CES関数、超入門!
経済学で使う効用関数や生産関数。入門レベルでよく見るのは、コブ・ダグラス型関数でしょうか。今回はCES型関数から、コブ・ダグラス型関数を含む3種類の効用関数の形を導きたいと思います。
CES型関数って?
2財モデルでの効用関数を考えましょう。生産関数でも数学的には同じです。CES関数は以下のように書けます。
$$
U(x_1,x_2) = \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \}^{\frac{1}{\rho}}
$$
$${\alpha}$$は0から1までの値で、最初から決まっているものと思っておくといいです。問題は$${\rho}$$ですね。限界効用低減の法則を満たすために、$${\rho \leq 1}$$の範囲で考えます。小さいほうはマイナスでもOKです。
ややこしそうな形ですが、この$${\rho}$$によって関数の形を様々に表現できるのがポイントです。
$${\rho = 1}$$のときのCES関数
$${ \rho \leq 1}$$なので、まず最大の$${ \rho = 1}$$の場合の効用関数を考えます。といっても、CES関数に$${ \rho = 1}$$を代入するだけなので、
$$
U(x_1,x_2) = \alpha x_1 + ( 1- \alpha) x_2
$$
とすぐにわかります。$${\alpha}$$は最初から決まっているので、効用関数は単純な足し算の形です。この人にとって$${x_1}$$1個と$${x_2}$$$${\frac{\alpha}{1-\alpha}}$$個はつねに同じ価値を持ちます。「つねに」というのは、現在の消費量によらず、ということです。
$${U}$$を適当に固定すれば、無差別曲線は右下がりの直線になるので、限界代替率は常に一定です。
$${\rho \to - \infty}$$のときのCES関数
今度は$${\rho}$$が一番小さい場合を考えましょう。両辺に対数を取って計算した上で、対数の中同士を比べるというテクニックを使います。
$$
\begin{align*}
\lim_{\rho \to - \infty} U(x_1,x_2) &= \lim_{\rho \to - \infty} \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \}^{\frac{1}{\rho}} \ \ (CES関数)\\
\lim_{\rho \to - \infty} \log U(x_1,x_2) &= \lim_{\rho \to - \infty} \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \}^{\frac{1}{\rho}} \ \ (両辺に対数をとる) \\
&= \lim_{\rho \to - \infty} \frac{ \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \} }{\rho} \\
&= \lim_{\rho \to - \infty} [ \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \} ]^\prime \ \ (ロピタルの定理) \\
&= \lim_{\rho \to - \infty} \frac{ [\alpha x_1^\rho + (1 - \alpha) x_2^\rho]^\prime }{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho } \ \ (\logの微分)\\
&= \lim_{\rho \to - \infty} \frac{ \alpha x_1^\rho \log x_1 + (1 - \alpha) x_2^\rho \log x_2 }{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho } \ \ (指数関数の微分)\\
&= \lim_{\rho \to - \infty} \frac{ \alpha (x_1 / x_2)^\rho \log x_1 + (1 - \alpha) \log x_2 }{ \alpha (x_1 / x_2)^\rho + ( 1- \alpha) } \ \ (分子分母をx_2^\rhoで割る)\\
&= \frac{ \alpha \cdot 0 \cdot \log x_1 + (1 - \alpha) \log x_2 }{ \alpha \cdot 0 + ( 1- \alpha ) } \ \ (x_1 > x_2 を仮定すると(x_1 / x_2)^\rho \to 0\\
&= \log x_2\\
\therefore \lim_{\rho \to - \infty} U(x_1,x_2) &= x_2 \ \ (\logのなか同士を比較)
\end{align*}
$$
途中で$${x_1 > x_2}$$を仮定していますが、もし$${x_1 < x_2}$$なら同様の計算で$${\lim_{\rho \to - \infty} U(x_1,x_2) = x_1}$$となります。両者を合わせれば、
$$
\lim_{\rho \to - \infty} U(x_1,x_2) = \min \{x_1, x_2\}
$$
と表現できます。$${U}$$を適当に固定すれば、L字型の無差別曲線が得られます。$${x_1,x_2}$$は同じ割合で消費しないと「余り」が生じてしまい、余っているほうはいくら増やしてもまったく効用水準は上がりません。限界代替率は0または無限大で、まったく代替できないことを意味します。
$${\rho = 0}$$のときのCES関数
$${\rho}$$が最大のケースと最小のケースを確かめたので、その中間$${\rho \to 0}$$(分母0がならないように$${=}$$ではなく$${\to}$$)を調べましょう。計算の進め方は$${\rho \to - \infty}$$のケースと同じです。
$$
\begin{align*}
\lim_{\rho \to 0} U(x_1,x_2) &= \lim_{\rho \to 0} \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \}^{\frac{1}{\rho}} \ \ (CES関数)\\
\lim_{\rho \to 0} \log U(x_1,x_2) &= \lim_{\rho \to 0} \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \}^{\frac{1}{\rho}} \ \ (両辺に対数をとる) \\
&= \lim_{\rho \to 0} \frac{ \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \} }{\rho} \\
&= \lim_{\rho \to 0} [ \log \{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho \} ]^\prime \ \ (ロピタルの定理) \\
&= \lim_{\rho \to 0} \frac{ [\alpha x_1^\rho + (1 - \alpha) x_2^\rho]^\prime }{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho } \ \ (\logの微分)\\
&= \lim_{\rho \to 0} \frac{ \alpha x_1^\rho \log x_1 + (1 - \alpha) x_2^\rho \log x_2 }{ \alpha x_1^\rho + ( 1- \alpha) x_2^\rho } \ \ (指数関数の微分)\\
&= \frac{ \alpha x_1^0 \log x_1 + (1 - \alpha) x_2^0 \log x_2 }{ \alpha x_1^0 + ( 1- \alpha) x_2^0 } \ \ (\rho \to 0の当てはめ) \\
&= \alpha \log x_1 + (1 - \alpha) \log x_2 \\
&= \log x_1^{\alpha} x_2^{1 - \alpha} \\
\therefore \lim_{\rho \to 0} U(x_1,x_2) &= x_1^{\alpha} x_2^{1 - \alpha} \ \ (\logの中を比較)
\end{align*}
$$
おなじみのコブ・ダグラス関数が得られました!$${U}$$を適当に固定すれば、無差別曲線はおなじみの下に凸な曲線を描き、限界代替率低減の法則が成り立ちます。
$${\alpha=0.5,\bar{U}=1}$$として無差別曲線を図示すると以下のようになります。線形の場合と、L字型の場合の中間的な形をしている、と見ることができますね。
次回もCES関数について書く予定です。
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