分水嶺・我々の暮らし・山の関係
今回は,「分水嶺」というキーワードを用いて,我々の暮らしと山と関係に考えてみる.
地図から分かる山と川の関係
国土地理院の1/25,000地形図を観察すると,上の図のような地形がたくさん見られる.山頂から尾根(赤線)が分岐し,川は下流に向かって合流している.川はさらに合流し,平野に至る.我々の多くはこの「平野」に住んでいる.ある平野に流れる河川の流域の境界には,かならず山脈がある.つまり,つまり,山と平野は切っても切り離せない関係を有している.山脈が河川の流域の境界であることから,これらの山脈は分水嶺と呼ばれる.
「分水嶺」の言葉の中にある"水"は川,"嶺"は山を意味する.したがって,そもそも川と山は必ずセットで登場し,対となる地形である.山と川は常に表裏一体の関係にある.
こんなことを考えてみると,各山域はどの流域の降水を集めているのか気になってきた.
具体的な山域-流域の関係
上信越
図の▲のプロットは日本〇百名山の山頂の位置,線は流域(色)別の河川の分布を示している.
谷川岳は,太平洋側最大の利根川流域と日本海側最大の信濃川流域の境界上に位置している.よって,谷川岳は日本を代表的する分水嶺上の山と言えるだろう.尾瀬の百名山である至仏山と燧ケ岳は,利根川-阿賀野川の分水嶺上に位置.尾瀬の湿地の水は福島県から太平洋に注ぐことは私にとって新しい発見だ!
秩父・奥多摩
秩父山域は主に荒川・奥多摩山域は多摩川水系にある.荒川・利根川の分水嶺上には雲取山や高水山がある.一方,三頭山や陣馬山は多摩川・相模川水系の分水嶺を構成している.三頭大滝の水は奥多摩湖に注いでいる.
甲武信ヶ岳は3つの流域(荒川・富士川・信濃川)の境界,金峰山・瑞牆山は富士川・信濃川の分水嶺上に位置している.河川の流域をイメージしながらの雲取山~甲武信ヶ岳~金峰山・瑞牆山の縦走も楽しそう.
南アルプス
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\begin{array}{|l||c|} \hline
山域 & 隣り合う流域 \\ \hline
八ヶ岳 & 信濃川・天竜川 \\ \hline
南アルプス(北部) & 天竜川・富士川 \\ \hline
南アルプス(南部) & 大井川・天竜川 \\ \hline
中央アルプス & 天竜川・木曽川\\ \hline
\end{array}
$$
天竜川は直線的な河川が多いな...
まとめ
日本の都市部は基本的に平野部にある.流域と分水嶺を通して,山と我々が住む平野部はつながっていることを体感できる.これらの図を使って,各都市の水道水を供給する山域について思いを馳せることが可能になった.
稜線上では両側の斜面を下る雨水がどこを流れるのかを,滝や川を見たときは何川に注ぐのかをイメージしながら歩けたら,登山の楽しみを広げられそうだ.
おまけ
YAMAPの流域地図 (https://watershed-maps.yamap.com/maps)
三百名山にもカウントされない山の位置と流域を見られる
YAMAPの編集部の記事(https://yamap.com/magazine/58088)
分水嶺上の代表的な山の紹介あり
『生きのびるための流域思考』(岸由二)
今度,読んでみたい
治水の観点
出典
出典:「国土数値情報(河川データ)」(国土交通省)(https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-W05.html)(2024年8月15日取得)
出典:「日本百名山」,「日本二百名山」,「日本三百名山」( https://100sen.cyber-ninja.jp/)
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