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ただ、抱きしめる


保育園が娘にとって“つまらない”場所になってしまったのはいつからだったのだろう…。


「行きたくないなら行かなくてもいいよ。」

と言ってあげられない。
自分との葛藤…

体裁を気にしているのか、知らない誰かの目を気にしているのか…自分でもよくわからない。

本当なら、「もう行くの辞めようか。」と言ってあげたいところなのだが、保育園でお友達と楽しそうに遊ぶ彼女の姿を見ていると、なんとなく行けばその場に馴染んでいるようにも見えて、寄り道しながらゆっくり登園している。

職場に事情を話し、少しだけ朝遅れて出勤するようにした。職場が理解を示してくれている事に感謝しかない。

利用している保育園には、「児童デイサービス」が併設されている。

発達の凸凹がある子どもや少し障がいのあるお子さんが通う場所だ。

娘は、そこに通っているクラスメイトの事が気になっていて、

「行きたい」と言う。

娘の希望を先生に伝えて、こどもがいない短い時間ゆっくり過ごさせてもらっている。

児童デイサービスの施設長をしている先生は私がとても信頼している方だ。

「りーちゃんは、4歳だものね。

“できる、できない”

にこだわる時期だよね。上手くできない事が増えると苦しいんじゃないかな。デリケートなら年頃なんだよ。」

と先生は教えてくれた。

児童デイサービスの中で少し遊んで、先生とお話しが出来ると、娘は気持ちを切り替える。

しかし、いざ教室に入ろうとすると苦しそうだ。

優しい事務員さんと絵本を読んで、落ち着くと先生と友達と教室に向かう。


年中から担任が変わった。

担任は非常に熱心で、自分の信念を曲げないタイプだ。

担任発表となった4月の初めに、彼女の方針を伝えられた。

「意地悪に子どもは感じてしまうかもしれないけれど、

私はあえて子どもの意図を汲み取ったりはしません。

自分で考えて、それを言葉にして、自分の力で問題解決ができる力をつけていけるよう、色んな事をしていきます。」

なるほど。

と感心した。

娘はとても張り切って保育園に行くようになった。

とても頑張り屋になり、甘えん坊の「イヤイヤ」が無くなった。


しかし、2ヶ月後…


娘は忘れものをする事を怖がるようになった。

口調をやけに気にするようになった。

別れ際、嗚咽するぐらい「行かないで」と泣くようになった。


そして…
保育園に入る事を拒否するようになった。



私は、園長先生に相談し、担任の先生と面談したいとお願いした。

娘の行き渋りが、保育園側にあると思っていない。

私自身も仕事ばかりで娘にプレッシャーを与えてしまったのかもしれない。

大きくなった時の姿に囚われ、娘の「今」に目を向けていなかったのかもしれない。


私は娘に申し訳なくなって、涙が溢れてきた。


今週の後半。

少しずつ、保育園に登園するのが恐怖心のようなものが薄らいだのか、嗚咽して泣かないようになった。


特別な言葉はいらない。


ただ抱きしめる。


「抱っこして?」
と甘える娘を。

たっぷり抱きしめてエネルギーを充電する。

ただ何も言わずに。


おはよう、ぎゅっ
おかえり、ぎゅっ
ごちそうさま、ぎゅっ
えーん、えーん、ぎゅーっ
おやすみなさい、ぎゅっ


お腹が減って食べて、遊んで、笑って、疲れて寝て。

そんな日々が愛おしい事…

ただ、ありのままの自分を抱きしめてくれる人を子どもたちは求めている。

娘が私より先に走って保育園の門を開けてくれる日はまたやって来るだろうか…。

一応 短歌

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