ローカルベンチマークというもの・・・
ローカルベンチマークというものがあります。先般、ある税理士さんにこのお話をしたところ、「ほー、こんなのがあるんですか?」と感心されていました。意外と知られていないのかもしれませんね。
「ローカルベンチマーク」とか「ロカベン」と検索していただければ、経済産業省(以下、経産省)の所定のページに誘導されますからぜひ確認してみてください。
経産省は、ローカルベンチマークについて、次のように解説しています。
【解説】
ローカルベンチマーク(略称:ロカベン)とは、企業の経営状態の把握、いわゆる「企業の健康診断」を行うツールです。企業の経営者と金融機関・支援機関等がコミュニケーション(対話)を行いながら、ローカルベンチマーク・シートなどを使用し、企業経営の現状や課題を相互に理解することで、個別企業の経営改善や地域活性化を目指します。
わたしは、ここで云う、支援機関等に属する経営コンサルタントであり、行政書士を業としています。
ツールは、経産省のHPに掲載されていて、そこには分析シートや活用方法が付されていますから、どなたでもいますぐに活用することができます。
誰でも無料で使うことができるすごい行政サービスなのです。
興味のある方は、まずは、このシートをダウンロードして手元に置いてみてください。エクセルフォームで、シンプルな作りです。
分析シートは、大きく分けて財務分析と非財務分析の2つのパートから構成されています。
3枚組で、1枚目が企業の「お金」の面を分析するための財務に関する分析シート、2枚目が企業の商流・業務フローといういわゆるビジネスモデルに関する分析シートで、3枚目が経営者、事業、企業を取り巻く環境・関係者、内部管理体制という4つの視点によるいわば経営基盤に関する分析シートとなっています。
財務面に苦手意識を持っている経営者の方がたまにおられますが、そんな複雑なものじゃありませんからご心配におよびません。まずは3か年の損益計算書と貸借対照表を用意して所定の数字を拾い、「財務分析用入力情報」という箇所に入力するだけ。
1枚目。すぐさま6つの指標(売上増加率・営業利益率・労働生産性・EBITDA有利子負債倍率・営業運転資本回転期間・自己資本比率)がレーダーチャートで示され、併せて、算出結果の同業他社比の点数が示されて自社の財務面の状況が可視化されます。
2枚目。ここでは自社の製品の製造やサービスの提供における業務フローと差別化ポイントを書き出し、さらに、自社を取り巻く仕入れ先や協力企業、得意先、エンドユーザーに関する情報を分析しながら書き上げます。
3枚目で、経営理念を再確認しながら、自社の持つ強み弱み、市場動向や内部管理体制などを分析するといった流れです。
財務面のみならず、非財務面にも目を配って分析することで、その両側面から課題を抽出でき、経営改善に向けてより具体的で実践的な施策を検討することができるようになっています。
弊所が、「知的資産経営報告書」の作成を依頼されたときなどに、まずお勧めするのがこのローカルベンチマークの活用です。「知的資産経営報告書」に記載される内容が、ロカベンの分析シートを作成する過程で炙り出されてくるからです。
社長が一人でやってみるのも悪くありませんが、とりわけ非財務面の分析シートである2枚目や3枚目は、経営スタッフや、ときに一般社員なども交えて対話しながら進めるとよりいいでしょう。
多様な視点で自社の現状を見直すことで、これまで見過ごしてきた企業固有の無形資産(=価値ある何か)や、新たな改善すべき点が浮かび上がってくることもしばしばです。
ローカルベンチマークにおいては、この非財務面の分析が特徴です。
ところで、非財務面の分析精度を上げることと、この分析から浮かび上がった企業固有の無形資産や、それらに関わる問題点を課題化するのは意外と難しい作業です。
こうしたときに頼りになるのが、地域の金融機関や、われわらのような士業(税理士・中小企業診断士・行政書士など)、経営コンサルタントなどの支援機関等というわけです。
支援者は、何か正解(などのようなもの)を手品のようなぱっと示すわけではありません。
支援者の役割は、ローカルベンチマークをツールに、経営者のよき対話相手となり、また、経営者と経営スタッフらの対話の触媒となって、みんなが見過ごしていたその企業に固有の価値ある何かを浮かび上がらせ、これをわかりやすく、端的に明示化することです。
作業を通して浮かび上がってきた価値ある何かが明示化されれば、後(あと)はしめたもの。活用方法を見定め、問題点があればこれを課題化し、経営者が先頭に立って只々、実行、これによって成長あるのみです!!
課題を確実に実行に移すまでが、わたしたち知的資産経営を専門とする行政書士の本質的な仕事です。わたしたちの仕事は、決して「知的資産経営報告書」を書き上げるだけではありません。
以上
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