アーリーフェーズのスタートアップにこそ、Google式マネジメントの真髄「Inclusive」が活きる
こんにちは。みなさんお元気ですか? FaciloのCOOの浅岡です。「Google式スタートアップ経営」をテーマに書き始めたこのnote。2回目の今回のテーマは、マネジメントです。Googleで出会ったマネージャーのあり方が私のマネジメントをどう変えたのか、それをスタートアップであるFaciloの経営にどう活かしていくのかについて、今考えていることをお話しします。
前回と同じく、お忙しい方はこの記事の一番下のサマリへ直接どうぞ。
*今回の記事は、 当時の自身の過去の経験・解釈とGoogle Reworkの引用をもとに構成しております。
Googleのマネジメントにおける
10の行動規範と13のレビューポイント
マネージャーと聞いてみなさんが思い浮かべるのはどんな人物像でしょうか。リーダーシップのある人? それとも“背中で語る”ような人でしょうか? 思い浮かべた人物像は、これまでのあなたのマネージャーに似ていませんか。それもそのはず。こと日本では良いマネージャー像が定まっておらず、自身のマネージャーがその定型になることが少なくないからです。
ご多分に漏れず、私もその一人でした。マネージャーと言えば、時に厳しい態度と強いリーダーシップでメンバーをぐいぐい引っ張っていく人というイメージを持っていたのです。
そんな私がGoogleで出会った「Google マネージャーの行動規範」はとても革新的でした。十人十色のマネジメントスタイルを許容するのではなく、良いマネージャー像がきちんと定まっていること。さらに、それが必ずしも立ち位置や権力を利用して部下の行動を促す方法ではないこと。
さらに驚いたのは、この10の要件を満たしているかどうかを定期的にメンバーが評価するシステムがあることです。メンバーは、直属のマネージャーに対して、半年に1回5段階で評価を行います。マネージャーはその総合点が低い場合はアシミレーションなどの仕組みを通じて改善計画を求められます。点数が高ければマネージャーとしての評価が上がるという仕組みです。
最年少でマネージャーに就任した私は、これらのポイントを熟読し、自分がどのように振る舞うべきかの指標にしていました。
評価ポイントを噛み砕き、
マネジメントスタイルに落とし込んだ私流の解釈
ここからは、「Googleにおけるメンバーによるマネージャー評価のポイント」を私がどのように行動に落とし込んでいったかをお話しします。
私はこの13のポイントを4つのカテゴリに分け、それぞれの対策をすることにしました。1つめは「総合力」、2つめは「目標設計とフィードバック」、3つめは「心理的安全性」、4つめは「コラボレーションと透明性」。
次に、このカテゴリを、これまでの経験から得意そうなものと、対策が必要なものに分けました。私の場合、得意そうなものは「心理的安全性」のカテゴリ。特に対策が必要なのは「目標設計とフィードバック」や「コラボレーションと透明性」。
これらの対策をした上でそれぞれの評価項目を行動指針にしながらマネージャーを務めていると、メンバーからの評価もついてくるようになりました。メンバー構成が変わっても評価が継続するように再現性を高め「Google マネージャーの行動規範」を自分のものにすることができたと感じます。それぞれのカテゴリへの私の解釈と対策の仕方は以下の通り。
中でも特に対策した「目標とフィードバック」と「コラボレーションと透明性」のカテゴリには、以下のことを行いました。
「目標設計とフィードバック」の対策には、研修を利用しました。コーチングやコントラクティブフィードバックの研修を受け、これまで多用していたフィードバックの方法を変えたり、フレームワークを学びました。目標設計で大切なOKRについては前回の記事をどうぞ。
「コラボレーションと透明性」の対策には、本社からの発信を欠かさずキャッチアップし、日本の方針とそれを突き合わせ、自分なりの解釈を伝えるようにも努めました。また、チームの誰よりも知識を持つことができるよう、他のマネージャーが出ていないようなプロダクトのミーティングなどにも出席し社内外から情報を集めたり、それを活かして自分のチームメンバーと他のチームの適切な人をつないだりしていました。
こうして会得したマネジメントは、FaciloのCOOに入社してからも重宝することになります。
Googleのマネジメントを
