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僕の恋人

〜愛しい人よ、泣かないで〜①


僕は今、心の底から愛した女性の腕の中にいる。
真っ赤な夕焼けが、窓ガラス越しに君のかわいい頬を照らして、涙がまるで真珠のようにキラキラと輝いている。


僕はいつものように、
少しあずきがかった黒い肉球で、君のその頬に触れようとしたが、なんでだろう体が動かない。

もう少し君と一緒に居たいけど、、、
そろそろお迎えが来るようだ。


愛してるよ。美沙子、、、、
これからもずっと。



少し肌寒い4月の夕暮れ時。
小雨の中、うすピンク色の花びらがアスファルトに落ちた。


「つめたい、、、、」

ゴミ捨て場に置かれた濡れた段ボール箱の中から、僕は行き交う人を見ていた。


「もう、いい、、、2度と電話しないから、、!」
下を向いたまま小さく震える女性はうつむき動かなくなった。
男は黙ったまま女性を残し立ち去った。


あの女性、、、。しばらく僕はじっと見つめた。
「どうしたの?ねぇどうして泣いてるの?」
僕は一生懸命、その女性を呼んでいた。


「どうしたの?捨てられたの?」

気づいてくれた!


「私と同じね、、、うち、、、来る?」
そう言うと女性はスッと僕を抱き上げた。

僕は嬉しかった。
だって僕は一目見た時から、君が、美沙子が大好きだったから。

なぜだかそう思った。


続く。



kaoruko_days
今日から短編小説を連載します。
これは確か2年前に書きあげました。

では、今日もお疲れ様でした。
おやすみなさい。




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