異様にロジカルなマツダの戦略を振り返る(スモールプラットフォーム編)
CX-80の登場でマツダの第7世代商品群がおおよそ出揃った。
わかっている人にはごく当たり前の話かもしれないが、必ずしもマツダの車種構成の全体像が掴めている人ばかりではないだろうから、ラインナップの構成がどうなっているか。そしてそれらがどの様な戦略でできているか、この機会に振り返ってみようと思う。というかこういう概要が明確に書けるメーカーはとても珍しい。マツダの車種構成は、ある種異様にロジカルなのだ。
それはつまり、いきあたりばったりで各車種を設計するのではなく、全体を通した論理があり、それに沿ってラインナップがつくられているということでもある。
ある意味経営の失敗から生まれた合理性
この論理性は、元々は1990年前後に5チャンネル構想が破綻した際に、肥大して無駄だらけになったラインナップを整理しようとしたことから始まる。世界各地域で販売主力となっている車種を最低限残そうと考えた結果、どう削っても8車種が必要であり、その8車種は同一プラットフォームからは造れない幅があった。
経営の失敗が原因なので、資金が潤沢なわけもない。その状況で、最低限の数のプラットフォームから合理的に8車種を作り出さなければ存続できない。というギリギリの瀬戸際の中で、マツダが作り上げた戦略からまず生まれたのが、初代CX-5から始まる第6世代のクルマであり、その成功をベースに発展させたものがマツダ3/CX-30から始まる第7世代である。この2台は「スモールプラットフォーム」と呼ばれるプラットフォームで造られている(冒頭の写真。右から2台目、第6世代のCX-5を除き、第7世代のスモールプラットフォーム群。出所:マツダ)。
そして、マツダはこのプラットフォームではカバーできない大きなボディの車種のために、CX-60から始まる「ラージプラットフォーム」と呼ばれるもう一つのプラットフォームを開発した。直近の生産台数125万3654台のマツダは、2種類のプラットフォームを持っているわけだ。
年間生産台数300万台以下のメーカーでは、基本となる1種のシャシーをベースに主要車種を展開することが多い。まあ例外もあるのでややこしいのだが、大まかに言えば、スズキやスバルはこちらに入る。
他メーカーのプラットフォーム戦略は?
ついでに他の日本メーカーも見てみよう。トヨタは販売台数が桁外れなので、車種展開の幅が1社だけ飛び抜けて多様だ。基礎的な構造を同一にするTNGAプラットフォームをベースに、Bセグ、Cセグ、それ以上の大型車用がFF用とFR用2種、ラダーフレームの5展開で全体を支える。
おそらくはトヨタと同じ方向に行きたいのだが、車種展開の幅が狭いため共通感がとぼしく、縦串(プラットフォームの種類)、横串(同じプラットフォームでの展開)がともに希薄になってしまっているのが、ホンダと日産。プラットフォームの開発は非常に金が掛かるので、手元の資金が潤沢でないと旧型のキャリーオーバーを余儀なくされ、プラットフォーム群が理詰めにならない。日産はそういうジレンマを抱えながら戦っている。
さて、話をマツダに戻そう。今現在、第7世代車種群で構成されるマツダには、基本線としてマツダ3をベースにするスモールプラットフォームと、CX-60をベースとするラージプラットフォームがある。まずはスモールプラットフォームが何を目的として造られたものなのかを考察したい。
スモールプラットフォームは、横置きFFを基礎に置くB、Cセグ用のプラットフォームで、横置きエンジンにスペースを提供するために、フロントサスペンションはストラット構造、リヤはトーションビームアクスル(Torsion Beam Axle :TBA)構造を採用する。
スモールプラットフォームを特徴づけるTBA
スモールプラットフォームで注目すべきはこのリヤサスだ。マツダは、「リヤタイヤの支持剛性を高めるため、トー変化、キャンバー変化を抑え込み易いことに留意してTBAを選んだ」と説明した。
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