産業医なんてやめておきなさい!?
「せっかく医者になったのにもったいない」「悪いことを言わないからやめておきなさい」「産業医なんて年をとってからやるものだ」。
これらは、私が産業医を専門としたいと宣言したときに当時働いていた病院で、同僚や上司から心配してかけていただいた言葉です。産業衛生の専門医・指導医となった今、当時を振り返ると自分の選択は何ら間違っていないと胸を張って言えます。ただ、それらの言葉を心配してかけたくなる状況があるということも同時に理解しています。
産業医をして、周囲を見渡すと、「産業衛生一本で産業医をしている医師」の割合は低いと感じます。日本には産業医資格を持つ医師が10万人いると推計されていますが、日本産業衛生学会という産業医の専門家の集まりが認定している専門医は、この記事の執筆時点で600人強です。専門医の有無だけでは産業医の能力は決まりませんが、それでも、有資格者のうち専門医が1%未満という状況です。(専門医をとるためには、一定の時間と労力を産業医として勤務する必要があります。これは、どの分野の専門医も一緒です。)
実際にこの仕事に本気で取り組むと、医療の幅広い知識(メンタルヘルスから有害物質による健康被害まで)だけでなく、ビジネスサイドの知識、法律の知識、関わる企業の業界の知識などを学ぶ必要があり奥深い分野で、まだまだ勉強していかなければいけないことがたくさんあると感じます。
医師資格をもっている人種の大半は真面目で勉強好きです(本人が否定したとしても、そうでなければ医師にはなれないと思います。)そのことを端的に感じるのが、産業医を専門としていない医師と話をしていて、私が産業医を専門としていると知ると、結構な頻度で、「今、産業医をしている会社で~~~という従業員がいて、どうすれば良いと思います?」という相談をうけます。人を助けたいと思って医師をしている人が大多数なので、多くの場合は産業医としてなんとか働く人を助けたいと思っているのではないかと感じています。
「社員の困りごとを解決する」と同時に、「会社の困りごとも同じくらい解決する」ことができる産業医が、個人的には質の高い産業医だと考えます。会社にも社員にも、どちらかに偏りすぎずに、バランスをちゃんととれる産業医です。
産業医の質について話をすると、結構な割合で「とんでも産業医」の話がでてきます。社会性が欠けていて非常識な医師の場合、話題として目立つため、多くの産業医がそう見えるのかもしれません。しかし、多くの産業医はそうでないということも知ってほしいと思い、この記事を作成しました。
とんでもない産業医のエピソードを前面に出して不安を煽る営業手法も聞きますが、多くの真面目に産業医をしている医師と、依頼をしている企業双方に失礼であると考えます。真面目な産業医とうまく出会うことができれば、会社の困りごとが解決するかもしれません。
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