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【教育】推薦入試の指導法が昔とは変わってきた件

ここでいう指導法とは、内容ではなく、手段やツールのことを指す。

前回、受験学年を担当したのは7年前。
産育休を間に挟んだので、久しぶりの3年生。
推薦入試の指導となると、主に教師が指導を担わなければいけないのは以下3点。

・志望理由、志望動機の作成
・小論文指導
・面接練習

推薦入試を受ける生徒の保護者の方で、生徒と教師がどのくらいやり取りをして入試に臨んでいるのかを正確に把握している率はかなり低いと思われる。
自身が教師であるとか、親子で相当な情報交換を家庭でしているとかでない限りは、面談でよく聞く言葉、

「本人に任せています」

の通りだと推察する。

理解して欲しいというわけではないけれど、
結構、先生たちは頑張っている!(大声)

時間的リソースを相当割くため、季節労働者のように働く。
上に述べたものは生徒と直接やり取りしながら進める業務だが、その他、推薦書や調査書の作成はかなり地味。孤独と闘いながら黙々と取り組む。
その他、通常授業、課外授業の各準備、模試の申し込みや仕分け作業、分析と生徒面談、部活動指導、大会引率、校外向け業務の対応、研修参加、定例会議やオンライン会議などなど。
忘れているけど他にもきっとある。

7年前は、この季節に体重が一気に落ちた。
圧倒的に時間が足りず、睡眠不足が限界を超えていた。

今回の受験学年担任として、ある程度の覚悟はしていた。でも実際は、疲れてはいるのだけどその当時ほどではない。子育てがあるのに、早朝ランニングをする余裕すらある。
なぜ?

答えは、
ペーパーレス化!
だと私は読んでいる。

教育業界は、あらゆる分野の中でも効率化・合理化の波が届くのは極めて遅い。
ハンコ文化はいまだ健在。
業務は済んでいるのに、決済を受けるまでの時間がやたら長かったりもする。
それでも、以前に比べたらかなり良くなってはきたため、支障がない部分は、一気にペーパーレス化が加速した。
これも、コロナ禍が機のパラダイムシフト。

その最たるものが、生徒のICT化。
大人より、デジタルネイティブの若者の方が断然飲み込みが速い。
私自身なんでも試したい性分のため、他の職員に比べると比較的使う率が高めだが、それでも生徒の飲み込み度の速さには敵わない。だから、授業でもこちらの指示がストレスなく伝わる。

ということで、

・志望理由、志望動機の作成
・小論文指導
・面接練習

このうち上2点は、オンライン上で指導することが可能になった。
これは、非常にありがたい。

わざわざ時間を設定し、生徒に順番待ちをさせながら次々と面談して指導をする必要がだいぶ減った。
もちろん、重要なポイントではフェイストゥーフェイスでの指導を外せないが、進捗の確認や添削作業などはオンラインで十分である。

時間的制約が減ったことで、自分のスケジュール管理やタイムマネジメントがかなりしやすい。
それは生徒も同じで、前の生徒が指導を受けているときの待ち時間の過ごし方を悩むこともなくなり、効率よく入試対策に臨むことができる。

と、今日は連休中だが、自分の隙間時間に生徒と共有しているGoogleドキュメントを開き、文書上で生徒の意見を聴きながらリアルタイム添削をしているときに思った。
この作業、7年前は全て紙ベースで実施していたことである。

参考資料として当時の書類を残しているのだが、見返してみると、生徒の筆跡や私の殴り書きが全て残っていて、なんだか懐かしい。
ああ、このときブチ切れて生徒を叱ったときだ、と思い出したり、全く志望理由書が書けずに号泣していた生徒の涙染みが紙面に残っていたりして、なんとも言えないセンチメンタルな気分になる。

そういう視点で言えば、紙でのやり取りの方が五感に響くような記憶に残るのかもしれない。
デジタルデバイスでのやり取りは、そういう点での恩恵はあまりなさそう。
その代わり、浮いた時間を別のことに活用できるという意味で、資源を大切に使うことができるという優位性は担保できる。

教職従事者の立場としては、「生徒の成長を肌で感じる」ことを享受しにくくなるという点が非常に惜しい。
ただ、それも思い込みやバイアスな気もするし、私自身も、仕事だけ頑張れるというライフステージに立っている場合ではない以上、社会変容によって起きた教育界でのペーパーレス化がもたらす利点を存分に活かしたいという気持ちが正直なところ。

タイパがどうとか、早送りして要点だけ事前に知りたいZ世代対応だとか、そういうレベルの話がしたいわけではなくて。

どっぷり仕事漬け体質の私であっても、目的と手段の勘違いをしないで済むこと。
社会が与えてくれたツールを適材適所で使いこなすこと。
古い体質が美化され、それに翻弄されないようにすること。
ー 教育の本質は、目に見えにくいのだ。そして、すぐには分からないもの。時間をかけて醸成されるもの。

PCと向き合い、生徒が作成した志望理由書の文字を画面上で眺めながら、物思いに耽る。

便利な世の中になったな。
感傷的な気持ちをちょっとだけ言葉に乗せて、私もキーボードを打つ。

頑張れ、受験生!
(と、指導する先生たち。)

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