うどん美味しい!
1日のエネルギーになります。
在来線に乗り換え、本日第一の目的地『吉備津神社』を目指しましょう。
岡山駅を出発し、ひと駅ふた駅過ぎたら、のどかな風景が車窓から見えてくる。
うわーい、雰囲気よきー!
吉備線は、桃太郎線ともいうそうで。
ひうらー伍長とおしゃべりしながら、流れゆく車窓景色を楽しむ。
吉備津駅に到着。
電車を降りて、てふてふ歩く。
良い天気やねえ。のどかやねえ。
周りは、田んぼと畑と小山だけ。
コンビニなんて、姿形もない。
参道をゆっくり歩いていると、道の向こうから地元のお年寄りが、
「おえ!アンタら、どっからきたのんじゃ」
と、大声で、無遠慮に呼び止めてきた。
・・・こういうのに関わると、大抵ロクでもないことになるのは承知しているので、一切聞こえなかった事にし、足早に神社の方へと歩いてくことにした。
ふと気がつくと、ひうらー伍長の姿がない。ヤツはどこいった?
すると、後ろでひうらー伍長が、なにやら親しげにジジイに挨拶している。
何やってんだ?アイツ?
「こんちわー、ボクら大阪から来ました。今日は、旅行で。良い天気でよかったですわー」
などと、ポップな感じで、地元ジジイと話しはじめた。
おいおい、なに考えとんねん。
コロナの非常事態宣言出てる大阪から来ましたー!って、自分から言うなよな。
地元のヤバいジジイ相手に、どう絡まれるか知れたもんやないのに。
ひょっとしたら、アホなんでしょうか?
お幸せに、と心の中で祝福し、私は1人でとっとと先に行く事にした。
参道を歩く。なるべく早足で。
吉備津神社は有名な神社だと聞いているが、参道には、今のところほとんど人影はない。
道の両脇は、松の並木になってるが、参道沿いを賑やかすような、屋台もない。
清らかというか、ほのぼのしてるとゆうか。
穏やかな気持ちになるなあ、としみじみ感じながら歩いてたら、後ろからひうらー伍長が追いついてきた。
「1人で先行くなよー!あの地元民のおじいちゃんと、あたたかい触れ合いしたわー」
とか、満足げに言うてる。
あー、そーっすか。
なに?最初は機嫌よう会話してたけど、ジジイの耳が遠いせいで、延々と話がループしだしたので、ヘラヘラ笑って誤魔化して、逃げるように去ってきたの?
だーから言わんこっちゃない。
あ、そんなこんなしてたら、吉備津神社到着したみたいですよ。
階段をヒーヒー言いながら登り、神社の本殿に到着した。
吉備津神社は、『アメトーーク!』の『岡山盛り上げよう芸人』で紹介されてるのを見て、行ってみたいなあ、と憧れていた神社。
そこに立ってることに、あらためて感慨深く思っていると、ひうらー伍長は、
「ヒャッハー!ご朱印ーーー!」
と叫んで、どこかに走り去ってしまった。
どこへ行っても同じやな。
御朱印の、なにがそんなに良いんだか。
御朱印まみれのひうらー伍長は放っておいて、1人で境内をゆっくり見て周ることにした。
本殿の、古式ゆかしい作りの佇まいこそ美しい。
庭園も良きですね。
どれ、御神木の木陰でひと休みしよ、と涼んでいると、御朱印をゲットして、ホクホク顔のひうらー伍長が戻ってきた。
「ウフフ、御朱印ゲットだぜ!すぐ横の『一童社』って神社も行こう!その後は、えびす宮いって、宇賀神社にもいって」
と、神社神社、参りまいり!と狂ったように叫んでいる。
落ち着きたまえ。
そんなにアホみたいに神社を連続参拝して、どないすんねん。
ところで、一童社って、『まんが道』に出てくる、児童マンガ出版社みたいな名前やね。
「あ、ホンマやな。怖い敏腕編集者さんとかいそう!」
とか、ウヒウヒ笑って『まんが道』話をしながら、境内をウロチョロする。
吉備津神社の、あの長い廻廊に見とれる。
うわーー・・・。
ひうらー伍長は、ナントカ社宮だの、なんちゃら神社だのに行って、ムダな神頼みに余念がない。
ご苦労さまなこって。
宇賀神社に参拝した後、参道裏を歩いてたら、総理大臣・犬養毅のどデカ像に遭遇。
地元出身の宰相なので、スゴい顕彰している。さすがやね。なあ!?
