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【早明浦ダム】香川県早明浦ダム出資拒否デマを検証する【出資拒否】

※この記事ではほぼ全ての内容に対し誰にでも閲覧、検証可能なソースを用意しています
※早明浦ダム関係のWikipediaやニコニコ大百科はデマ屋が自身で編集していることをアピールしているため、ソースとして採用していません
※特定の県が「良い」「悪い」という話ではありません

◾️「香川県が早明浦ダムに出資拒否した」というデマ

「香川県が早明浦ダムに出資拒否した」というデマは、2000年代初めごろからインターネット上で広まっており、いまだに拡散され続けています。
しかし、その内容には客観的な証拠もなく、信じるに足りる相当の理由もなく、嘘か本当かすらわかりません。

このデマを3つのポイントにまとめました。

①四国で多目的ダムを作ることになった際、香川が出資拒否した

②香川の負担を徳島が肩代わりした

③ダム完成直後に渇水が起こり、慌てた香川がダムの費用を後から出資した

それぞれの点について、現存する資料を参照しながら検証してみましょう。

客観的な証拠を出せない人

◆検証①
「四国で多目的ダムを作ることになった際、香川が出資拒否した」

・「香川が出資拒否した」事を示す根拠がない

「香川が出資拒否した」のであれば、その時期や具体的な費用に関する記録が存在するはずです。「出資拒否したけど完成後に慌てて支払った」にしても、その支払いの時期や金額に関する具体的な記録があるはずです。

しかし、これらの記録が見つかることはありませんし、デマを流布している側からも提示されることはありません。

根拠のない主張は「陰謀論」や「妄想」と変わりがありません。

・「香川が出資した」記録

早明浦ダムの総事業費は約331億円ですが、治水分と発電分を除く利水分の事業費約109億円のうち、水道用水と工業用水、農業用水の取水量の割合等に応じて香川県は約44億円を負担しており、事業費に占める香川県の負担割合は約40%となっています。

香川県ホームページより引用

香川県は約44億円を負担しており、事業費に占める香川県の負担割合は約40%となっています。

他にも具体的な出資金額が記載されている資料が存在します。
早明浦ダム工事誌」「吉野川総合開発誌」「香川用水誌」です。

2項 香川県負担額
表7-10 農業用水部門
1.早明浦ダム
県負担額  2,170,570,132円
 負担区分 国:1539,240,839円 県:631,329,293円
農家負担額 343,695,441円
 負担区分 県:13,256,719円 農家:330,438,722円

香川用水誌P394より引用

表7-11 都市用水部門
総事業費 32,704,253,949円
水道用水 1,035,850,101円
 負担区分
  国:108,475,000円 県:35,448,000円 県(借入金):891,927,101円
工業用水 1,130,123,743円
 負担区分
  国:33,329,428円 県:497,270,000円 県(借入金):599,524,315円

香川用水誌P395より引用

このように「香川県が建設費を負担した」ことを示す客観的な記録が残されています。

・ダム建設に乗り気な香川と愛媛

以下は「ダム建設試案」が出た際の、各県の反応についての記載です。

(5)四国4県の立場
 昭和29年に”吉野川総合開発計画(調整試案)”が発表された際の、四国4県のそれぞれの立場は、分水に強い期待を寄せる香川県、分水には絶対反対を主張する徳島県、県内開発が優先であり、差し迫った課題ではない愛媛県と高知県、という構図であった。

令和4年10月19日インフラ整備70年講演会 P4より引用

(1)四国四県の立場
 昭和30年10月、四国地方総合開発審議会のいわゆる「調整試案」が発表(OurよしのがわVOL27参照)されましたが、四国四県それぞれの受け止め方は異なり、入水側の香川県、愛媛県は「調整試案」に非常に乗り気で、高知県は中立的な立場でしたが、分水側の徳島県は慎重でした。

吉野川歴史探訪 Ourよしのがわ P2より引用

分水に強い期待を寄せる香川県
・入水側の香川県、愛媛県は「調整試案」に非常に乗り気
・慎重であり分水に絶対反対の立場だった徳島県

香川県はダム建設に対して「強い期待を寄せ」「非常に乗り気」でした。

ダムと聞いてやる気を出す香川&愛媛

・徳島の「分水」と「負担金」拒否

「四国で多目的ダムを作ることになった際」、実際には徳島県が「分水」と「負担金」を拒否しています。

各種資料を以下の記事にまとめていますので、興味のある方はご自分の目で確かめてみて下さい。
▼▼▼

1.香川が出資拒否したことを示す根拠も証拠も出てこない
2.香川が出資した記録が残されている
3.香川は建設に対して乗り気
4.ダム建設の際「分水」と「負担金」を拒否したのは徳島である

