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円安が進む中で、中古品の海外輸・・・

円安が進む中で、中古品の海外輸出ビジネスが注目を集めています。

過日の報道によれば、タイ・バンコク郊外にある日本の中古品のみを扱う店にはお客さんの行列ができ、開店と同時に争奪戦が繰り広げられているとのこと。日本製の中古品は、安くて品質がいいというのがその理由です。

こうした経済情勢を商機として、そうしたビジネスに乗り出そうとお考えになる外国人の方は少なくないようです。

その場合、日本では古物商許可を受ける必要があって、時折、外国人でも古物商許可を取得できるのかと尋ねられることがあります。

日本で古物商を開業する場合の在留資格は?

この質問に対しては「在留資格によって可能性がある」というのがわたしの答えです。

日本において古物商許可を取得できる可能性のある在留資格には、身分系の資格(永住者・定住者・日本人の配偶者等)を除けば、原則、「経営・管理」ということになるでしょう。

「経営・管理」に該当する活動は入管法で次の通りとされています。

「本邦において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動(入管法別表第一の二の表の法律・会計業務の項に掲げる資格を有しなければ法律上行うことができないこととされている事業の経営又は管理に従事する活動を除く。)」

たとえば、貿易事業を営む法人を設立して当該資格を申請する場合、まずは、申請人は、本人が事業の「経営」を行うものであり、その事業が適正かつ安定的・継続的に行われることを証明する必要があります。

加えて日本国内に事業所が存在する(あるいは確保されている)ことと、一定以上の事業規模があることの基準を満たすようにしなければなりません。

ここでいう一定以上の事業規模の基準とは、①経営に従事する者以外に日本に居住する二人以上の常勤の職員が従事して営まれるものであるか、②資本金(または出資総額)が五百万円以上であるか、あるいは、③それらに準ずる規模であるかということです。

つまり、申請人は、これらの要件を満たしていることを証明するために「事業計画」をしっかりと練り上げ、その計画の確実な実行を担保するための「運営体制(しくみ)」を構築しておかねばなりません。

なお、これら要件を満たせば、「経営・管理」という資格は、「技術・人文知識・国際業務」(技・人・国)や「技能」のような他の就労資格とは異なり、学歴要件や職歴要件などがありませんから、うがった見方をすれば、説得力あるビジネスプランお金さえあれば、どんな外国人の方でも取得可能な資格とも言えそうです。

「経営・管理」は事業経営者のための資格

そのような中古品の海外輸出ビジネスに欠かせないのが古物商許可です。

古物商許可とは、古物営業法に基づくもので、日本において古物の売買や交換を行うためには不可欠な許可です。

古物営業法には、古物とは、「一度使用された物品、若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの」と定められています。

使用されない物品で使用のために取引されたものとは、つまり、売主から一度でも買主の手に渡った物品はたとえ未使用であったとしても古物になるということです。

古物は、美術品/衣類/時計・宝飾品類/自動車/自動2輪車及び原動機付自転車/自転車類/写真機類/事務機器類/機械工具類/道具類/皮革・ゴム製品類/書籍/金券類の13品目に分類されています。

ちなみに道具類には家具運動用具などが該当しますが、ゲームソフトDVDトレーディングカードなどもこれに該当するとされています。

このような古物による商売をするために古物商許可が必要となるのですが、同法では、そうした古物商を、さらに古物商古物市場主古物競りあっせん業者の3つに分類して定義しています。

古物商は、古物の売買交換を行う営業のこと。
古物市場主は、古物商間の古物の売買・交換のための市場を経営する営業のこと。
古物競りあっせん業者は、古物商間だけでなく一般人も対象にした古物の売買をあっせんする営業のこと(インターネットオークション運営者等)。

申請者はビジネスを検討する際に、いずれに該当するのかをしっかり見極めておく必要があります。

アンティークの営業には古物商許可が必要です

ちなみに、同制度は、盗品などを早期発見し、盗難や窃盗などの犯罪を未然に防ぐとともに被害を迅速に回復するためのものですから、自分の物を販売したり、オークションサイトに出品したり、あるいは、自分が販売した物を買い戻す場合や海外で自ら購入した物を国内で販売するなどの場合には、出所が明白なため古物商許可は不要となっています。

また、同趣旨から、大型機械類のうち総トン数が20トン以上の船舶航空機鉄道車両などは対象外となっています。

外国人の方が、法人で古物商を開業し、日本国内で買い取った古物を国外に輸出して販売する場合にも、当然に、公安委員会(※)から許可を受けておく必要があります(古物競りあっせん業を開業する場合には、公安委員会への届出)。

仮に許可を得ずにそうした行為に及べば、古物営業法違反により懲役3年以下または100万円以下の罰金の刑を科されることになりますので留意しておく必要があるでしょう。

最後に、外国人の方が会社を設立し中古品の海外輸出ビジネスを始める際の留意点をもう2つほどメモしておきます。

2つの留意点があります

留意点の1.      
会社を設立する際には、定款の事業目的「古物営業法に基づく古物営業及び古物競りあっせん業」とか「中古自動車の買取、販売及び輸出入」などといった文言を忘れずに挿入すること。法人による古物商許可の申請の際には定款の提出が求められますが、古物を扱う事業をする旨の記載がないと申請を受け付けられない場合があります。

留意点の2.      
古物商許可
は、前述の通り、盗品などの早期発見等のために警察との連携をし易くするための制度でもあるため、届け出先の警察署によっては管理者に一定の日本語の能力を求めることもあるようです。日本語に自信がない場合は、管理者を別に立てることも検討しておきましょう。

外国人の日本におけるビジネス参入を支援する際には、単に在留資格の手続きの支援に留まらず許認可や事業計画など広くビジネス展開にも目を配りながら支援する必要があります。

※ 古物商許可の申請等の先は主たる営業所の所在地を管轄する警察署です。

以上


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