「イヌカイ?だれそれ?」
と、アタマの悪い質問をしてくる、ひうらー伍長。
5・15事件の時に暗殺された、戦前の政党政治家ですよ。号は木堂。聞いた事あるんちゃう?と丁寧に説明したら、
「・・・あー、アイツな!ハイハイ。」
と、適当なわかった風な返答が返ってきた。
・・・まあ、いい。
次の目的地、『備中高松城址』に向かいましょう。
吉備線に乗り、ひとつ先。
『備中高松駅』へ。
そこから、田園風景広がる集落を歩いて、10分ちょい。
広めの公園があるなあ、と思ってたら、そこが目的地である『備中高松城址』なのでした。
うそーん!?と拍子抜けする、羊好大尉とひうらー伍長。
石垣跡とかも、足軽長屋とかもなく、もちろん天守閣もあるはずもなく。
一面の白詰草が咲き乱れる、だだっ広い公園。
「え・・・?この公園が高松城址なん?ご城印をもらえると聞いてたのに」
と、困惑してる(スタンプ大好き)ひうらー伍長。
なにしろ、お城が無いからねえ。
ご城印もなさそう。
困りましたねえ。
首をかしげて公園を歩いていると、『備中高松城址資料館』と書いてある、ちっちゃい建物を発見。
「あそこだ!資料館内で、備中高松城のご城印が設置してるんちゃうん?」
と、喜び勇んで駆けていくひうらー。
『備中高松城址資料館』は、こじんまりとしていて、ボランティア館員のおばあちゃんと、お手伝いの学生が、椅子に座って雑談していた。
我々以外には、先客はひとりきり。
古くて手作り感がとてもステキな、備中高松城の再現模型や、地方史の同人誌冊子が置いてある。
こういう古めかしい雰囲気とか、古びた本の匂いとかが結構好きだ。
小ぢんまりした資料館をそれなりに楽しみながら、お城の模型や資料を見回る。
ひうらー伍長は、2種類のご城印をもらって、ホクホク顔。良かったね。
資料館を出て、備中高松城址(公園)内を、のんびりと歩きまわる。
お、水道口に、アマガエルが休憩しとる。カワイイな。
・・・。
『備中高松城址』、これにて撤収!
電車で岡山市内に戻り、カレー屋でランチ。
岡山駅から山陽線の電車に乗り、倉敷駅で降りる。
駅から、商店街を歩いていくと、阿智神社の前にたどり着く。
阿智神社への上りの階段を、ハアハアいうて進む。
上って歩いて、丘の上にある阿智神社の本宮に到着。
ハイル、ヒンケル!
ハイル、フューラー!!
「ナチ神社じゃないから。阿智神社だから!バカ言ってないで、わたしゃ御朱印もらってくっから、その辺ウロウロしといて」
と、ひうらー伍長は、まっしぐらに階段登って、御朱印受付に突撃していった。
元気ですねえ。親衛隊ヒンケル・ユーゲントなのかな。
休憩所のベンチで、そよかぜに当たりながら、倉敷の町並みを見下ろす。
おお、これが瓦の街並みね。
阿智神社を出て、藤棚を通りかかる。
倉敷美観地区をサッサと歩き、『大原美術館』に入る。
ひうらー伍長が購入してた『岡山倉敷周遊券』に、大原美術館の入館券も付いてたから。
朝から吉備津神社にお参りし、備中高松城址をグルグル歩き回り、阿智神社も登り下りしたせいで、足はガクガク。
ゆっくり、美術館巡りもまたよしか。
そう思って入館してたら、考えが甘かった。
展示施設として、昔の蔵を利用しているため、各テーマごとに、狭い蔵ひとつ。
展示物がそれなりにあるので、蔵の1階では収まりきれないのか、必ず2階まである。
全て階段で、上っては降り、降りては上り。
これが、ひとつやふたつではなく、4つくらいある。
その度に、階段をのぼって、また降りて。
こんなもんは、美術鑑賞のヒンズースクワットや!