以上の点が示す通り

「四国で多目的ダムを作ることになった際、香川が出資拒否した」という主張は、何の根拠も存在しない個人の感想にしかすぎません。
それどころか「徳島の分水と負担金拒否」を「香川の出資拒否」に故意にすり替えようとしていることがわかります。

◆検証②
「徳島が香川の負担を肩代わりした」「香川が出資を拒んだ分は徳島が多くを負担した」

・「徳島が肩代わりした香川の負担」とは

「徳島が肩代わりした香川の負担」とありますが、それが何の費用なのかは一切説明されていませんし、負担について何の根拠も示されていません。
このように、根拠も無く言い切るのはデマの常とう手段です。

「香川の負担」とはなんぞや?

この謎の費用について考察してみましょう。

①某4コマ漫画の「治水のためしょうがない」というセリフ
②「徳島が肩代わりしたことで香川が負担していない」費用
③「徳島が多くを負担した」という設定

以上を考慮すると、この部分はおそらく「治水分費用」の事を言いたいのだと思われます。

・治水分費用とは

「吉野川の治水に対する費用負担」の事です。

早明浦ダムの費用分担は、河川法の特例措置である「身替り妥当支出法」を元に、各県の受益量(受ける利益)に応じて割り振られています。

「治水」とは吉野川水系に対する治水の事です。
吉野川は主に徳島県を流れており、治水による利益は徳島県にしか還元されません。
このため早明浦ダムの治水分費用はその受益者である国と徳島が主に負担することが定められています。

(2)建設に要する費用の用途別負担額およびその負担者
イ)洪水調節および流水の正常な機能の維持に係る費用の額は、建設の費用に要する額に1,000分の573.5を乗じて得た額とし、国は水資源開発公団法(以下「公団法」という)第26条第1項の規定によりその費用の額のうちすでに国が要した額を控除した残額を公団に交付するものとし、その交付金は国及び徳島県において負担するものとする。

早明浦ダム工事誌P32より引用

つまり

①「治水のためしょうがない」
→「治水分費用」は徳島の負担です。

②「徳島が肩代わりしたことで香川が負担していない」費用
→繰り返しますが、治水分は徳島の負担です。肩代わりするような費用は存在しません。

③「徳島が多くを負担した」という設定
→治水分費用は徳島(実際には国と徳島)が負担しています。

という事になります。

▼費用負担について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください

・「徳島が負担を肩代わりした」を事実を元に解釈すると

前述したとおり、治水分負担は徳島の負担です。
「徳島が香川の負担(治水分費用)を肩代わりした」を現実に即して翻訳した場合、次のような内容になります。

『徳島の負担』を『香川の代わりに徳島が肩代わりした』

もう無茶苦茶ですね。

もう無茶苦茶

・徳島の要望を断ることは「肩代わり」でも「出資拒否」でもない

当時の徳島県はダム建設にあたり、少しでも有利な条件を勝ち取ろうと「条件闘争」を繰り広げていました。
その条件闘争の中で「徳島の負担軽減のために」治水分費用の負担を他県に対して要求していましたが、協議は難航し、最後には、国、香川、愛媛の三者から説得される形で失敗に終わります。

ここで大切なのは、香川、愛媛が拒否したのはあくまでも『徳島の要望』だという事です。
徳島の要望を断ることは「肩代わりさせた」事にはなりませんし、「ダムに対する出資拒否をした」訳でもありません。

治水分負担は「身替り妥当支出法」により定められ、国と四県が合意した国と徳島の負担です。
このデマは頭が足りていませんし、このデマを考えた人には頭がありません。

ここまでの説明で
「徳島が香川の負担を肩代わりした」
「香川が出資を拒んだ分は徳島が多くを負担した」
これらの主張は何の根拠も存在せず、妄想と妄想を繋げた個人の感想、トンデモ理論にしかすぎない事がご理解いただけたと思います。


◆検証③
「ダム完成直後の渇水に慌てた香川がダムの費用を後から出資した」

・設定が崩壊している

「香川が負担していない」という設定なので「後から出資」してしまうと設定が崩壊してしまいます。自己矛盾を起こしていますが、このデマを作った人間はそんな事にも気づいていません。
このデマは頭が足りていませんし、このデマを考えた人には頭がありません。

