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志は高く敷居は低く。走れ走れ いすゞのトラック
いすゞ自動車の、我が国を代表する小型トラックである「エルフ」シリーズに、新型車「エルフ ミオ」が登場した。(タイトル写真:いすゞ自動車)
「なんだ今回はトラックか。興味ないぞ」などと言うなかれ。国がバランスの悪い規制の改正を行い、その不始末で社会全体が困っていることを、技術開発と商品力でなんとか改善しようという商用車メーカー=いすゞの奮闘を描き出す話なので、ぜひ最後までお読みいただきたい。
普通免許でけっこうなトラックが運転できた時代
さて、小型トラックとはかつて2トントラックと呼ばれていた、最大積載量2トン~2.9トン(3トン未満)のクラスのこと。何がミソかというと、このクラスは以前の免許制度ならば普通免許で運転することができたのだ。
実は、段階的に免許の区分変更が行われたことと、トラック運転業の働き方改革が行われたことがダブルパンチになって、今、物流が危機に瀕している。このところ言われている2024年問題である。
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出所:全日本トラック協会(https://jta.or.jp/logistics2024-lp/)
もちろん労働条件や交通安全は大事なことではある。あるが、今すぐ法改定が求められるほどの社会的大問題になっていたかどうかは微妙なところ。そこに早手回しに善意の改善を加えた結果、皮肉なことに物流が危機に瀕してしまったわけだ。
前述の通り、1965年生まれの筆者が18歳で免許を取った当時は、普通免許の上はいきなり大型免許であり、現在で言う中型免許は存在しなかった。だから普通免許で4トントラックまで乗れた。
法的には8トンが上限なのだが、現実の商品として販売されているトラックは4トンクラスで、その上は大型が必要な10トンだったように記憶している。だからトラックドライバーたちの俗称としてのトラックは、2トン、4トン、10トン、20トンの4種だった。要するに普通免許で乗れるトラックの大小と大型免許で乗れるトラックの大小と4種という構成だったはずだ。
この辺り、何トンという表記が会社ごとに違っていたり、積載量の追加増量対応モデルなどもあった気がするので、それらを個別に指す時は4トン半とか5トンとか色んな呼び名があった記憶があるのだ。ただ一般にクラスを示す時には全部まとめて「4トン」クラスで、とりあえずはその普通免許で乗れる一番大きい、「俗称4トン車」の話である。
筆者も地元藤沢で免許取り立ての時期にバイトで4トン車を運転したことがあるが、免許取り立てのバイトドライバーにとって、昔ながらの県道では車線幅ギリギリに感じ、はみ出さないように走るのが大変に思えた。「この道ですれ違いは嫌だなぁ」と思うような状況がそこいらの県道でもずっと続くのだ。ちなみにこの辺りは、いくらググっても当時の話が出てこないので完全に40年前の記憶だけで書いている。もし当時のドライバーで、「いやそれ違うぜ」という方がいたら、コメントで教えていただけると幸いである。
ほぼ「ノア」サイズのエルフ ミオ
一方で2トンは印象だけでなく、物理的にサイズが小さい。エルフ ミオは全長:4690mm、全幅:1695mm、全高:1960mmと、実は5ナンバーサイズである。
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車幅は今や国内でもごく少数派となった5ナンバーサイズの乗用車、トヨタの「シエンタ」と同じである。ちなみに「ヤリスクロス」は全長:4180mm、全幅:1765mm、全高:1580mmと全幅でエルフ ミオと比べて70mmも大きい。「ノア」は全長:4695mm、全幅:1730mm、全高:1895mmとかなりエルフ ミオに近いサイズ感だ。これが「RAV4」だと全長:4610mm、全幅:1865mm、全高:1690mmなので170mmも幅広いことになる。(※各車ともご存じのようにグレードにより微細な差があるが省略)
「へーぇ。エルフといってもエルフ ミオってそんなに小さいんだ」と思った方、それは勘違いである。ミオだけじゃないのだ。シングルキャブの平ボディならミオじゃない普通のエルフも5ナンバーで、全長全幅は共通である。高さだけが少し高い。
おっと、普通のエルフだのエルフ ミオだのとまるで既知のことの様に書いてしまった。現在いすゞの小型トラックにはエルフとエルフ ミオがあり、エルフ ミオは最大積載量が小さい小型トラックだ。上で述べた通り、ボディサイズは基本同じ。それではなぜ最大積載量の小さいトラックをデビューさせたのかと言うと、それは免許制度への対応である。
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