【超短編小説】 箱入り娘からの脱出
「起きてください」
女の声が聞こえる。
俺は目を開けると、何もない四角い部屋の中にいた。
「何処だ、ここ」
「私達、閉じ込められたみたいなんです」
箱入り娘からの脱出
そうだ、俺は飲み会に行って、それから二次会に・・・。
上手く思い出せないが、今、分かることは同期の彩鳥(あやとり)さんといるということだけだった。
「彩鳥さんは大丈夫ですか?」
「ええ、それよりも出口がどこにも無くて」
「とにかく、スマートフォンで助けを呼びましょう」
俺は冷静さを装いながら、自分を落ち着かせようとした。
「でも、圏外なんです。お母様にも連絡取れなくて。22時までには家に帰らないといけないのに」
「彩鳥さんって、門限とかあるんですか?」
「ええ、ウチは昔からそういう決まりなんです。こうなったら、仕方ないですね。あまり使いたくなかったですが、奥の手を」
彼女はそう言って鞄に入っていたボタンを押した。
すると、遠くの方から凄まじい音を立てながら何かが近付いてくる音が聞こえてきた。
「なんだ、何が起きてるんだ!」
「うちの自家用ジェット機です。もうすぐ執事が私達を助けに来てくれます。なるべく、部屋の隅にいましょう」
「いや、これじゃ潰されちゃいますよ」
「大丈夫です、GPS機能で位置情報は知らせていますから」
「そんな馬鹿な」
そう言うや否や、四角い部屋に小さな明かりが差し込んだ。
少しずつ壁が崩れ始めた瞬間、俺は思い出した。
隣にいる彩鳥さんが箱入り娘だったという事を(完)