１９９９年から２００３年までの阪神タイガース　その㊻

年が明けた。
退任、退団、ゴシップ記事。
目を覆いたくなるような内容がスポーツ紙の一面を連ねる。

毎度の事だ。
お粗末なストーブリーグの喧騒は年を明けても続く。
キャンプインを間近にした選手の想いはどうだっただろうか。

試合日程が紙面でオープンになると真っ先に調べるのがホームゲームの暦だ。
高校生だった私に平日を含めた試合を皆勤するのは難しかった。
今年は二次会にどれだけ参加出来るだろうか。
今年の二次会はどうだろうか。

過去にも述べたが忌引きを除くホームゲーム皆勤、場外二次会最盛期を作り上げた男が一人いる。

男の名は、アイパー。
プロでは無い。
素人だ。

2000年の場外はアイパーが見事なイニシアチブを執り、キレのある二次会は勢いを増した。
まるで刃物を研ぐ砥石のようだ。
僕らの二次会はどんな逆境も切り裂き、
その存在は全国区となった。

二次会の内容は讀賣の選手を揶揄するスリーコールだけでは無い。
二次会参加者に問いかける「◯◯は◯◯だと思う人〜長嶋シリーズ〜」を取り入れたアイパーの功績は大きかった。

キレのある二次会のチルアウトとして笑いを取り入れたアイパーのセンスは天才的だ。
目力の鋭い猛者を笑わせる事など到底計り知れない。

断言しよう。
どの世界でもそうだ。

鋭い感性を持ち、
人よりも一つ、二つ言葉を知っている。

そういった人間でないと
人を魅了し、
人を惹きつけ、
人を統率する事は出来ない。

そういった人間でないと
弱者が強者を倒す事は出来ない。



アイパーにはその魅力と天性、
言葉に力があった。

僕は見た。
試合前のレフトで奴が讀賣の選手を罵倒し、
会話し、選手から指を指され笑われる姿を。

僕は見た。
奴が自ら世間から目を逸らされ、馬鹿にされ、
全人類から反面教師となるような存在を買って出た姿を。

アイパーは一般人が気にしないようなどんな小さな事も拾い上げ話題にした。

後藤孝志と一触即発の喧嘩をし、
岡島秀樹や條辺、三浦貴に愛され、
水野ヘッドコーチに長嶋を呼んできてくれと懇願し丁重に断られ、
年俸5億5000万円の松井秀喜を餃子の王将に誘った。

二次会の帝王は常識人が歩まない道を歩み、
僕らはその轍を踏んだ。

私の記憶ではミレニアムを迎えた2000年の場外、そして翌年の2001年のボルテージは凄まじく自信としてもキャリアハイの成績を残せた。

アイパーは2003年夏に跡目争いに負けその座を失うまでに数え切れないほどの名言を残した。

間違いない。
現在の阪神ファンがネットを観て得た知識で発するスリーコールの大半は場外でアイパーが拡散したものだ。

その場にいたか
いなかったか。

経験したか
しなかったか。

この言葉の重さは分かるだろうか。
残念ながら動画や音声録音は殆ど残っていない。

それは試合内容や外野席の光景では無い。

場外だ。
僕たち素人の美しく、気高く、
球界や新参から不要なものとして消された『あの空間』

フィーバーが掻き消した『あの空間』

二次会だ。

続く