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傑作かも!? スズキ・フロンクス。試乗会に同席気分でどうぞ


 6月10日、スズキの新型SUV『フロンクス』のプロトタイプ試乗会が伊豆のサイクルスポーツセンターで開かれた。情報解禁日は7月25日でずいぶん間が空いていたもので、ようやく記事が公開できるようになった。

 例によって結論はこの記事の最後に書くので、有料会員ではない人は肝心なところが読めないことになる。だから先に一言だけ結論めいたことを書いておくと、これは多分今年デビューのクルマの内でも、最も重要な1台になるだろう。スズキのラインナップで言えば、スイフトスポーツ(新型はまだだけど)、ジムニーと並ぶ高評価を与えられるクルマである。

 突出して何かがすごいというよりは、非常にバランスが良い大人のクルマだ。それでもどこが良いのか言えと言うならば、このクラスとしては静粛性が高く、乗り心地もいい。さらに落ち着いた精度感の高いハンドリングと、楽しいパワートレインを持っている。

試乗会は「強制フィードバック」の場でもある

 さて、記念すべき有料noteで初めての単一車種インプレッションなのでどういう仕立てにしようか考えたが、今まで商業媒体ではなかなかできなかったことをやってみたくなった。それは「生レポート」である。

 そもそも、新型車試乗会の段取りはどうなっているかというと、会場に行って、最初に全体プレゼンを聞く。いわゆるコンセプトとか初の技術がどうのというヤツだ。それから指定の試乗枠で乗車し、それが終わったら別室でエンジニアが待ち構えていて、「さて、ご意見拝聴」ということになる。強制フィードバックの場である。

 ボクらにしてみれば、本業はあくまで記事を書くことなのだが、メーカー側にとっては、たくさんのクルマに乗ってきたジャーナリストから「開発陣が狙っていた感想が出てくるか否か」と「次に取り組むべき課題は何か」が分かるこのヒアリングは極めて重要。

 お互いにそこは真剣勝負になる。開発エンジニアだって、そりゃせっかく作ったクルマなので褒めて欲しい気持ちはあるだろうが、むしろ聞きたいのは要改善ポイント。何故なら後で上に向けてレポートを提出するからだ。造りながら「どっちが正解なのかなぁ」と悩んでいるところをどう考えるべきかのヒントは是非とも欲しい。逆にボクらは見る目のあるなしを問われる場でもある。

 で、ストレートな感想と回答は、自分が記事を書く時にも役立つので、試乗会でのエンジニアとのやりとりは全部録音してある。今回はそれを可能な限り、無編集でテキスト化してみよう。そういう生々しい第一印象は本来面白いはずだと常々思っており、一度やってみたかったのだが、媒体相手だと「手抜きか?」と疑われそうでできない。けれども多分noteの読者諸氏は、乗った直後のライブ感に満ちたインプレッションというのも興味があるのではないかと思う。

今回はライブ感覚でお楽しみください

 もちろん「自動文字起こしをそのまま」なんて安直な形ではない。オリジナルのテイストを可能な限り残しつつ、補足や言い換えを行なって読みやすくしてある。また、喋り慣れていないエンジニア氏の発言のほうは、言葉を補い相当手を入れてある。でないと読んでも多分わからないからだ。そこはご了承いただきたい。

 それと、会話の目的はフィードバックだからエンジニアへのサービスとして「ここをこうするともっと良くなるはず」というポイントを色々重点的に話している。なので、文章だけを読むと要改善点の話が多く「すごい良かった」な感じはあまり受けないかもしれないが、正直すごい良かった。このクラスのイチオシとすべき1台である。

 それでは、以下、構成の入れ替えも話順の調整も全くしていないほぼ生トークを、隣で聞いている気分でお楽しみいただきたい。


池田:クルマはとってもいいです。BセグのSUVは結構売れ筋なので、期待できるのではないかと思います。(注:「クルマはとってもいいです」は、筆者としてはかなりの褒め言葉)

 商品として見ると、BセグのSUVで 1.5のNA+マイルドハイブリッドのみっていう構成はちょっとどうかなと。で、ここはやっぱり最上級グレードとしてはストロングハイブリッドが欲しいところだと思います。

 スズキには、先代のスイフトにAMT(※)ベースのハイブリッドがあるじゃないですか。あれ良かったと思うんですが、今のスイフトにはないですよね。

※ Automated Manual Transmission 。MTをベースにクラッチおよびシフト操作を自動で行う電動油圧式アクチュエーターを採用した新開発のトランスミッション。スズキでは「AGS」と呼称する。スズキならではの個性的技術であり、ロバスト性が高い上にローコストで注目を集めた。参考リンクはこちら

スズキ開発者(以下スズキ):そうですね、先代にはありましたが今はソリオだけです。

池田:他の車種ではもうやめちゃったってことは、あんまり売れないってことですかね。なるほどね。このクラスだとやっぱりストロングハイブリッドも欲しいだろうなと思います。スズキの商品ラインナップとして、特にこれは言ってみればBセグのトップエンドになるはずの車種じゃないですか。となるとやっぱりパワートレインにも何か役物が欲しいです。今ね、このカーボンニュートラルって言われてる時代に、ただの1.5NA+マイルドハイブリッドですよというのでは競争力的にキツいかなぁと。

 価格が安いグレードはマイルドハイブリッドでもいいんですけど、どうしても動力性能と燃費の取り分がそんなに大きくないんで、もう少し何か欲しいところですよね。特に先進国で、燃費とフィールで戦えるクルマということはやっぱり大事なんじゃないかと、それと技術的付加価値としても。

 クーペSUVのスタイリッシュなクルマなので、途上国だけのクルマじゃないと思うんですよ。もちろんインド生産車ですし、インドの税制を意識して全長4メーター規制に合致したクルマで、インドがメインマーケットでしょうけど、 先進国でも十分戦えそうなのにもったいないなと。

デザインはシトロエンにも通じる魅力が

 で、さっきの説明で、デザインに力を入れたとおっしゃってるんですが、おっしゃる通り、デザインはかなりいい線まで来てると思います。テイストとしてすごく欧州車っぽいっていうか、ストレートに言うと、ちょっとシトロエンっぽいですよね。ボクはかなりカッコいいと思いました。さっきもテストコースで、前のクルマに追いついて 斜め後ろから見ていると、「あれ、あのクルマなんだろう」って気になる感じの存在感が明らかにありました。

斜め後ろから見ると「どこのクルマ?」と思わず興味を惹かれる存在感がある

 多分、スズキのことですから、戦略的にこのクラスの売れ筋であるヤリスクロスと比べても安い価格をつけるでしょう。 その価格で、乗り心地やハンドリング、静粛性も含めて、クルマ全体として、 かなり良い線で戦えるだろうと。

 色々よくできているんですが、特にフロンクスが「やるじゃん」と思うのは、静粛性のところですね。まあ今日のコースがあまり荒れていないせいもあるかもしれないですが、頭一つ抜けてる感じがします。これは後日公道でもう一度確認したいと思います。

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