きのことココダトレイル「いざパプアニューギニアへ」
(1)マラリアの薬
翌朝、ブリスベンでの話です。
「ダメだ、、飛行機に乗れるか分からない…」
空腹でマラリアタブレット※を入れてしまう過ちを犯しました。
渡航2日前から、帰国後も毎日6週間程(!)飲み続けなければならないマラリアの薬が、これほど強いとは思いませんでした。意識朦朧、吐き気、眩暈で倒れ込むようにホテルのベッドへ。とりあえず11時ギリギリのチェックアウトとし、アラームだけセット。
私パプアニューギニアに行けるんだろうか。
まさかここでリタイア??
朦朧とする頭で相当な不安が過りました。そして直ぐに深い眠りについていました。因みにこの日の朝は元気よく5:00amまえには目が覚め、情報確認。出発時刻や空港への行き方を調べたり、やる事をやった後、そういえばマラリアタブレット飲まなくちゃ!と何も考えずにポンっと水で流し込みました。
そしてそれ程時間を置かずに体調は最悪になりました。
顔も真っ青だったはずです。そういう訳でこの朝の記憶は殆ど無いのです。
(2)離陸3時間前
一眠りしたらなんとかすっきりしていました。あの重い荷物を持って歩けそうと確認。11:00に滑り込みセーフのギリギリでホテルをチェックアウト。何が入ったらあんなに重くなるのだろうかなと思う荷物を持ってバスに乗車し、国際線ターミナルへ向かいました。およそ離陸3時間前、さすがにチェックインカウンターに並ぶ人はいませんでしたが、既にそれなりに人はいました。チェックインするまで安心はできない気持ちはあったので同じように近くで待機。
それから30分経ったところで、どんどん人がチェックインの列に並び始めました。大概はツアー旅行客でガイドを筆頭に大人数のグループなので、あっという間に長い列になりました。慌てて私も荷物を持って並びました。ビジネスマン、パプアニューギニア現地人、スキューバダイビングのグループ。私のようにココダを目指す方は居ないように感じました。ちょっとそこで、私はココダを歩くんです!と誇らしく身震いする感情はあった気はします……
その後も列は長くなる一方。カウンターも搭乗2時間前に開き、チェックイン開始。特に問題もなく、無事チェックイン完了。
(3)いつ出発するのか
私はあの日は「戦争に強くなる本」を読み始めて、太平洋戦争の振り返りをしていた一日になりました。脇目も振らず一心に本を読んでいたはずです。
搭乗ゲートに着いたとき、そういえばこの飛行機に軍曹のツアーに参加する人が搭乗しているはずだが、、と思いましたが、それらしき人が見つからず。気にせず本に集中していました。
搭乗開始時間になっても何事も起きず。確か機体もまだそこになかった気がします。アナウンスもなく、どういうことかと思いながらも、早く本を読み終えたかった。こんな時には本があるといいですね。余計な事を考えずに済みます。
(4) ギブアップ
ようやくアナウンスが流れました。
「出発は遅れています。また詳細は改めてお知らせします。」
ふむふむ。また暫くして
「今日は満席です。全ての荷物を機体に持ち込まれてしまうと、スペースが無くなってしまう恐れが出てきました。大きな荷物がある方はどうか搭乗口で預けていただくようお願いします。」
自分の荷物を見ました。パンパンの23Lのリュックに、古着などが入ったでかいバッグの二つが目の前にありました。気のせいではありますが、皆さんの視線が私に降り注いでいる気がした瞬間です。
私の荷物が誰よりも一番多い…
そこで知らんぷりできるような強い心が欲しかった。優しさという薄皮の中にどすこい構える弱さ。ものの10秒で耐えられなくなりました。
ヤバいわ、、降参。(ハヤッ)
スゴスゴと敗者は重い尻(腰?)に重い足を引き摺りカウンターへ向かう。全ての搭乗者が私を罪人を見るがごとく強い視線で、そりゃひでーな、、と見つめる、そんな目付きを浴びながら、、歩く、、
いやそこはね、違うんですよ。みんな暇を弄んでましたからチラッとは見たはずですがね、誰もあなたのことそんな風に見てませんでしたから……気持ちの問題でしかないのでありました。
カウンターに向かい手続きする。リュックの小さい方、ポーターに預けない、ココダを歩くためのギアが一式入ったリュックを渡し、お土産を機内に持ち込むという全くもって誤った判断をそこでする。
恐るべし、罪悪感のなせる最大の判断ミス。
(5) きのこ仲間を見つける、いや見つけてもらえた…
荷物を預けて注目浴びたのも悪いことではありませんでした。預けた直後に声をかけられました。
もしかして、あなたは軍曹のツアーに参加されますか?
