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ロードスターがジジイの日常に与えてくれるもの

 「マツダ・ロードスターRF RS(ビルシュタインのダンパー、レカロのバケットシート、タワーバー、トンネルブレースバーなどが入った、RFで一番ハードで一番高いモデル。トランスミッションは6MT)」の池田直渡さんの試乗(私情?)記、前回の続きです (管理人M2号)

前回はこちら

 藤沢の実家に1泊して、富士スピードウェイに向かう。綾瀬のスマートインターチェンジからスルリと本線に合流して、まずは100km/hにクルコン(クルーズコントロール、マツダの名称はMRCC=マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)をセットする。ギヤは6速のまま。

 RFは2.0ユニットのおかげもあって、6速に入れたままでも、あまり苦にならない。必要があれば、そのままシフトダウンすることも出来る。5速でも4速でも100km/hを維持してくれる。シフトダウンはクラッチとシフトノブだけでOK。アクセルに触れる必要はない。それはつまりクルコンONのままクラッチを切ってもエンジンが吹け上がったりはしないし、エンゲージもよほどいじわるなことをしなければ多少雑に繋いだとしてもショックはない。MTのクルコン? と思うかもしれないが、巡航している限りは普通に使える。

クルコンがあっても高速は得意科目じゃない

 ただし、最新のレーンキープアシスト付きのクルコンと一緒にはできない。近年のADAS(Advanced driver-assistance systems 先進運転支援システム)は、常識的な範囲で多少景色を眺めたりしてもまっすぐ走ってくれるのだが、ロードスターはそうじゃない。右を向けば右に、左を向けば左に進路がズレる。「ああ、そういや昔のクルマってそうだったよなぁ」と思い出す。最新装備に慣れて、まっすぐ走ってくれるのが当たり前になっていたことに気づいた。

 予想通りとはいえ、高速巡航は正直あまり得意とは言えない。まず静粛性がちょい厳しい。ハードルーフのRFでそうなのだから、これは幌だともっとキツいに違いない。それでもシャシーそのものの直進安定性に難があるわけではないので、正しく操作してやればノタくるようなことはないが、基本、ずっと面倒を見てやらないとダメ。そこは多少手がかかる。

 そうそう、試乗車にはボーズのオーディオが装着されていた。が、音はまあ良い方の部類。そもそもリスニング環境そのものが雑音まみれなのだが、システムは頑張って常識的に(=驚くほどではないが)良い音を出している。

 足柄のスマートインターで降りて下道を富士スピードウェイへ。この田舎道はすこぶる楽しい。別に目を三角にしてぶっ飛ばさなくても楽しいというところがとても贅沢だ。

 富士では3日間に渡って「FIA WEC 富士6時間耐久」の取材だ。レスポンスで記事化されたので、こちらをどうぞ→「トヨタがWECに参戦する意義【池田直渡の着眼大局】」。

FIA WEC 富士6時間耐久を観戦・取材。さすがは人気のWECというグランドスタンドの客入り

 さて、レースが終わって日曜の夕方、そもそも3連休の中日に加えて、富士でも屈指のビッグイベントとあって、サーキットの敷地内からもう大渋滞。ご存じの通りあそこは起伏に富んでいるので、渋滞は常に坂道発進。MTとしてはそれがやりにくいわけではない。というかむしろ素直で低速トルクも常識的で良い出来なのだが、まあそうは言ってもMTでそれを数メートルおきだと堪らない。修行のつもりで耐える。

 1時間半近くかかって周辺渋滞を脱出し、甲府へ向かう。どこへ? いやカレンダーを見て、この連休の最中に東京へ戻るのは阿鼻叫喚が予想されるので、中1日2泊を甲府湯村の安いビジネスホテルで過ごし、次の仕事場である蓼科に向かうスケジュールを組んだのだ。

 部屋は狭小シングルルームだが、温泉だけは掛け流し。風呂を使ったら、ホテル内のコインランドリーで3日分の洗濯。この暑い季節、荷物を増やさないためにはマメに洗濯するしかない。

姿勢制御最優先のアシンメトリックLSD

 翌朝は早起きして、ロードスターの写真を撮りに行く。中央道を須玉で降りて、141号(清里ライン)で清里から野辺山を経由して、小海線の佐久海ノ口まで。途中で旧道へ入り込んだり、国立天文台野辺山電波観測所で写真を撮ったりとのんびり回る。

筆者は鉄分は少ないが、JR最高地点の石碑の建つ名所でパチリと

 山間部の国道なので、途中結構なワインディングもある。アシンメトリックLSDの恩恵を最も感じる場面である。

 ロードスターはマツダ第6世代のコンセプトにのっとって作られたクルマである。それはすなわち、減速からターンインで外側前輪への荷重を乗せる。垂直荷重が増えて反応が良くなった外側前輪のグリップを使いながらヨーを立ち上げる。デビュー時には、ステアリングコラムの剛性は高いものだったが、9年の間に少し評価が変わった。現代の水準では悪くはないが凄くはない。が、それは信頼に足らぬということではなく、今でもちゃんとしている。スイッと滑らかに切って車体にスリップアングルをつける。

 「外側前輪が沈む」ということは「内側後輪が浮く」という話と等価である。だから本当はここで少しリヤがウズウズしてくる。それが本来のNDなのだが、ここでマイナス1.5ウェイのデフが働く。筆者がITmedia ビジネスオンラインに書いた記事「マツダ・ロードスターの大改変 減速で作動するアシンメトリックLSDの狙い」から引用しよう。

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