池田直渡の「ぜんぶクルマが教えてくれる」

自動車経済評論家、池田直渡のnote連載です。

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自動車経済評論家、池田直渡(いけだ・なおと)が、クルマ、自動車メーカー、政府の政策などについて、事実に基づき論理的・批判的に思考し、しかしいかなる時も希望を持って書き下ろす連載コラムを掲載します。時にはグルメやオタク話も。 クルマ好きの方はもちろん、巷にあふれる悲観論や感情的な意見にうんざりした方に楽しんでいただけたら幸いです。まずは無料記事でお試しいただき、面白そうと思われたら、ぜひご参加ください。

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「ぜんぶクルマが教えてくれる」巻頭言

  池田直渡の『ぜんぶクルマが教えてくれる』」へようこそ。  クルマは大量生産される工業製品だが、その設計、製造には数値と官能の両面が必要だ。だとしたらその評価にも、合理的・客観性と直観的・主観性の両方がいるはずで、でも、どうも世の中の自動車評論は、スペックか情緒かのどちらかに傾きがちな気がする。膨大な人間の英知、情念、そして時間を注ぎ込んで造られるクルマは、数値と感覚の両面からしゃぶり尽くすに値するし、そこからものすごく面白い知的興奮が得られるんだよ……というあたりが「ぜ

    • 【new!】セダン衰退の中で、もったいないほどよくできた新型アコード

       筆者の記事にはホンダ関係が少ない。単純にホンダの試乗会や発表会に呼ばれないからで、全く他意はない。たまに「過去に何か厳しいことを書いてトラブったのではないか」と勘繰る人もいるらしいが、日本の自動車メーカーはその辺り本当に立派で、しっかり取材して本当のことを書いている限り、それで逆恨みをしたり抗議を入れてきたりはしない。記名記事を書き始めて以降、そんな経験は一度もない。  彼らだって色んな事情でクルマを作っている。時にタイミングを逸したり、監督官庁や業界都合でダメだとわかっ

      • 危機に「門構えを変える」日産。ゴーン時代の教訓に学ぶ

         日産自動車(以下日産)は2024年上半期決算を発表した。端的には営業利益で90%減、当期純利益が94%減という結果だった。これを受けて、グローバルで9000人のリストラを行う予定だと言う。  第1四半期の発表ですでに大方予想できたとは言え、極めて厳しい結果となった。もちろん複合的な理由があるのだが、最終的な引き金になったのは、北米での値引き(インセンティブ)戦争に巻き込まれて、利益を吐き出してしまったことである。  2023年の本決算では明るい表情で好調な結果を発表した

        • 異様にロジカルなマツダの戦略を振り返る(スモールプラットフォーム編)

           CX-80の登場でマツダの第7世代商品群がおおよそ出揃った。  わかっている人にはごく当たり前の話かもしれないが、必ずしもマツダの車種構成の全体像が掴めている人ばかりではないだろうから、ラインナップの構成がどうなっているか。そしてそれらがどの様な戦略でできているか、この機会に振り返ってみようと思う。というかこういう概要が明確に書けるメーカーはとても珍しい。マツダの車種構成は、ある種異様にロジカルなのだ。  それはつまり、いきあたりばったりで各車種を設計するのではなく、全

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        「ぜんぶクルマが教えてくれる」巻頭言

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          【new!】セダン衰退の中で、もったいないほどよくできた新型アコード

           筆者の記事にはホンダ関係が少ない。単純にホンダの試乗会や発表会に呼ばれないからで、全く他意はない。たまに「過去に何か厳しいことを書いてトラブったのではないか」と勘繰る人もいるらしいが、日本の自動車メーカーはその辺り本当に立派で、しっかり取材して本当のことを書いている限り、それで逆恨みをしたり抗議を入れてきたりはしない。記名記事を書き始めて以降、そんな経験は一度もない。  彼らだって色んな事情でクルマを作っている。時にタイミングを逸したり、監督官庁や業界都合でダメだとわかっ

