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初めて弾けるようになった歌は?


 ギターを弾き始めたのは、中学1年の音楽の授業でした。
 私は私立のカトリックの男子校でしたので、音楽の授業では主に讃美歌を歌っていたのですが、声変わりのする男の子が合唱をしても恰好がつかないわけで、あまり先生も力を入れてはいなかったですね。で、クラシックのレコードを聴いたり、音楽理論を習ったりという一般的な音楽の授業でありました。
つまらない授業だな、と思っていた頃、2学期から新たなカリキュラムとしてギターが加わりました。
学校にはクラシックギターが40本くらいあり、弾き方を習うのです。弾き語りをするという目的の授業。しかも最終的には自作自演するという恐ろしく高度な授業でありました。しかし、まずはギターを弾くというところからです。
 友人の中にはお兄さんやお姉さんの影響でギターを弾ける者もおり、一躍ヒーローになっておりました。
私はエレクトーンを習っていましたので、楽譜は強かったのですが、ギターは初めてでしたので、最初はかなり苦労しました。

 まず、チューニングがわからない。音叉や変な笛を使って合わせるのですが、中々合わない。
そして、合ったと思って弾いていたら少しずつ狂ってくる。エレクトーンをやっている身からすると、楽器でチューニングが狂うという概念が無いわけです。当り前ですが。
で、音楽の教科書に掲載されている曲が課題曲です。
ギターを弾いたことがある人で、最初に何の歌をコピーしたか?なんて質問がありますよね。あれは自発的にギターを弾いた人にする質問で、強制的にやらされていた私としては学校の課題曲という至極つまらない回答になります。
課題曲は「花はどこへ行った」と「ドナドナ」でした。
 私は、ピート・シガーの歌でキングストントリオの代表曲「花はどこへ行った」を最初に弾けるようになりましたから、これです。
Where have all the flowers gone? Long time passing~
という有名な歌です。
この歌はC Am F G7 の簡単な循環コードです。
よくギターが出来ない人でFのコードが弾けなくて挫折したという声を聞きますが、弾けないと単位が貰えないので必死でありました。挫折している暇などないのです。

 ま、エレクトーンをやっていたせいか指は長い方でしたので、割と早くバレーコード(Fみたいに人差し指で全部の弦を抑えるやり方)はできるようになりましたね。それよりも、もう1曲の「ドナドナ」の方がEm Am B7 Em のコード進行であり、B7の複雑な抑え方で指がこんがらがって四苦八苦しました。
さて、「花はどこへ行った」ですが、この歌、非常に明るいです。
キングストントリオの演奏なんぞはカレッジフォークのノリで聴けます。しかし、歌詞は流石ピート・シガー!
「花はどこへ行ったの? 少女が掴んだよ」
「少女はどこに行ったの? 男の人のところにお嫁に行ったよ」
「男はどこに行ったの? 兵隊として戦場に行ったよ」
「兵隊はどこに行ったの? 死んで墓に入ったよ」
「墓はどこに行ったの? 花で覆われたんだよ」
と続き、「いつになったら、わかるのだろう」で締められます。
まるで風が吹いたら桶屋が儲かるみたいな展開ですが、「戦争が繰り返され、いつになったらその愚かな行為に気づくのか」というゴリゴリのプロテストソングなのであります。

 そんな内容も知らずにFのコードや右手と左手のタイミングなどで苦労しながら、必死に練習してマスターしたものであります。いまでも譜面なしで歌えます。

 時は1977年頃ですから、フォークからニューミュージックに変わる時期。
ギターで弾き語りが容易にできる歌も沢山ありましたので、バレーコードが苦でなければ、割と何でも直ぐに弾けるようになりました。休み時間などにギターをガチャガチャやる楽しい日々。音楽好きにとってはギターという武器を手に入れた気分です。
 先にも記載のとおり、私の学校の生徒はとりあえずみんなギターが弾けますから、ハードルは高くなります。なんのハードルかと言うと、下手くそなギターを弾いていると野次が飛ぶのであります。
文化祭などで演奏し、その演奏があまり上手くないと
「そんなんで、フェンダーとかもってんじゃねーよ、ギターが泣いてんぞ」とか
「エレキでローコード弾いてんなよ!」といった理不尽な野次まで登場します。

 音楽の授業で、みんなで必死にギター練習していた中1の秋は遠い昔となります。

 世の中的にはギターの弾き語りは1980年を境に下落したと思います。
音楽の多様性と申しましょうか、アコギ1本で表現できるような歌が無くなっていったのではないでしょうか。その影響でアコギの販売台数も落ち込み、倒産するギターメーカーも数多く現れました。
最近では「あいみょん」がギターの弾き語りだけでコンサートを行なったことで話題になりましたが、我々の頃のようなアコギのムーブメントは起きづらいでしょうね。
我々の少し上の世代はベトナム戦争や安保闘争でプロテストソングが華やかでありました。
我々の頃はフォーク~ニューミュージック全盛で、歌える歌が沢山ありました。
我々の後の世代はMTV世代からコンピューターミュージック世代ですので、アコギの弾き語りは激減しました。

 最近の中学生はギターを弾くのでしょうか。お父さんやお母さんが好きな陽水や中島みゆきを聞いて育ったので、「夢の中へ」や「時代」を歌います、という声を聞いたことがありますが、最近の陽水やみゆきの歌ではないのですよね。
歌いたいテーマが無い時代なんでしょうかね。
ま、なんでもメッセージソングでなければならないという訳ではありませんが、弾き語りがブレイクするには一つのアイテムなんでしょうけどね。
ギターを弾く皆さん、最初に弾けるようになった歌はなんですか?

2022.1.19
花形

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