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ライブ8


 ライブ8から20年が経とうとしている。このイベント以来世界的規模なチャリティコンサートは実施されてない。その理由は様々なものだが、国を相手にした慈善行動の限界とみる。
 こういう特別なイベント(祭り)は、再結成や面白いコラボレーションがあるので楽しみなのだが、ビッグネームもどんどん鬼籍に入ってきており、出演者の質の問題も出てくるだろう。
 また、最近の音楽は世界的なミュージシャンよりパーソナルの強い特徴があるから、音楽で大規模に集まることも難しいのかも。
2024年9月


 ライブ8を観た。このチャリティーイベントは、アフリカの飢餓を救うべく、数多くのミュージシャンが参加したものだ。

 チャリティーでいつも思うことは、一体いくら集まっていくら慈善費として使われたかがわからないところだ。誰が本当に笑ったのか!
 今回の8の開催主旨は、ライブエイド以上に金を集めることと、債権放棄を債権国に促すことが盛り込まれている。なぜなら15年前のライブエイドで集めた金額は、実はアフリカの1週間分の債務返済で使い切ってしまう金額だという事実を主催者側が知ったからだ。
 ボブ・ゲルドフやボノ(U2)が主体となっているこのイベントは、音楽と政治が絡み合って単純な音楽祭ではなくなってきている。前回のエイドはアメリカとイギリスの2つの会場で開催されたが、今回は9会場(ロンドン、フィラデルフィア、ベルリン、パリ、幕張、モスクワ、ローマ、トロント、ヨハネスバーグ)である。みんなの力でアフリカを助けようと訴えているが、果たして真相は何だろう。
 そのひとつに、何故今回日本が入ったかということ。日本もこの素晴らしいイベントに参加できるのだから主催者側の条件をのめといわれている気がする。日本がミュージックマーケットとして成熟していることは認める。ビジネスチャンスとして考えられたことも否めない。しかし、8側は日本に対し、債権放棄を突きつけてきているのだ。日本はアフリカ諸国に約90億ドルの借款がある。アフリカからその昔、奴隷を連れてきたフランスは50臆ドルだ。アフリカに武器を売って冨を得、略奪を繰り返したイギリスはたった1000万ドル。言い出しっぺの国がこの有様だ。
 日本はアフリカ諸国に対し、利害関係は無く、金持ちということだけで借款に応じているのだ(ビジネスチャンスを狙うことはあるだろう)。それを、債権放棄しろとイギリス人が言うのはいかがなものか。僕はイギリスやフランス、スペインといった海賊王国や侵略王国が今までのお詫びとして最初に債権放棄をすべきだと思う。日本を馬鹿にしていないか!イギリスをはじめとする欧州諸国はその昔、アフリカにしてきた罪を償うべきなのだ。そのひとつが奴隷制度だ。
 奴隷制度は、ゴールドラッシュに湧く南米に送り込まれてきた労働力だ。人を人と思わない制度がアフリカを震撼させた。だいたい、ヨーロッパ人(特にスペインとイギリス)は、アメリカ大陸をニューワールドと定め、先住民を侵略していった歴史がある。奴隷制度もその延長線上の出来事として考えれば、アメリカの人種差別も納得がいく。人を人として認めない国民性だから、平気で債権放棄の話を日本にできるんじゃないかね?
アフリカの植民地政策も同様。イギリスとフランスが話し合いでアフリカ全土をまるで自分の土地のように権利を決めていた。そういう時代背景はぶっ飛ばして遠く離れたアジアの国に借金を帳消しにしろ、と。
TVCMでボノは、アフリカの貧困撲滅に取り組むのは「慈善ではなく、正義の問題だ」と訴えた。
「おいおい、どこまでボノは知っているのだ?君もイギリスに痛い目に合っているアイリッシュだろう。ボブ・ゲルドフだってアイリッシュだ。正義を唱えるのであれば、イギリスのアフリカに対する考え方を正させないと、判断を誤るぜ。」
音楽に差別や国境は無いかもしれないが、それを政治に利用されると思うとチャリティーコンサートも興ざめになる。いつだって世界のおさいふは、日本なのだ。こんな状況でライブ8を見ていたら何だか腹が立ってきた。


 それはそうと、久しぶりにスティングを見た。「メッセージ・イン・ア・ボトル」「見つめていたい」等の懐かしい歌を演奏していた。確かライブエイドの時は弾き語りとサックスのコンビで静かな印象だったが、今回はバンドサウンドになっていた。一時期スティングは声が出なかったことがあり、あの透き通るようなハスキーボイス(?)が、声量の無いガラガラ声だった。いつかのダイアーストレイツのライブで「マネー・フォー・ナッシング」の時にコーラスで飛び入りした時、無残なコーラスを披露してしまったのだ。あれは残念だったね。
 ライブ8を見る限りでは復活していたが、ちょっと太ったかな。
そういえば、ポリスが出てきた時は衝撃だった。ニューウェイヴとレゲェが融合され、スチュアート・コープランドの多彩なリズムがスティングの曲にアクセントをつけていた。『シンクロニシティ』(1983)は完成形といわれたが、僕はデビュー盤の『アウトランドス・ダムール』(1978)の方がインパクトがあった。そんなポリスは仲が相当悪かったから解散してしまったが、久々のスティングは結構インパクトあったな。ポリスって再結成しないかね。

 ライブ8のハイライトは何と言ってもピンクフロイド。ここも仲たがいのバンド。
ロジャー・ウォーターズと他のメンバーとの方向性が違い、ロジャーが脱退となる。
でもライブ8を見る限りではしっかり演奏していた。
 デイブ・ギルモアは相変わらずの叫びのギター。伸びる音色が気持ち良い。短い出演時間だからピンクフロイド特有のテーマ性に満ちたステージには程遠いが、中々良いものであった。大規模イベントはこういう特別感があってのもの。
 繰り返すが、チャリティって、本当に慈善に使われているかわからないからモヤモヤする。ピンクフロイドの世界観に似てるかも。

2005年9月9日
花形

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