          【new!】セダン衰退の中で、もったいないほどよくできた新型アコード

          危機に「門構えを変える」日産。ゴーン時代の教訓に学ぶ

           日産自動車(以下日産)は2024年上半期決算を発表した。端的には営業利益で90%減、当期純利益が94%減という結果だった。これを受けて、グローバルで9000人のリストラを行う予定だと言う。  第1四半期の発表ですでに大方予想できたとは言え、極めて厳しい結果となった。もちろん複合的な理由があるのだが、最終的な引き金になったのは、北米での値引き(インセンティブ)戦争に巻き込まれて、利益を吐き出してしまったことである。  2023年の本決算では明るい表情で好調な結果を発表した

          危機に「門構えを変える」日産。ゴーン時代の教訓に学ぶ

          異様にロジカルなマツダの戦略を振り返る(スモールプラットフォーム編)

           CX-80の登場でマツダの第7世代商品群がおおよそ出揃った。  わかっている人にはごく当たり前の話かもしれないが、必ずしもマツダの車種構成の全体像が掴めている人ばかりではないだろうから、ラインナップの構成がどうなっているか。そしてそれらがどの様な戦略でできているか、この機会に振り返ってみようと思う。というかこういう概要が明確に書けるメーカーはとても珍しい。マツダの車種構成は、ある種異様にロジカルなのだ。  それはつまり、いきあたりばったりで各車種を設計するのではなく、全

          異様にロジカルなマツダの戦略を振り返る(スモールプラットフォーム編)

          スバルの未来を開くクロストレックS:HEV

           SUBARU(以下スバル)の事業戦略については、実はずっとじれったく思っていた。なぜそう思っていたのかは、昨今のEVを巡る環境と、スバルとの相対的な位置関係にある。  国内で「EV旋風」が本格的に吹き荒れ始めたのは、テスラのモデル3が上陸した2019年。あるいは菅義偉政権が誕生した2020年頃だろう。 ぐいぐい厳しくなる環境規制  それに先駆け、2017年頃には各国のCAFE( Corporate Average Fuel Efficiency:企業別平均燃費基準)規

          スバルの未来を開くクロストレックS:HEV

          評価が割れるCX-80についてぜひ知ってほしいこと

           マツダのCX-80に試乗してきた。正直なところとても評価の難しいクルマだと思う。実用車として普通に乗るための不具合というラインで評価するのか。マツダがずっと唱えてきたクルマづくりのコンセプトを軸に評価するのかで、結論が全く違ってきてしまうからだ。  マツダは自らのクルマづくりのコンセプトをこう説明している。  で、本当にこの文章を真に受けると「人間とひとつになるクルマ」を求めてしまう。まあもちろんスローガンはスローガンであって、クルマから降りたら死んでしまうというわけで

          評価が割れるCX-80についてぜひ知ってほしいこと

          ランクルを舐めたらいかんぜよ

           3年ほど前に、ちょっと様子のおかしいEV信者がシェアした動画があって、思い出すと今でも腹立たしい。元動画をアップしたのはロシア人で、筆者の言うEV信者は日本人。ロシア人の動画をシェアして「重いSUVでも、EVはソフトウェアで何とでも制御出来る。ICE(内燃機関)車と斜面走破力を比較したこの動画を見ればEVの凄さが分かります」とまあ適当なことを拡散したのである。こちらが元動画のリンク(3分あたりから)だ。  なだらかな砂浜登坂で150系ランドクルーザープラドがスタックし、同

        記事

          スバルの未来を開くクロストレックS:HEV

           SUBARU(以下スバル)の事業戦略については、実はずっとじれったく思っていた。なぜそう思っていたのかは、昨今のEVを巡る環境と、スバルとの相対的な位置関係にある。  国内で「EV旋風」が本格的に吹き荒れ始めたのは、テスラのモデル3が上陸した2019年。あるいは菅義偉政権が誕生した2020年頃だろう。 ぐいぐい厳しくなる環境規制  それに先駆け、2017年頃には各国のCAFE( Corporate Average Fuel Efficiency:企業別平均燃費基準)規