・時系列が捏造されている

①ダム完成
②渇水発生
③香川が慌てて費用負担
以上が香川県早明浦ダム出資拒否デマの内容です。
それでは、資料と突き合わせながら時系列を確認してみましょう。

①費用の割り振り案が決まったのは『昭和41年』です。

昭和41年6月の第4回吉野川開発部会で、早明浦ダムを中心とする開発計画について、水の配分ならびに費用の割り振り案が建設省側から提案され、関係四県の同意を得て以来、早明浦ダム建設に関する各種の計画、方針はすべてこの案をベースとして作成された。

吉野川総合開発誌 P225より引用

昭和41(1966)年開催の第4回部会で、建設省から提出された最終試案が承認されました。

早明浦ダムの建設① P3より引用

②渇水は『昭和48年』です。

昭和48年(1973)6月の高松市の降雨量は83ミリしかなかった。その上、6月29日の降雨後は、7月31日の7.5ミリの降雨を除いて、8月14日まで晴天が続いた。このため、高松市では63日間にわたって給水制限が続き、高松砂漠と言われた。

四国災害アーカイブスより引用

③ダム完成(暫定通水)は『昭和49年』です。

香川用水事業の区切りとなる通水イベントは大きいもので、3つあります。
「暫定通水」「本格通水」「全線通水」の3種です。
1つ目の「暫定通水」は、昭和49年5月30日です。

香川用水の通水より引用

費用の割り振りが決定されたのはダム完成より前ですし、渇水の発生もダム完成より前です。
つまり「ダム完成直後の渇水に慌てた香川がダムの費用を後から出資した」という主張は「根拠のないデタラメ」どころか、悪意を持って意図的に作られた「完全な嘘」という事になります。

このデマは頭が足りていませんし、このデマを考えた人には頭がありません。

・少しだけ考えてほしいこと

常識的に考えて、ダム完成後に「後からお金出します」なんて通ると思いますか・・・?


◆結論
「香川が早明浦ダムに出資拒否した」は『なんの根拠もないデタラメ』である

1.四国で多目的ダムを作ることになった際、香川が出資拒否した
・根拠が何一つとして用意されていない
・香川が出資した金額についての具体的な記録が存在する
・香川は建設に対して前向きである
・分水と高額な負担金を拒否したのは徳島である

2.香川の負担を徳島が肩代わりした
・徳島が肩代わりするような負担は存在しない
・そもそも何の費用なのかが何一つわからない
・治水分費用は徳島と国の負担であるというルールが定められている
「徳島の負担を徳島が肩代わりしてあげた」という意味不明な主張になる
徳島の要望を断ることは「肩代わり」でも「出資拒否」でもない

3.ダム完成直後の渇水に慌てた香川がダムの費用を後から出資した
「治水分費用は徳島が肩代わりした」という内容と矛盾する
・時系列が改ざんされ、事実が捏造されている
・費用の割り振りは「関係四県の決議により」ダム完成前に決まっている
・意図的に歴史を歪めた「悪意のある捏造」である
・そもそも後から出すなんて認められる筈がない

以上の理由により、「香川が早明浦ダムに出資拒否した」は『なんの根拠もないデタラメ』であると結論付けさせていただきます。

「香川が出資拒否した」事を証明するのはとても簡単です。

「出資拒否した事を示す、誰にでも検証可能な具体的根拠のある証拠」を出せば良いだけですから。

検証可能な根拠や証拠を一切提示せず、『絶対出資拒否した』『書いてるのを見た』『見たって書いたから本当』などとうわ言のように繰り返している事実こそが、これらがデマであることの証明だと言えるでしょう。

ここまで記事を読んでいただき本当にありがとうございました。


・その他のデマについて

デマ検証記事を公開して以来、「ゴールポストを動かす」「前提を無視する」「自分の発言を覚えていない」等の荒技を利用した新しいデマが濫造されています。
大声で繰り返しても嘘は嘘でしかなく、嘘は本当になりません。

▼費用分担と河川法のデマ
 ・「河川法の特例措置が河川法に違反している」という知性の素朴な妄想です。

▼「昭和37年に覚書が交わされ、それを香川が覆した」というデマ
 ・覚書など存在しません。

▼「ため池があるから出資拒否した」というデマ
 ・水が足りているなら早明浦ダム建設に絡む必要がありません。

▼「徳島の費用負担が少なすぎる」と出資拒否した」というデマ
 ・「徳島の費用負担が少なすぎるという抗議」は「徳島の費用負担が少なすぎるという抗議」でしかありません。「出資拒否した」となると、それは自分の妄想を元にした妄想です。

・嫌がらせについて

デマ屋による誹謗中傷や嫌がらせについて書いています。

私に誹謗中傷をした所でデマはデマです。妄想と憶測だけの難癖ではなく、「明確な根拠のある反論」をお願いします。

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