しんどい!もうイヤ!!
羊好大尉が、メーメー!と悲鳴をあげているのに、自称・美の使者・ひうらー伍長は、必ずマメに1階の展示をみて、2階も貪欲に駆け上がって展示みる。
もうええやん。どーせ、美術品の価値なんて、ロクにわかってないやろ!
サッサと出ようよーー( ; ; )
「大原美術館まで来て、2階にのぼるのがシンドいとかよう言えるな。アホなんか?見たまえよ、この美しいペルシャの花瓶の質感・・・これは良いものだ!」
ウソくさ。花瓶なんて、アンタは使わんでしょ。良さなんてわかんないでしょ。
と、私がツッコむと、
「あのね、こういうものは、使うとか使わんとかじゃないのよ。そこにあって、美を鑑賞するものよ」
とか、わかったような事をいう。
じゃあ、この陶器の小箱はなにに使うんよ?器やねんから、使ってナンボなんちゃうん。
「小箱?うーん、これはアレやな。職場でハンコ入れにももってこいや。食卓に置けば、カラシ入れにもなる。」
とか、テキトーなことをいう。
ほな、さっきのペルシャ花瓶には、本社から送られてきた販促ポスターでも入れときましょうかー。
とか、2人でケケケ!と笑ってたら、やがて閉館の時間に。
係員に、スヌーピーよろしくつまみ出された。
それにしても、上ったり降りたり、こんな足パンパンになる美術館なんて、はじめてかも。
あー、シンドカッタ。
「しんどかったって、そんな美術館感想あるか?これやから、情緒欠落野郎の俗物羊は・・・」
とか言いながら、夕方の倉敷美観地区を、だらだら散歩する。
美観地区を歩いていたら、日も傾いてきた。
そろそろ今夜のホテルに投宿しましょうよ。
今日はよく歩き回って、疲れたからね。
「予約してるホテルは、『ルートインホテル倉敷水島』ってとこや。駅近で、大浴場もついてて、のびのび入浴もできるよ」
と、ひうらー伍長。
うわー、大浴場はありがたいー。
ゆっくり広い風呂入れたら、疲れもとれるしね!
で、ホテルは倉敷駅のどの辺なん?
ホテルの大浴場入ってさ、サッパリした後、駅前の飲み屋で、パーッと打ち上げましょうよ!!
「ん・・・?言ってなかったかな?今日の宿は、倉敷駅からさらに30分電車に乗り、水島臨海鉄道・常盤駅から徒歩3分のとこにあります。駅近やね!」
駅近って、倉敷駅のことやなかったの!?
「予算の都合で、そこになったの。ギリギリ倉敷市内やから、倉敷ったら倉敷なの。」
そ、そりゃそうかも知れまへんけど。
倉敷駅から『水島臨海鉄道』という、聞いたことのない電車に揺られ揺られて、30分。常盤駅到着。
常盤駅?どこやねん?ここ。
確かにホテルは駅からすぐあったが、良さげな居酒屋がまったく見つからず、適当に入った焼肉屋で、焼肉を食う。
せっかく岡山、倉敷まできて、昼メシはカレー、夜は焼肉・・・。
まあ、ちゃんと美味しかったからいいんやけどさ。
それにしても、ご当地感のカケラもない。
焼肉食ったあと、ホテルに戻って、大浴場でスッキリ。
酔いと程よい疲労もあってか、パタン、と寝落ちしたのでした。
旅の2日目。
朝から水島臨海鉄道に乗って倉敷駅に戻り、JR山陽本線に乗りかえて、さらに西へ。
小1時間揺られ、尾道に到着。
駅を出たら、いきなり雨が降ってきた。
本日は、尾道の町を歩き、お寺をのんびり巡る予定だ。
途中、ロープウェイも乗れるそうなので、楽しみ!
