古いノートの中には……
「おかあさんはやくたいいんしてね」
「しゅうがくりょこうおみおくりしてね」
【○○とおかあさんの生活ノート】と書いてある。
わたしが入院中、娘と交換日記をしていた。
娘は小学6年生。それにしてもひらがなばかりで
字もあまりキレイじゃない。
でもさらに、わたしの字がひどすぎる。ミミズがたくさんで
読むのに苦労する。
わたしは意識不明の重体から奇跡的に助かって
リハビリに励んでいた。
握力は3。ペンは持てるが書くことはむずかしかった。
「おかあさんはやくたいいんしてね」と毎回書いている。
どんな気持ちで生活していたのか。
想像すると今でも目頭が熱くなる。
当時は自分のことに必死で(検査とリハビリ)
子どもたちのことは、夫、義母、母に任せきりだった。
春に入院して、季節はもう夏が終わろうとしていた。
修学旅行のお見送りもできなかった。
「はやくたいいんしてね」が
「おとうさんがいやだ」「おばあちゃんがいやだ」に変わってきた。
わたしの字もかなり読めるようになってきたころだ。
娘の心の限界が近いと感じた。
わたしは退院することを決めた。
体的にはまだ入院していたかったが、娘が心配だった。
退院しても自由に動けるわけではなく、何も
してあげられないかもしれない。でも家にいるだけでもいいかなと思った。
今、断捨離を進めている中で、このノートを発見した。
読むと切ない気持ちになるけれど、これは娘とわたしが、
がんばっていた証だ。
二人の想いと成長が詰まっている。
捨てられずに元の場所へそっと戻した。