【事実発掘!FACT JAPAN 47 NO.26 】鹿児島県 大崎町
こんばんは。FACTの戦略プランナー鈴木です。
前回の「美」をテーマにした松原の投稿を見て思いました。長野の美しい暮らしは素敵だなと。でも、同時に思ったのです。世の中、美しいものばかりじゃないだろうと。
さて、いつになくシリアスなプロローグで始まりました今回、私は「美しくないもの」に光を当ててみたいと思います。
美しくないものの代表格、そう、「ごみ」にまつわるお話です。
皆さんは普段、ごみの分別をどれくらい徹底していますか? お住いの自治体によって、出し方にも意識にも、大きな差があるのだろうと思います。
そこで調べてみました。ごみの分別に熱心な自治体はどこなのかと。
ということで今回取り上げるのは、鹿児島県の大崎町(おおさきちょう)。
資源リサイクル率12年連続日本一の町です。
(環境省;日本の廃棄物処理より)
大崎町は、鹿児島県の東南部にある町。ブロイラーの生産が盛んで、あの日本KFCの認定工場第一号があります。その他にも、ブランド牛「大崎牛」や、鰻の養殖が盛んなことでも有名で、ふるさと納税額で日本一になったことも。また、日本有数のウミガメの産卵地としても知られています。
そんな自然豊かな大崎町だからこそ、なのかもしれませんが、特筆すべきは「ごみ処理」への徹底ぶり。平成18~29年の12年連続で、市町村別リサイクル率トップを誇っています。平成30年は首位を明け渡したものの、令和元年(2019年)には再びトップに返り咲きました。そのリサイクル率は、驚異の82.6%! 全国平均のリサイクル率が20%前後なので、大崎町の取り組みが、いかに徹底されているがおわかりいただけるでしょう。
ちなみに、分別の数はなんと27種類!(ちなみに日本一細かいのは、徳島県上勝町の45種類!) 可燃、不燃、資源、粗大とか、そんなレベルじゃございません。空き瓶だけでも4種類。紙にいたっては8種類。「コピー用紙」と「シュレッダーにかけた紙」は、別々にしないといけません。
回収された資源ごみは、リサイクルセンターで検品され「商品」として出荷されます。町全体のごみの6割以上を占める「草木・生ごみ」は、自然の土着菌の力を利用して、低コストで有機堆肥にされ、畑へと還元されます。
まさに「ごみなのに、捨てるところがない」くらいの、徹底したリサイクルなのです。
始まりは、埋立処分場の延命からでした。住民、企業、行政が力を合わせ、焼却に頼らず徹底した分別による低コストのごみ処理方式「大崎リサイクルシステム」を確立。建設当初は2004年までの運用予定だった処分場は、現在では2060年頃まで利用可能になっているそうです。
そしてこの「大崎リサイクルシステム」は、東南アジア諸国をはじめ、焼却炉がなく埋立処分場があふれている国々に向けて、世界標準の廃棄物処理システムとして輸出されています。「リサイクルの町から、世界の未来をつくる町へ」を合言葉に、世界のごみ処理をリードする、先進的な役割を果たしているのが、大崎町なのです。
皆さんは、「静脈産業」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
「資源から生産し、流通させ、売って、使う」という一連のサプライチェーンを「動脈産業」とした場合、その逆の「捨てる、処理する、資源に戻す」という一連の産業を「静脈産業」と呼びます。
そして今、社会の「動脈」に対し、「静脈」が圧倒的に脆弱で、世の中に歪みが生じていると感じます。循環型社会の実現のために、もっともっと、社会の「静脈」に光を当てねばならないのではないか。静脈産業や、そこで働く人々の、価値を高めていく必要があるのではないか。
大崎町の取り組みを見ていると、強くそう思います。
ちなみに、「静脈」の形容詞は英語で「Venous」で、世界一美しい女神「Venus」と同じ発音の「ヴィーナス」と読みます。言うなれば、「大崎リサイクルシステム」は、世界を美しくする静脈システム。2つの意味で「ヴィーナス・システム」と呼ぶにふさわしい、世界に誇れる廃棄物処理システムです。
「Venous System(静脈システム)」で、女神「Venus」のように、世界を美しくする町。そう、まさに鹿児島県大崎町は、日本一、いや、世界で一番「ヴィーナスな町」なのです!
いかがでしたでしょうか?
美しくない「ごみ」に光を当てていたら、いつの間にか、美しさを語っていました。次回の投稿は、美声が売りのクリエイター澤邊からお届けします!
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