【超短編小説】 ジャムパン、学校に行く
「はい、静かに。みんな聞いて。今日、廊下にジャムパンが落ちていました」
先生は朝の会で話し始めた。
「学校に食べ物を持って来ないっていうのはみんな知ってるよね。もし、何か知っていることがあったら教えて欲しいんだけど」
すると、山崎君が手を挙げた。
「どうして、学校にジャムパンを持ってきたらダメなんですか?」
「そういうルールだからです」と先生は答えた。
すると、今度は田中さんが席を立った。
「誰かが廊下に落としたのは良くないけど、食べられなかったジャムパンはかわいそうだと思います」
「そうだ、そうだ。ジャムパンだって、本当は食べて欲しかったんだ。だから、学校のルールが変だと思います」
「みんな、落ち着いて。先生は今、ジャムパンが学校にあることについて聞いているのよ」
すると、柏木君が手を挙げた。
「僕は誰もジャムパンを持って来てないと思います」
「どういうこと?」と先生は返した。
「ジャムパンが歩いて、学校に来たと言うことはないですか?」と柏木君は言った。
それを聞いたみんなは「嘘だー」や「そんなことあるの?」と口々に言い始めた。
その瞬間、慌てた様子で校長先生が教室に入って来た。
「みんな、お騒がせして悪かったね。理由が分かったよ。ジャムパンが校庭から教室の方に入って来たんだ。さっき、確認が取れた」
すると、田中さんはひと言、呟いた。
「ジャムパンも学校に来たかったんだよ」(完)