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キタダヒロヒコ詩歌集 134 10代の頃の詩より① 頭上に月



 頭上に月    キタダヒロヒコ



えぬ子はカアペットのうへで猫になりながら犀星の顔の皺を伸ばしてゐた。手つきが可憐だつた。こしこしと擦られては丁寧に伸ばされていく犀星の皺のはうでも、満更でもない様だつた。「犀星の皺つて……」えぬ子は呟いた。「いゝわね。」わざと僕は聞かなかつた。「そんなら。」と朔太郎の顔を床に置いた。「いや。」えぬ子はあからさまに顔を曇らせて、朔太郎の顔に突つ伏した。湿つた音を立てて何度も接吻した。それから僕に飛び付いて、倒壊した僕の太腿を朝まで舐めてゐた。





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