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問わず語りの夫
夫の部屋からド派手なカーアクションの音が聞こえてくる。
夫が大好きなドラマを見ている。
今日は一日中趣味に費やすつもりだな。
石原プロモーション制作のドラマ、
「西部警察」
1979年〜1984年に放送された刑事ドラマ。
今はHuluで見ることができる。
夫は西部警察が大好きで、236話を完遂し、現在2周目と言う。
休日はドラマを見ながら、プラモデル制作に没頭している。
ドラマが先かプラモが先かは知らない。
西部警察で使用されている車のプラモをそりゃもう熱心に作っている。
私は西部警察にも車にもあまり興味がない。でも夫が見ている西部警察は目に入ってくる。
キキーッ(カーアクション)
バキューンバキューン(ドンパチ)
パーフーパーフー(パトカー)
ボカーンドカーン(バスガス爆発)
最後は団長の大門(渡哲也)がレミントンをぶちかまして円満解決。
円満でもないな。
木暮課長(石原裕次郎)が現れて、すべてを浄化。
なぜか歌を歌う女の人もいる。
夫は自分のプラモが出来上がると
次は写真撮影だ。
実車に見えるかどうか、
それが大事らしい。
外に持って行って地面に置いて撮影。その写真を私に見せる。
あんまり車に興味がない古女房で、褒め言葉がわからない。
友人夫婦と夫と私、4人で会う機会があった。
友人たろう君(仮名)が夫にプラモ製作について聞いている。夫は友人とのグループラインに完成したプラモデルの写真をアップしているらしい。
なぜか持ってきていたタブレットで写真を見せている。
たろう君も奥さんのI子ちゃんも車が好きで、プラモデルの出来映えに感心して夫を褒めた。
家では何台作っても誰も褒めてくれないのである。
夫は東京モーターショーで撮影した写真も見せている。
たろう君とI子ちゃん夫婦が興味深く聞いてくれるので夫の口も滑らかだ。
東京モーターショーは私も誘われたが、車に興味がないので断った。
夫はひとりで行った。
そして今、車好きの二人を前にしてますます盛り上がる夫。
たろう君が、夫の話を熱心に聞いているI子ちゃんを手で指し示し、爽やかな笑顔で私に言った。
「これがやさしさやで。」
はーい!すいませーん!ですよ。
では初心に戻って夫を褒めてみよう。
いや夫のプラモデルを褒めてみよう。
塗料がツヤツヤしていいね!
(ちょっと違うな)
今にも走り出しそう!
(西部警察では大破やで)
一日中食事以外はプラモ製作、集中力がすごいね!
(皮肉にしか)
私は今、やさしさ学習中。
そんな夫がリキリキうるさい。
ONE PIECEの話でもペットの名前でもない。
西部警察の話だ。
寺尾聰さんが演じる松田猛の愛称リキ。
かっこ良すぎてどうしてもライブを観たいから行こうと言う。
紅白で寺尾聰さんを見て憧れが加速したらしい。
聞けば仙台のライブハウス。
遠征か。
ライブは私も好きだ。
ルビーの指環なら何回でも歌える。
そうね誕生石ならルビーなの
問わず語りの心が切ないね
ルビーは夫の誕生石。
これからは問わず語りのプラモ自慢を聞いてあげてもいい。
夫の憧れはリキだ。
私は大門を目指します。