          スバルの未来を開くクロストレックS:HEV

          評価が割れるCX-80についてぜひ知ってほしいこと

           マツダのCX-80に試乗してきた。正直なところとても評価の難しいクルマだと思う。実用車として普通に乗るための不具合というラインで評価するのか。マツダがずっと唱えてきたクルマづくりのコンセプトを軸に評価するのかで、結論が全く違ってきてしまうからだ。  マツダは自らのクルマづくりのコンセプトをこう説明している。  で、本当にこの文章を真に受けると「人間とひとつになるクルマ」を求めてしまう。まあもちろんスローガンはスローガンであって、クルマから降りたら死んでしまうというわけで

          評価が割れるCX-80についてぜひ知ってほしいこと

          ランクルを舐めたらいかんぜよ

           3年ほど前に、ちょっと様子のおかしいEV信者がシェアした動画があって、思い出すと今でも腹立たしい。元動画をアップしたのはロシア人で、筆者の言うEV信者は日本人。ロシア人の動画をシェアして「重いSUVでも、EVはソフトウェアで何とでも制御出来る。ICE(内燃機関)車と斜面走破力を比較したこの動画を見ればEVの凄さが分かります」とまあ適当なことを拡散したのである。こちらが元動画のリンク(3分あたりから)だ。  なだらかな砂浜登坂で150系ランドクルーザープラドがスタックし、同

          ロードスターがジジイの日常に与えてくれるもの

           藤沢の実家に1泊して、富士スピードウェイに向かう。綾瀬のスマートインターチェンジからスルリと本線に合流して、まずは100km/hにクルコン(クルーズコントロール、マツダの名称はMRCC=マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)をセットする。ギヤは6速のまま。  RFは2.0ユニットのおかげもあって、6速に入れたままでも、あまり苦にならない。必要があれば、そのままシフトダウンすることも出来る。5速でも4速でも100km/hを維持してくれる。シフトダウンはクラッチとシフトノ

          ロードスターがジジイの日常に与えてくれるもの

          クルマを持てなかった自動車経済評論家、RFに乗る

           このところ出張予定が目白押しだったので、移動のアシも兼ねて何か試乗しようとしばし考えた。9月は13日から15日がWEC(世界耐久選手権)富士の取材。その後17日と18日が蓼科。翌20日は味の素スタジアムでスズキの電動モペットの取材から自工会の定例記者会見に港区芝大門まで移動。  だいぶ長距離移動が多いとは思うが、実は普段の取材ではわりとよくあるケースなので、この際だからマツダ・ロードスターRFを借りてみようと思った。すでにピンときていた人もいるだろう。  2023年の1

          クルマを持てなかった自動車経済評論家、RFに乗る

          VUCA時代の自動車ビジネスの要諦

           少し前にギガキャストの記事を書いた(「ギガキャストを語る前に鋳物を知ろう」前編・後編)。ポイントは2つ。巨大キャストパーツを作るのはそんなに簡単ではないことと、ワンパーツ化で強調される「生産時間の短縮」は、生産ラインにとっては常に正しいとは限らないことを書いたつもりだ。  後者は意外かもしれないが、そんなに難しい話ではない。「最速稼働を目指して設計された生産ラインは速度最優先になりがちで、一般論として減産への対応が苦手」だからだ。  そして、それは2008年に起こったリ

          「日本メーカーは中国車にASEAN市場でボロ負け」するのか?

