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危機に「門構えを変える」日産。ゴーン時代の教訓に学ぶ

 日産自動車(以下日産)は2024年上半期決算を発表した。端的には営業利益で90%減、当期純利益が94%減という結果だった。これを受けて、グローバルで9000人のリストラを行う予定だと言う。

 第1四半期の発表ですでに大方予想できたとは言え、極めて厳しい結果となった。もちろん複合的な理由があるのだが、最終的な引き金になったのは、北米での値引き(インセンティブ)戦争に巻き込まれて、利益を吐き出してしまったことである。

「販売パフォーマンス」で、「台数/構成」が960億円、「販売費用/価格改定」が1027億円、前年に対して増えている(利益にはマイナス)。出所:日産自動車2024年度上期決算報告(1枚目画像を含め、特記なき物は以下同)

 2023年の本決算では明るい表情で好調な結果を発表した内田誠CEOの表情は、たった半年後の今回、終始厳しいものだった。筆者から見ても、日産の厳しさは深刻であり、ここからの脱出は相当に難しいオペレーションとなるだろう。

コロナ禍の最終清算としての値引き戦争

 2022年。世界はコロナ禍からの脱出途上であり、特にASEANと東欧各地域のロックダウン(そこにはウクライナ問題も含まれる)の結果、国際分業化が進んだ部品のサプライチェーンが毀損した。半導体が最も話題になったが、もっと普通の樹脂部品やハーネスなどの部品製造までもが止まり、それらの部品不足で自動車メーカー各社の組み立てラインの稼働も頻繁に止まった。

 世界中の自動車メーカーが一様に同じ状況を迎えたため、グローバルな自動車の供給もまた一斉にショートした。クルマを買おうとしても数年待ちという状況では、値引きの交渉どころではない。日本の自動車メーカー各社は、懸命に部品を確保して少しでも増産するための必死の戦いを迫られた一方、供給不足を背景に、値引きをせずにクルマを売る僥倖に与った。そこに円安の追い風が加わって、2023年の各社の決算はピカピカの結果になったのである。ほとんどの会社が過去最高益を記録した。

 日本では、顧客がディーラーで発注してからメーカーが生産するのが当たり前で、「納車は1年後です」と言って納得してくれる客に売るビジネスだが、アメリカ(米国)は違う。ディーラーがあらかじめクルマを仕入れて売る方式だ。つまり手元にクルマがないと売れない。店舗に商品がなければ客は別の店に行ってしまう。

 そういう商習慣の中で商品不足が起きれば、ディーラーはパニックを起こして、見込み発注量を増やす。しかも品不足で店頭在庫から選ぶしかないとなれば、ディーラーは客の足元を見て、「高価なグレードを買わせよう」と考え、発注をかける。客は予算より少々高いグレードでも仕方なく購入する。これも2023年の自動車メーカーの利益を押し上げた要因のひとつである。

 ところが、時間の経過とともに世界のサプライチェーンが回復し始めると、ありとあらゆるディーラーで、見込みで余分に注文したハイグレードのクルマが続々と入荷し始める。需要>供給のフェイズは一瞬で終わった。ハイグレードなクルマの大量在庫で膨れ上がる棚卸資産の金額に恐れをなしたディーラーは、これを一斉に値引きで売ろうとした。そこからは壮絶な値引き戦争が始まる。品不足を背景に殿様商売ができた分、その皺寄せが一気にやってきたわけだ。

 この状況はどのメーカー系列の店も同じなのだが、日産には特殊な事情もあった。カルロス・ゴーン社長時代の負の遺産によって、長らく商品ラインナップがシュリンクしていたことだ。つまり顧客に応じた適切なクルマを用意することができていなかった状態で、過当競争に突入した。これは厳しいことになる。日産は他社以上に値引きを頼って戦うしかなくなったのだ。

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