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多文化共生を目指す佐藤天音さん:学びと挑戦の軌跡 ―新潟大学での活動と留学への思い―

新潟大学経済科学部 学際日本学プログラムに在籍する佐藤天音さん(2年生)。日中にまたがるルーツと、台湾での留学経験、そしてこれからの中国交換留学を控えた彼女は、多文化共生をテーマに精力的な活動を行っています。サークル活動や学び、留学の経験、そして未来の目標についてお話を伺いました。本記事では、インタビューを担当した山田竜太朗がその詳細をお届けします。


学際日本学プログラムでの挑戦

新潟大学の経済科学部に設置された「学際日本学プログラム(通称:学際)」は、国際的な視点で日本を学ぶことを目的に設計されたユニークなプログラムです。このプログラムでは、外国人留学生と日本人学生が共に学ぶ機会が多く、佐藤天音さんもその環境を最大限に活用して学びを深めています。

インタビュアー:学際に入ってからの一年、どのようなことを学び進めましたか?

佐藤天音さん:学際日本学プログラムでは、国際色豊かな学びが特徴です。たとえば、「Introduction to Interdisciplinary Japanese Studies」という授業では、韓国や中国、ヨーロッパからの留学生と議論を行い、文化や歴史について多様な視点で考える機会がありました。また、「学修デザイン演習」では、指定された本を要約し、グループで課題を設定して解決策を発表するという課題に取り組みました。この授業では「チャイナタウンの歴史」をテーマに選び、アメリカと日本のチャイナタウンの事例を基に、共存と共生の違いを考察しました。

インタビュアー:共存と共生の違いについて、どのように考えましたか?

佐藤天音さん:「共存」は同じ空間にいるだけで干渉しない関係を指すのに対し、「共生」は相互に助け合い、深く関わる関係を指します。しかし、現実には共生を実現することは難しいと考えています。移民や文化の違いによる対立の問題を考えると、共存が精一杯というケースも多いのが現状です。さらに、アカデミックライティングの授業では、本を読んで構想を立て、1万字に及ぶ個人論文を書く経験を通じて、研究スキルを磨いています。

交換留学への意欲と挑戦

2025年3月から中国吉林大学での交換留学を控えています。当初は1年半の長期プログラムで中国海洋大学に行く予定でしたが、制度の問題で断念し、半年間のプログラムに変更しました。それでも、現地の大学生と同じ経済学部の授業を受けられることに大きな期待を寄せています。

インタビュアー:留学を決めたきっかけは何だったのでしょうか?

佐藤天音さん:母が中国出身ということもあり、幼い頃から中国文化に触れる機会は多かったです。しかし、高校時代に台湾のサマーキャンプに参加したことが、留学を本格的に考えるきっかけとなりました。そのキャンプでの体験を通じて、異文化の中で学ぶ楽しさや、自分の視野が広がる感覚を得たことが大きかったですね。 

2年前(大学1年生)の春、 再び行った台湾留学の様子

インタビュアー:吉林大学はどのような大学ですか?

佐藤天音さん:中国国内で非常に評価の高い大学です。経済学の分野では特に優れており、日本で言うと一橋大学に匹敵するレベルだと言われています。授業はすべて中国語で行われるので、言語的な壁はあると思いますが、精一杯努力して乗り越えたいと思っています。

国際ボランティアサークルでの活動

佐藤さんは大学の国際ボランティアサークルでも活躍しています。このサークルでは、留学生と日本人の交流を促進するさまざまな活動を展開しており、佐藤さんは「母語教室」のチーフを務めています。

インタビュアー:サークルではどのような活動をしていますか?

佐藤天音さん:「母語教室」では、日本人と留学生をマッチングし、言語を学び合える小グループを作っています。たとえば、日本人学生が中国語を学びたい場合、中国人留学生とペアを組むようにしています。他にも、「日本語チャット」では日本文化を学ぶ機会を提供していて、最近では書道教室を実施しました。また、「カルチャーラーニング」では留学生が自分の国を紹介する勉強会を企画しています。

インタビュアー:印象に残っている活動はありますか?

佐藤天音さん:昨年企画したハロウィンパーティーは特に印象深いです。60人が参加し、ビンゴゲームやお菓子作りなどを通じて多文化交流を楽しむ場を提供しました。今年も12月23日にクリスマスパーティーを企画しており、現在その準備を進めています。

ハロウィンパーティーの様子
クリスマスパーティーの様子

課題とその解決への模索

しかし、佐藤さんのサークル活動には課題もあります。それは「日本人参加者の少なさ」です。

佐藤天音さん:留学生に比べて、日本人学生の国際活動への関心が薄いことが大きな課題です。そのため、最近は飲み会やご飯会など、より気軽に参加できるイベントを通じて日本人学生の参加を増やそうとしています。
また、サークル内では役員が留学で不在となるケースも多く、活動の継続性に影響を与えています。この問題については、12月20日に予定されている定期総会で、新しい体制を構築するための話し合いが行われる予定です。

日中のルーツと多文化共生への思い

佐藤さんがこれほどまでに多文化共生に取り組む理由には、彼女自身のルーツが深く関わっています。

インタビュアー:多文化環境で育った経験について教えてください。

佐藤天音さん:私の母は中国出身で、家では中国語がメインでした。一方で、学校では日本語を使うという環境で育ちました。小学校に入学した頃は日本語がほとんど話せなかったので、授業についていくのが大変でしたが、努力して両方の言語を身につけました。ただ、両方の文化に関わりながら、どちらにも完全には馴染めないという葛藤もあります。その経験から、多文化の中で共存し、互いに理解し合う重要性を強く感じるようになりました。

未来への展望

インタビュアー:将来の目標を教えてください。

佐藤天音さん:中国留学を通じて語学力や現地の視点を深めたいです。その後は、国際的な視点を生かして日本や海外で働き、多文化共生をテーマにした活動を続けていきたいです。

編集後記


佐藤天音さんの言葉から、多文化共生への強い思いが伝わってきました。日本と中国、そして多文化共生の架け橋となる挑戦は、未来の国際社会をより良くする力を秘めています。 

(執筆・インタビュー:経済科学部地域リーダープログラム2年山田竜太朗 執筆日2025年1月28日)

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