「第23回観光立国推進閣僚会議・・・
「第23回観光立国推進閣僚会議・配布資料」(政府・政策会議/2024年4月17日)には、わが国は「2030年にインバウンド6,000万人、消費額15兆円を目指す」という目標が示されています。
コロナ明けの昨年(2023年)のインバウンド実績が約2,500万人。今年度は上期の推移からするとおよそ3,500万人も視野に入る勢い。
政府は、今後もこの勢いで推移すれば、2030年の目標(6,000万人)は十分達成可能な状況にあるとしていますが、一部にはこれを厳しいとする見方もあります。
ブルームバーグ(2024年8月28日)によると、これを阻むのがわが国のパイロット不足。いかにも島国らしい悩みですね。
国内航空会社では、今や50代の機長の多くが定年を迎える時期に差し掛かり、その不足が深刻化しています。
現在、わが国のパイロット数は、およそ7,100人で、国土交通省の有識者委員会の試算では、目標達成には、1,000人ほど不足する計算です。
そうした中、注目されるのが外国人パイロットの雇用ですが、これはそう簡単なことでもありません。
ここにはわが国の航空会社における報酬の低さと日本語による業務運営という大きな問題点があるようです。
報酬の問題に関して見てみると、日本航空と全日空の機長の平均年収は約2,500万円なのに対し、デルタ航空だと12年の飛行経験のあるパイロットで約45万3,000ドル(約6,500万円)、アメリカン航空だと約48万ドル(約6,900万円)で、倍以上の開きがあります。
また、日本語の問題に関していえば、日本航空および全日空の両社ともに、現状では外国人パイロットをほとんど雇用しておらず、日本語を話さないパイロットを受け入れる体制が整っていないため、業務プロセス全体の見直しが必至の状況です。
有識者委員会では、60歳以上のパイロットの有効活用や、女性パイロットを増やすことなどを検討していますが、明確な解決策は未だ見通せない状況で、同記事は、評論家の言葉を引用して「6,000万人誘致という目標は厳しいだろう」と締め括っています。
人手不足は日本の至るところまで影響が及んでいます。
そうした外国人パイロットのための在留資格が「技能」です。
「技能」に該当する活動は入管法に次のように定められています。
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動」
「技能」といえば、一般に外国料理の調理人やパティシエ、ソムリエなどの資格として耳にすることの多い在留資格ですが、ここに定期便の航空機の操縦士(パイロット)も入っています。
パイロットとして「技能」資格を取得する際の要件は、「航空機の操縦者として業務に従事する者であり、250時間以上の飛行経歴を有する者である」ということですが、これをその他の必要となる申請書類と共に書面で提示して証明する必要があります。
なお、飛行時間数についていえば、2015年に、それまで「1,000時間以上」であったものが「250時間以上」と要件が大幅に緩和されました。
当時より航空需要の増大に伴うパイロット不足が問題になっていたことが推測できますが、10年近く経っても、変わらぬ現状を顧みると、業界には一筋縄ではいかない複雑な問題がありそうです。
ちなみに、「技能」の上陸許可基準には9つの就労分野が列挙されており、その第1号が「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者」です。
ここでいう特殊なものとは、調理や製造に係る技能が外国で考案されたものであり、かつ、日本においてあまり普及していないものであることを要件とするものです。
フレンチレストランや、最近急増するインド・ネパール料理店の調理人などがこれに該当しますが、一般的なラーメン店(中国料理店としては見なされません)やカレー店(インド・ネパール料理店としては見なされません)は対象とはなりません。
調理人には、実務経験が原則10年(タイ料理人は協定により5年)以上求められ、本国よりレターヘッド付きの在職証明書などを取り付けてこれを証明する必要があります。その際には、信ぴょう性を確認するため、出入国在留管理局が店に国際電話で問い合わせたり、現地の日本大使館がインタビューを行ったりすることもあります。
審査では、勤務先の厨房や外観、コース料理の内容などが写真やメニューで確認され、本格的な外国料理店であるかどうかが最終的に判断されます。
ことほどさように、「技能」資格では、実態確認のためのポイントがこと細かく定められていて、入管のホームページに示された申請書類だけでは証明しきれないことが少なくありません。これは「技能」のその他の就労分野(スポーツの指導者や宝石・貴金属毛皮加工技術者、外国様式の建築物の建築技能者など)でも同様です。
というのも「技能」とは、「個人が自己の経験の集積によって有している能力」のことであり、定量的に把握し難いため、多様な角度からの確認が必要となるからでしょう。ただ、そうした中では、パイロットの場合は、比較的確認ポイントが少ない方かもしれません。
いずれにせよ、申請の際には、各人の状況をもって入管の担当者の方と事前相談しながら、誠実に・丁寧に・確実に手続きを進めることが肝要です。
以上
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