捕獲決行日のこと、捕獲
もう一つ。
捕獲決行の何日か前から、タイマー付きの照明を取り付けて慣れさせておいた。
暗い時の捕獲には無くてはならないからだ。
センサーの場合は犬がビックリしてしまうのでタイマー付きの方がいいし、あまり明るすぎるのも良くないような気がした。
(実際は、その日は遅くまで倉庫の明かりがついていたので必要なかったけど)
【捕獲決行当日】
朝6時頃、置き餌を置き、私が入口近くの段ボール箱、妹が隣の段ボール箱に入った。
私は、レイがご飯を食べたら出て出入り口に立ちはだかり閉じ込める役割、妹はその後から出てきて補助という役割とした。
同じタイミングにしなかったのは、違う段ボール箱にそれぞれ入っているし、そうでなくても同時に出るのは難しく、上手くやらないとレイを取り逃がしてしまうと思ったからだ。
敷地の外には、車の中で母と友人1名に待機してもらっていた。
長丁場になることも考え、段ボール箱の中には椅子を置き、座った目線の高さに穴を開け、置き餌を食べる姿を目視できるようにしておいた。
穴はあまり小さいと見えづらいので注意。
※段ボール箱の中に入る際に必要と思われるもの
○トイレに行けないのでオムツ着用
○時間確認や連絡のために必要なので携帯を持つが、マナーモードにする(バイブもoff)
アラームも要注意!
○季節は10月で朝晩は肌寒かったので、カイロを貼る
○夏なら虫除けグッズ(あまり匂いや煙の出ないもの)も必要と思われる
段ボール箱の良いところは、キチンと閉まらず何箇所か隙間ができたので、色んな方向を見ることができたことだった。
すぐに、いつもレイのご飯を食べに来るグレーのハチワレ猫がやって来て、ご飯を食べて出て行った。
が、レイは来ない…
結局、2時間ほど待機したが、この時は現れなかった。
私達が帰った後も来ていなかった。
何かを感づいたのか、少し離れた所で見ていたのか…
(これってあるあるらしい。)
同日の18時頃、夕方の置き餌をしに行く。
この日は、この場所で精米作業のため何人か出入りしていて明かりもついていたし、精米機の音や人と車の出入りの音があった。
あとから考えると、これが大きかった。
多少の音や気配があってもかき消してくれたのではないかと思う。
この時は妹と2人。ダメ元で1時間ほど待機してみようと段ボール箱に入る。
40分程経過した頃、スタスタッと何かが走ってくる足音が聞こえ、見ると入口付近にレイの姿があった。
来た!緊張が走る。
多分、段ボール箱の中の方が暗いので向こうからは見えないと思うが、一瞬こちらを見た…ような気がした。
目が合ってはいけないと、前のめりにかがんだ体を起こして少し後ろに下がる。
レイは周りの様子を少し伺って、サークルの中にゆっくりと入っていく。
大丈夫、気付かれていない。
置き餌の位置はサークルの真ん中より少し奥。
レイが出入り口、つまり私達に背を向けてご飯を食べるように置いてある。
少しでもレイが逃げ遅れるようにするためだった。
本当は敷地のオーナーからは「もっと奥行きの深いサークルにして出入り口から遠くしないと逃げられるよ」と言われていた。確実性を考えるとその通りかもしれなかったけど…。
ご飯を食べ始める時はまだ周りを警戒している時なので、その後もう少し食べたら出て行くタイミングと決めていた。
1口、2口、3口…食べては周りを見ている。
この周りを見ている時は出るタイミングではない。
周りを見て次に食べ始めたその瞬間、勢いよく飛び出した。
「レイ!」
つい叫んでしまったような気がするが、叫ばなかった方が良かったかどうか…わからない。
シミュレーションでは、レイは私のいる出入り口と反対方向、奥に逃げるはずだったが、瞬時に体を翻し出入り口に向かって突進してきた。
前に書いたが、レイは出入り口は一か所だけと把握できているのだ。
出入り口を塞ぐように立った私がレイを必死で抱き止めた。
ラグビーのタックルのような感じで。
レイ、「キャンッ!」
ここで妹がようやく、レイが来たことに気付いた。
(レイが来るのを確認できない位置だったのと、本当に一瞬の出来事でレイの叫び声しか聞こえなかったらしい)
レイは、捕まったら観念したようにも見えたが、妹が車を移動して来るまで、すきあらば何度も逃げようとした。
首輪とハーネスが付いていたので、それらを持ってさらに羽交い締めにして必死に抱きかかえる。
二人がかりでクレートに入れる時もなかなか入らず足を踏ん張って抵抗したので、最後まで気を抜いてはいけなかった。
気付けば、サークルの出入り口で捕まえた時にレイの歯等が当たり、太ももと手指から血が出ていた。(噛んできた訳ではない)
レイも私もとにかく必死だった。
脱走させてしまってから2ヶ月後のことだった。