声をかけてくれたのは、少し、南国系の面立ちをした身長同じくらいの少し年配の女性(サメ子)と、その息子のような、身長高く、体格良く天パの少年のような顔立ち(天パ坊や)の二人。
あっ、はい。あなた方も?
ようやくお会いできて嬉しく思います。
天パ坊やはあどけなさの残る可愛らしさに、鋭い眼光で人の心の奥底を見るような目つきをするのですが、
チェックインの時から、もしかしてあなたがツアー参加者の1人じゃ無いかと思っていました。
と言いました。
いやぁ、見られていましたね、、
変なことしてなかったかな……
色々オーバーリアクションとか、、、笑
娘によく言われるんだ。
(6) 驚愕の事実
そこで伝えられたのは、ツアー参加者3名がチェックインできなかったという事実。
「えっ?どういうことですか?」
と尋ねる私に、
「(のんびり余裕かますタイプの)3人がカウンターに着いたのは搭乗開始1.5hr前だったのかな。僕たちの2人後で満席。40人が今日の便に乗れない事になったその中の3人になってしまったんだよね。」
と話す天パ坊や。でも今考えたらめっちゃ冷静な口調。
朝の便がキャンセルになっているからそれはあり得る話。
「えっ、トレイル歩き始めるのは明日なのに、じゃあどうなるの?」
言葉に出してしまいましたが、そりゃ皆…分からないですよ。
「………」
うーん、、、とりあえず現状を軍曹に伝えなければとSMS。軍曹からは即、
「分かった。搭乗直前にもう一回メッセージ送って。」
と言われました。
そうこう会話しているうちに機体も到着。
まぁまぁ見た目普通の機体。
「良かった。」(心の声)
初めての航空会社(ニューギニー航空)ですから、それなりに不安はあります。かなり遅れて、確か1.5hr?で搭乗開始。
(7)快適なニューギニー航空の機内
必死になって読書してました。
当然パプアニューギニアのビールもいただき上機嫌。やっぱりビールはその国のものに限る!
あっ、そうか、隣に座っていた女性が弁護士さんでパプアニューギニアには会議で訪れたとの話。お互いに一人娘を持つ母親で色々な話に花が咲きました。
ひとしきり話して、隣に座る方との友好な関係を築いたら、それで良しなオーストラリアンスタイル。気を使わずに、特にまた会話なくそれぞれミーティング資料準備、私は本に没頭。
(8)兵士達の気持ち
機内からは素晴らしい夕焼けが見られました。
この時、ふと、戦場で兵士の皆さんが少しでも戦争を忘れて、自然の美しさに心が震えた瞬間があったのかもしれない…
機内だったので特に戦闘機を操っていた兵士達の気持ちを考えて、そうだったら良いなと涙がほろりとこぼれました。
(9)ウェルカムトゥザ パラダイス
最近はもうバスに乗るが如く、機内に何時間居るとかそんなのは気にしなくなってしまいました。搭乗時間さえ解ってればなんとかなる。皆さんに聞かれて困る質問です。
「いや、そんなのググれば直ぐわかるじゃん。私に聞かなくても良くね?」
と思う自分も何処かにいたりします。
そんなに優しい人間ではありません。が、いやぁ、そういうのをきちんと調べないで恥ずかしいという気持ちも入り混じる複雑さ。
到着時は夜。
(10)まだカオスは続く…
そこで、搭乗直前に預けたあの荷物が届かなかったことを知り愕然とする。私の善意が踏みにじられた瞬間です。
でも明日の便で来るから大丈夫だろうと楽観的な自分。いやそんなの甘すぎると後ほど思い知らされますが、、
外に出て軍曹の笑顔を見た時にはほっとしました。
「よくきてくれたね!パプアニューギニアへようこそ。Welcome to Papua New Guinea」
(11) もう一度、ウェルカムトゥザパラダイス
空港からホテルまでの道のりは暗く、人の気配があまりしませんでした。夜は何処の国も怖いね…
初日の宿泊はポートモレスビーでも最高の設備を誇るヒルトンホテル。ココダトレイルとのギャップを感じます。世界でも治安の悪い国の一つとされるポートモレスビー、ヒルトンのゲートには機関銃を持ったセキュリティが2名立っていました。
色々あったこの日、全てを報告し、翌日スタートが無くなったという一日目夜は、お夕飯の後はバーに移動して、サメ子と、天パ坊や、そしてそこに居合わせた方と会話しパプアニューギニアの第一夜を楽しみました。
この夜、軍曹早く寝ちゃって、
付き合い悪いな…と思いました。
(おしまい)
読んでくださって本当にありがとうございます。