猫の遊び場であるお寺もあるそうな。
「ネコはともかく、各お寺には御朱印もあるしな!さあ、キビキビ歩いていくでえ!」
と、御朱印コレクター・ひうらー伍長は今日も元気いっぱい。
尾道らしい、細い路地の坂道を、傘をさしながら歩いていく。
路地の雰囲気はとてもいい。
歩いてると、こう、文学的インスピレーションが湧いてくる感じ。
神社付近に到着したが、小雨のせいもあり、がらんとしている。
小道の先にある、猫カフェの飼い猫っぽい子が、1匹だけヒマそうに歩いていた。
観光客は、その子を写真撮って、通り過ぎていく。
ひうらー伍長も、ガサツに近寄っていって、カシャカシャ撮影しだした。
猫はイヤそうに、向こうに歩いて行ってしまったようだ。
あーあ。ザツやなー。
少ししたら、猫がゆっくり戻ってきた。
尾道ネコくん、おはようございます。
お姿、撮影させてね。
猫は、興味なさそうに、首を振っていた。
今日は、あんまいい天気ちゃいますもんね。ジメジメしてまんな。
横道を歩いて、また上り。
尾道の町歩きは、これの繰り返し。
少し雲も流れてきて、晴れ間もでてきた。
こうして傘を畳んで見ると、尾道らしい美しい町並みと、瀬戸内海が見えまするなあ。
途中で、大きな神社に寄り、参拝する。
艮(うしとら)神社というそうな。
御神木であるくすの木は、たいそう古い大木で、神社も清らかな佇まい。
これはなかなかの古い伝統ある神社やなあ、と思って本殿前で手を合わせていたら、
「御朱印ーー!」と叫んで、ひうらーがどっかに走っていった。
せっかくの御朱印も、欲張って集め過ぎたら、バチが当たるんちゃう?
御朱印をゲットしてホクホク顔のひうらー伍長を連れて、ロープウェイ乗り場に到着。
眼下に尾道市内を見渡し、ロープウェイは静々と登ってゆく。
ロープウェイは良いですなあ。
ロープウェイで山上に登り、千光寺まで徒歩で降りていく。
尾道の町並みが、一望できます。
向こうに見えるんが、向島、横のが因島かな。
ほほー、と飽きずに眺めていると、
「ウラー!御朱印ーー!」と叫んで、ひうらー伍長が千光寺に突撃して行った。
そろそろロープウェイで下に降りて、昼メシのラーメン食いたいな。
ハラヘッタ。
凄腕御朱印ハンター・ひうらー伍長は、いつまでたっても戻ってこない。
あまりにしつこく御朱印をせがんで、寺の住職にタコ殴りされたんかな?
だったら、ちょっと面白いんだけどな、とか考えてたら、ひうらー伍長が御朱印帳を大事そうに抱えて、ホクホク顔で戻ってきた。
無事でなにより。
そのまま、ロープウェイで下山。
昼メシは、海の見える店『喰海』で尾道ラーメンを食べましょう。
きざみ玉ねぎが甘い炒飯が美味しい!
魚介ベースの背脂スープのラーメン、美味しいね。
今日もよく歩いたから、ラーメンの美味さがひきたつわー。
尾道の〆にふさわしい、ラーメンランチでした。
気がつけば、御朱印まみれの旅となった、西国巡礼旅行。
私は御朱印はいらないけど、旅は楽しかったので、また行こう!
【おしまい】