スタートアップでどう活かすか
Googleで学んだマネジメントスタイルをそのままトレースするだけでは、Faciloにぴったりのマネジメントとは言えません。Googleで学んだマネジメントをうまく活かすための私なりのコツは3つのことに集約されます。
✏️Google のマネジメントをスタートアップに活かす時気をつけたこと
1.トップダウンの力学に注意する
多様なメンバーが在籍し、かつFaciloに比べて組織規模が大きなGoogleでは、私に対していわゆる“反対派”の人もいました。しかし、Faciloは少人数な上私はCOOの立場。これまでよりもトップダウンの力学が働いていることを忘れずに、フィードバックの仕方や心理的安全性の担保を心がけるようになりました。たとえば、5分のフィードバックを行うにも2時間の準備をしたこともあるほど。力学が強い分、入念な準備と心がけをすれば良い方向に変化する時のエネルギーも大きくなります。
2.優秀で活躍してきた人ほどアンラーンを促す
Faciloに入社してくれるメンバーは、前職の方が規模が大きいことがほとんどです。そのため、それまでに培ってきた時間感覚や足並みを揃える姿勢を時にはアンラーンしてもらう必要があることも。Googleでは“How”には口を出さないのが鉄則でしたが、必要な時にはアンラーンを促すコミュニケーションを行うように心がけています。
3.ひとりひとりの居場所がある状態=Inclusionを作る
Faciloのメンバーが日に日に増え、そのマネジメントを続けていると、改めてこのGoogleで学んだマネジメントが光を放つポイントがあるように感じます。それは、「Google マネージャーの行動規範」「Googleにおけるメンバーによるマネージャー評価のポイント」に共通する「Inclusion:企業内すべての従業員が尊重され、個々が能力を発揮して活躍できている状態」、私の言葉にするならば「メンバーひとりひとりの居場所を作る」ことです。
大型の調達を行い、急速に組織と事業の規模を拡大するFacilo。そこにこれまでのやり方をアンラーンしながらまだ見ぬプロダクトを生み出すのは、時に孤独な仕事です。なぞる前例もなければ、鉄板のやり方もない。起こりうる問題を予測することも難しい。
11年前のGoogleで同じような経験をした私は、この孤独をよく知っています。IT大手企業、広告代理店、戦略コンサル、外資銀行、総合商社などから選りすぐりの転職者が集まった組織で、「何かおかしなことを言ったらバカにされるのではないか」といつも緊張していて、何が正解かもわからない仕事でなかなか結果が出ずもがく日々。
だからこそ、そんな状況の中でメンバーひとりひとりが「ここが自分のバリューの発揮しどころだ」と自信を持っていきいき働けるような環境を作ることを大切にしたいと考えています。
いかがでしょうか。スタートアップに効果的なマネジメント方法が、持って生まれたカリスマ性や人間力ではなく、愚直なスキル習得によって実現できるというところに、夢があると思いませんか? 目標設計の仕方、フィードバックの仕方、評価制度による自己認識の高め方。日本初・世界初のプロダクトを生み出す現場を支えるマネジメントの仕方は、あなたも習得可能なものなのです。
自分らしくマネジメントをしても良い
──女性リーダーシップ研修の1コマから
最後に、主に女性の皆さんに、私が感銘を受けた女性リーダーシップ研修の1コマを紹介します。研修で集められた女性たちが「私たちが子供の頃から“女の子だから⚪︎⚪︎しなさい”と言われてきたこと、社会から押し付けられてきた“女性らしさ”を書き出してみて」と促されると、ホワイトボードには「人の意見を聞く」「相手の意見を尊重する」「相手を攻撃しない」「共感力が高い」「社交性が高い」などの言葉が並びました。そしてこれらを「Google マネージャーの行動規範」に照らし合わせると合致するものが多いことに気づかされました。
誰かや社会から押し付けられてきた“女性らしさ”を引き受ける必要は全くありませんが、それをスキルと捉えてマネジメントには役立てるというのもひとつ。その点では女性がアドバンテージを持っているのだと、また自分らしくマネジメントをしても良いのだと背中を押された経験でした。
(文:浅岡純子 編集協力:出川光)
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