【超短編小説】12.3 45° 6回目 気温7℃
月と交信している。
誰もが笑った。
「そんなことして、何の意味があるんだよ」
意味?意味なんているのか。
僕は好きだから電波を探しているだけだ。
アイツらは目的と概念を欲しがった。
申し訳ないが、そんなものはない。
少なくともこの方法で上手くいくのかさえ分からない。
だが、僕は月を知りたかった。
「社会ってさ、正しい方法ばっかりを求めるよな。その基準ってさ、一体、どこにあるんだろうな」
僕は猫に話しかける。
「何が起こるかなんて、分からないじゃん」
猫はニャーと鳴いた。
通信機を持っている右腕が痛くなってきた。
「そろそろ、月に届いたかな」
相変わらず通信機に反応は無かった。
それでも、ノートに通信記録を書いた。
「12月3日、北緯45度、6回目、気温7度、月からの応答なし」(完)