          (前回から読む)  日本車の金城湯池たる東南アジア市場に中国製電気自動車(バッテリーEV、BEV)の輸出が急拡大しつつある。BEVに出遅れた日本車メーカー危うし! という、最近の大手メディアの論調を冷静に考えてみよう、と思っていたのだが、そういう日本敗亡論はこれまでもあったし、状況を理解していれば、普通に懐疑的姿勢になるという話をしているうちに、懐かしのトヨタ・キャバリエの話などしてしまい、ついつい長くなったので分割させていただいた。実質的な本論はここからである。 中国が

          「日本メーカーは中国車にASEAN市場でボロ負け」するのか?

          「らくちん!キャバリエ~」で学ぶ日本市場の特異な性格

           大手メディアは……、という書き出しでもう何となく先が読めてしまうだろうが、本当に彼らの「日本をディスりたい」欲求には強烈なものがある。精度の低い理論や別の業界の事例を借りて、大げさな危機感と悲壮な終末感を振り撒き、日本メーカーの不作為をなじる。  そして予想を外したことには訂正どころか反省もなく、新たなストーリーを探してきて「日本はもうお終いだ」を終わらない変奏曲のように鳴らし続けるのである。キャッチーな記事が作りたいのはわからないではないが、こうしたオールドメディアの

          「らくちん!キャバリエ~」で学ぶ日本市場の特異な性格

          ギガキャストを語る前に鋳物を知ろう(後編)

           さて、前編では鋳物の鋳造やそのバリエーションであるダイキャスト製法の基礎的な知識から始めて、テスラの採用で話題になったギガキャスト(=大型部品のダイキャスト成形)の技術課題について詳細に説明をした。  大型部品をダイキャスト(溶かした金属を加圧して金型に流し込む)で製造しようとすると、熱のコントロールを上手くやらないと大きな歪みが出る。どんなにコントロールしても歪みを完全に排除することは難しい。そしてシャシーに対しての性能要求から、部材の厚みは一定にできず、その制約によっ

          ギガキャストを語る前に鋳物を知ろう(後編)

          ギガキャストを語る前に鋳物を知ろう(前編)

           おそらく、この記事を読む人に「ギガキャスト? 何それ」という人はいないだろう。テスラが採用したことで話題になった、クルマのフロアを大型のアルミダイキャストで一体成形して、部品点数を大幅に減らす技術だ。  世の中では、この技術をコロンブスの卵と受け止めて、自動車生産の画期的進化だと思っている人もいるようだ。けれども、技術に限らず世の中はそんなに簡単なものではない。大抵の場合、メリットとデメリットは混在していて、よっぽどのことがない限り、従来技術に対して「全方位上位互換」には

          ギガキャストを語る前に鋳物を知ろう(前編)

          A Midsummer Day Dream

           この原稿を書いている今、世の中はすっかりお盆で夏休み。東京から人がいなくなって、商店街もスーパーもいつもの人出の半分程度。仕事の電話もメールも来ないので、存分に原稿を書いている。いつもの夏である。圧力を感じるほどまばゆく白い強い日差しはさながら白日夢の様だ。だったらこの際、夢物語を書いてしまうかと。長らく「いつかはと思いつつ果たせていないリターンライダー」の妄想を書いてみよう。  本当に本当におかげさまをもって、有料noteは好調である。noteより以前から各所に原稿料の

          傑作かも!? スズキ・フロンクス。試乗会に同席気分でどうぞ

           6月10日、スズキの新型SUV『フロンクス』のプロトタイプ試乗会が伊豆のサイクルスポーツセンターで開かれた。情報解禁日は7月25日でずいぶん間が空いていたもので、ようやく記事が公開できるようになった。  例によって結論はこの記事の最後に書くので、有料会員ではない人は肝心なところが読めないことになる。だから先に一言だけ結論めいたことを書いておくと、これは多分今年デビューのクルマの内でも、最も重要な1台になるだろう。スズキのラインナップで言えば、スイフトスポーツ(新型はまだだ

          傑作かも!? スズキ・フロンクス。試乗会に同席気分でどうぞ